大量輸血プロトコル(MTP)の「1:1:1」は、検査結果が届くまで血漿・血小板・赤血球をそろえて供給するための初期の型であり、最適な比率が証明された到達点ではない。PROPPRでは1:1:1で止血達成と24時間以内の失血死が改善したが、主要評価の24時間・30日死亡に有意差はなかった。本稿は成人の外傷性大量出血を対象に、MTPの起動、固定比率から検査に基づく補充への切り替え、粘弾性検査(VEM)、凝固因子製剤、低カルシウム血症、全血輸血、日本の製剤単位での読み替えを、原著と指針の数値で整理する。
医療従事者向け:本記事は教育および一般的な医学情報の提供を目的としています。個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。
まず押さえる要点
- 1:1:1は、検査結果が届くまでの初期供給の型である。大量輸血が予測された重症外傷680例のPROPPRでは、主要評価の24時間死亡(12.7%対17.0%)と30日死亡(22.4%対26.1%)に有意差はなく、止血達成(86%対78%)と24時間以内の失血死(9.2%対14.6%)が1:1:1群で良好だった[1]。「1:1:1で死亡が減った」とは言えない。
- 結果が届いたら、検査に基づく補充へ切り替える。欧州指針第6版は、初期は2つの供給戦略のいずれか(1C)とし、その後は標準凝固検査とVEMの両方または一方に基づく目標指向型の管理を続けることを推奨する(1B)[2]。ただし、経験的なMHPにVEMを加えたITACTICでは、全体の転帰は改善しなかった(24時間で生存かつ大量輸血なし 67%対64%、OR 1.15、95%CI 0.76〜1.73)[3]。
- 凝固因子製剤の一律の上乗せは支持されていない。早期・経験的な高用量クリオプレシピテート(CRYOSTAT-2)は28日死亡を下げず、早期の4因子PCC(PROCOAG)は輸血量を減らさず血栓塞栓症が多かった[4][5]。低値を確かめたうえでの補充とは別の問いである。
- 全血は、成分輸血より優れるとは示されていない。院外で最大2単位の全血を用いた2つのRCTで、主要評価に有意差はなかった(SWiFT:24時間の死亡または大量輸血 48.7%対47.7%、TOWAR:30日死亡 25.9%対20.5%)[6][7]。観察研究のメタ解析で見られた生存との関連は、RCTでは再現されていない[8]。
- 国内では「単位」を読み替える。国内の赤血球液の1単位とFFP-LR120は血液200 mLに由来し、濃厚血小板の1単位は血小板0.2×1011個以上である[9][10][11]。国内指針(2019)は、大量輸血が予想される外傷の初期治療で、各製剤の投与単位比FFP:PC:RBC=1:1:1を目標とし、少なくとも1:1:2以上を保つことを強く推奨する(1C)[12]。海外の単位数を院内パックの本数にそのまま写さない。
対象と扱わない範囲
対象:成人の外傷で、大量輸血が予測される、または大量輸血が始まった患者。救急外来でのMTPの起動から、手術室・IVR室・ICUへ移るまでの輸血と止血の管理、およびMTPの院内設計を扱う。
扱わない範囲:
- 小児。体重あたりの量や研究の対象が異なる。本稿の数値をそのまま当てはめない。
- 産科危機的出血や心臓血管外科手術など、外傷以外の大量出血。国内の指針は診療領域ごとに推奨を分けている[13]。
- 抗凝固薬・抗血小板薬を内服中の患者の中和。抗凝固薬内服中の外傷:DOAC・ワルファリンの中和を参照。
- 外傷性凝固障害の病態とトラネキサム酸の詳細。外傷性凝固障害(TIC)を参照。
- 出血源の制御の手技(ダメージコントロール手術、TAE、REBOAなど)。ダメージコントロール手術と骨盤骨折出血を参照。
1.MTPは比率ではなく、供給と切り替えの仕組み
大量輸血で問うべきなのは、赤血球と血漿の比率だけではない。必要な血液が何分で届くか、どの欠損を検出できるか、結果が出てから実際の投与まで何分かかるか、そして出血源をいつ制御できるかである。MTPは、こうした行動をそろえるための仕組みとして理解したい。
本稿でいう「1:1:1はつなぎ」とは、早期の経験的な供給から、患者ごとの再評価へ移る、という運用上の意味である。VEMが固定比率より死亡率を下げると確立した、という意味ではない。
MTPに何を含めるかの具体例として、米国外科学会のACS TQIPが2014年10月に公表した大量輸血の指針は、次の要素を挙げている[14]。
- すぐ使える製剤:型を問わず使える赤血球(O型Rh陰性・陽性)と融解済み血漿を直ちに使えるようにし、救急外来に置くのが望ましい。項目の一つに「融解済みのAB型または低力価抗B抗体のA型血漿を少なくとも8単位」があり、追加の血漿はMTP起動から15分以内に輸血部門から得られるようにする。
- 比率:血漿と赤血球を1:1〜1:2(血漿:赤血球)で投与し、赤血球6単位ごとに単一ドナーのアフェレーシス血小板1単位またはプール血小板1つを投与する。
- 供給の間隔:2回目以降のクーラーボックスは、MTPが終了するまで15分間隔で届ける。
- 切り替えと終了:外科的出血が制御されていれば、比率に基づく大量輸血を中止するか、検査所見に基づく目標指向型の輸血へ切り替えてよい(may)。これ以上の蘇生が無益と判断されたときもMTPを終了する。
ACSの指針一覧に掲載されている大量輸血の指針は、2026年9月24日の確認時点でもこの2014年版だった[14]。米国の製剤単位と供給体制を前提にした数字であり、国内でそのまま使えるわけではない(後述)。
2.PROMMTTとPROPPR:何が示され、何が示されていないか
PROMMTT:比率と早期死亡の関連
PROMMTTは、米国のレベルI外傷センター10施設の前向き観察研究である。来院後30分以上生存し、6時間以内に赤血球を1単位以上受けた成人外傷1,245例のうち、24時間以内に製剤を計3単位以上受けた905例を解析した。時間とともに変わる比率を扱うモデルで、血漿:赤血球比の上昇(調整HR 0.31、95%CI 0.16〜0.58)と血小板:赤血球比の上昇(調整HR 0.55、95%CI 0.31〜0.98)は、出血による死亡が多い6時間以内の死亡の少なさと独立に関連した。最初の6時間では、比が1:2未満の患者は1:1以上の患者より3〜4倍死亡しやすかった。24時間を過ぎると、比率と死亡の関連はみられなかった[15]。
本稿の解釈観察研究では、早く亡くなった患者ほど血漿や血小板を受ける前に亡くなりやすい。時間依存の解析はこの偏りを減らす工夫だが、比率の因果効果を示すものではない。PROPPRの抄録も、高い比率は転帰の改善と「関連」してきたが大規模な多施設試験がなかったことを背景に挙げている[1]。
PROPPR:主要評価と副次評価を分けて読む
PROPPRは北米のレベルI外傷センター12施設で行われた実用的な第3相RCTである。受傷現場から直接搬送され、大量輸血が必要と予測された重症外傷680例(2012年8月〜2013年12月)を、血漿:血小板:赤血球を1:1:1で投与する群(338例)と1:1:2で投与する群(342例)に割り付けた。比率は活動性の蘇生の間に適用し、それ以外の治療は各施設の標準どおりとした[1]。
- 主要評価:24時間全死亡 12.7%対17.0%(差−4.2%、95%CI −9.6〜1.1%、P=.12)、30日全死亡 22.4%対26.1%(差−3.7%、95%CI −10.2〜2.7%、P=.26)。いずれも有意差はなかった。
- 副次的な結果:24時間以内の主な死因だった失血死は9.2%対14.6%(差−5.4%、95%CI −10.4〜−0.5%、P=.03)、止血達成は86%対78%(P=.006)で、1:1:1群が良好だった。
- 投与量と安全性:最初の24時間の血漿は中央値7単位対5単位、血小板は12単位対6単位(いずれもP<.001)、赤血球はともに9単位だった。ARDS、多臓器不全、静脈血栓塞栓症、敗血症、輸血関連合併症を含む事前規定の23の合併症に差はなかった。
この試験は、早期から血漿と血小板をそろえて供給することを支持する。ただし「1:1:1で全死亡が改善した」とまとめると、主要評価と副次評価が入れ替わる。初期の供給をそろえる価値と、最適な比率が患者や時間帯を問わず固定されるかは、別の問いである。
本稿の解釈比べたのは1:1:1と1:1:2という、どちらも血漿を早くから使う2つの戦略である。血漿をほとんど使わない戦略との比較ではなく、この試験から「1:1:2では足りない」とも「1:1:1より高い比率がよい」とも言えない。比は北米の製剤単位で表したもので、国内での読み方は「日本で実施するとき」で述べる。
3.いつ起動するか:ABCスコア、ショック指数、TBSS
製剤が届くまでには時間がかかるため、MTPは輸血量が確定する前に起動を判断する。起動基準の研究の多くは「大量輸血を予測できるか」を評価しており、起動基準を使うと転帰がよくなるかは別の評価項目である。
- ABCスコア:穿通性の受傷機転、FAST陽性、来院時収縮期血圧90 mmHg以下、来院時心拍数120/分以上の4項目を、重み付けせずに数える。単施設の後ろ向き研究(受傷現場から直接搬送された成人596例、大量輸血12.4%)で、AUROCは0.842で、TASH(0.842)、McLaughlin(0.846)との差は統計学的に有意でなく、2点以上で大量輸血の感度75%、特異度86%だった[16]。
- ショック指数(SI)との比較:都市部のレベルI外傷センター1施設で外傷チームが起動された645例(18歳未満と頭部外傷を除外、2009〜2013年)では、24時間で赤血球10単位超を要する大量輸血の予測に、SI 1以上は感度67.7%(95%CI 49.5〜82.6%)・特異度81.3%(同78.0〜84.3%)、ABC 2以上は感度47.0%(同29.8〜64.9%)・特異度89.8%(同87.2〜92.1%)だった。AUROCはSI 0.83、ABC 0.74だった[17]。
- TBSS(国内):年齢、収縮期血圧、FAST、骨盤骨折の重症度、乳酸値の5項目からなる最大57点のスコアで、重症外傷119例で作成し113例で検証した。検証では、15点超を陽性とした感度97.4%、特異度96.2%で、AUROCは0.985だった。著者は多施設での追加の検証が必要としている[18]。
- TQIP 2014の起動基準:ABCスコア2以上、持続する循環動態の不安定、手術または血管塞栓術を要する活動性出血、初療室での輸血、のいずれか[14]。
本稿の解釈感度を上げれば過剰な起動が増え、特異度を上げれば起動の遅れが増える。どのスコアも単施設の後ろ向き研究が中心で、大量輸血の定義も研究ごとに違う。単一の閾値で決めるより、スコアの閾値、臨床判断で起動できる人、起動後に中止する条件を院内であらかじめ決めておくほうが運用しやすい。
4.検査が届くまでは供給、届いたら再評価
初期の固定比率と、その後の目標指向型の管理は両立する。欧州指針第6版の関連する推奨は次のとおりである[2]。
- 推奨11(1C):止血能を早期から繰り返し監視する。PT/INR、Clauss法のフィブリノゲン値、血小板数などの従来の検査、POCのPT/INR、粘弾性検査のいずれか、またはその組み合わせを用いる。
- 推奨25:大量出血が予想される患者の初期管理では、次の2つの戦略のいずれかを推奨する。フィブリノゲン濃縮製剤またはクリオプレシピテートと赤血球(1C)。FFP(または病原体不活化FFP)を、必要に応じてFFP:赤血球比少なくとも1:2で(1C)。加えて、血小板:赤血球の比を高くすることを提案する(2B)。
- 推奨26(1B):蘇生の継続は、標準的な凝固検査値とVEMの両方または一方に導かれる目標指向型の戦略で行う。
欧州指針の初期戦略には「1:1:1」という固定の比はなく、FFPを使う場合の下限(1:2)と、フィブリノゲンを中心にする戦略が並んでいる。国内指針(2019)は、大量輸血が予想される外傷患者にMTPを用いること(1C)と、初期治療で投与単位比1:1:1を目標に少なくとも1:1:2以上を保つこと(1C)を強く推奨している[12]。
出血が続いている間は、採血の結果待ちだけを理由に供給を止めない。結果が返ったら、フィブリノゲン、血小板数、凝固時間、線溶の所見を、体温・pH・イオン化カルシウムや臨床的な出血と合わせて見直し、補充を調整する。TQIPの指針も、外科的出血が制御されていれば、比率に基づく輸血を中止するか、検査所見に基づく輸血へ切り替えてよいとしている[14]。
本稿の解釈ここでいう目標指向型の管理は、VEM専用の言葉ではない。迅速な標準凝固検査を使う施設も含む。「装置があるか」だけでなく、採血から報告までの時間と、報告から投与までの時間を把握する必要がある。この工程の評価は本稿の実務上の提案であり、特定の時間目標を達成すれば死亡率が下がると証明されたわけではない。
5.VEMは何を見せ、何を見せないか
本稿の解釈TEGやROTEMは、全血の血餅の形成、強度、溶解の経時変化を示す。一方で、体内の血管内皮や局所の血流、すべての血小板機能を再現する検査ではない。波形を「患者の凝固のすべて」と考えない。
補充の閾値は装置と試薬ごとに決められている。次の表の閾値は、TQIP 2014が例示したものである[14]。「読むときの注意」の列は本稿の解釈である。
| 所見 | TQIP 2014の閾値の例 | 補充の候補(TQIP) | 読むときの注意(本稿の解釈) |
|---|---|---|---|
| 凝固開始の遅れ | ROTEM:EXTEM CT >100秒、INTEM CT >230秒。TEG:R >9分。rapid TEG:ACT >128秒 | 血漿 | 凝固因子の不足のほか、抗凝固薬などの影響もある。単独ではトロンビン生成能を定量できない |
| フィブリン由来の強度の低下 | ROTEM:FIBTEM MCF <8 mm。TEG・rapid TEG:α角 <60° | クリオプレシピテートまたはフィブリノゲン濃縮製剤、または血漿 | Clauss法のフィブリノゲン値、出血量、輸血歴と照らし合わせる |
| 全体の強度の低下(フィブリン由来の強度は保たれる) | ROTEM:EXTEM MCF <45 mmかつFIBTEM MCF >10 mm。TEG・rapid TEG:MA <55 mm | 血小板 | 血小板の数と機能は区別できない。抗血小板薬の影響も考える |
| 血餅の溶解 | ROTEM:EXTEM ML >15%。TEG:LY30 >7.5%。rapid TEG:LY30 >3% | 抗線溶薬 | 溶解が少ない波形だけで、線溶の活性化を否定できない |
装置・試薬・チャンネルが違えば、同じ名称の指標でも閾値は移せない。ITACTICのVHA群は別の論文で示されたアルゴリズムに従っており、その閾値は本稿では確認していない[3]。国内指針(2019)で確認した外傷の推奨(MTPと製剤比、フィブリノゲン、トラネキサム酸)にVEMの推奨文は見当たらず、第2版(2025)はキーワードに血液粘弾性検査を挙げているが、外傷での推奨文と強さは本文を取得できず未確認である[12][13]。
6.ITACTIC:比べたのは2つの検査併用プロトコル
ITACTICは、欧州の主要外傷センター7施設(2016年6月〜2018年7月)で行われたRCTである。出血の臨床徴候があって各施設のMHPが起動され、赤血球輸血が始まった成人外傷を、受傷3時間以内かつ救急外来到着から1時間以内に無作為化した。両群とも各施設の標準のMHP(トラネキサム酸、赤血球・血漿・血小板を1:1:1で送る経験的な供給、晶質液の制限)を受け、そのうえでVHAまたは標準凝固検査の結果に応じた止血治療を加えた。標準検査の異常はPT比1.2超と定義した[3]。
- 解析対象:ITT解析396例(VHA群201例、標準検査群195例)。
- 主要評価(受傷24時間で、生存かつ大量輸血〔赤血球10単位以上〕なし):67%対64%(OR 1.15、95%CI 0.76〜1.73)で差はなかった。
- 28日死亡:25%対28%(OR 0.84、95%CI 0.54〜1.31)。ほかの副次評価と重篤な有害事象にも差はなかった。
- 重症頭部外傷(事前規定のサブグループ74例):主要評価を満たした割合は64%対46%(OR 2.12、95%CI 0.84〜5.34)で、信頼区間は無効果を含んだ。著者は考察で、重症頭部外傷を伴う患者でVHA群の28日死亡が低かったことを「予想外で、偶然の所見かもしれない」と述べている[3]。この結果から「頭部外傷ではVEMが効く」とは結論できない。
研究結果原著が挙げた限界:主要評価の群間差は予測(13%)より小さかった(観測3%)。無作為化の前から両群に経験的なバランス輸血と止血治療が行われていたことが影響した可能性がある。副次評価と事後解析は多重比較の調整をしていない。VEMはVHA群でしか測っていないため、VEMでしか見つからない異常への治療効果は検討できなかった。サブグループの割付は層別化していない[3]。
反対の方向の結果もある。レベルI外傷センター1施設のRCT(MTPの起動基準を満たした外傷111例)では、TEGに基づくMTPが標準検査(INR、フィブリノゲン、血小板数)に基づくMTPより28日生存が高かった(死亡11例〔19.6%〕対20例〔36.4%〕、P=0.049)。最初の2時間の赤血球は同程度で、血漿と血小板はTEG群で少なかった[19]。
本稿の解釈単施設・少数例の陽性結果は、多施設のITACTICで再現されなかった。両試験では、対照群のMHPの内容、検査の返却の速さ、補充のアルゴリズムが異なる。読み取れるのは、「整った大量出血管理にVEMを加えることによる全体の転帰への上乗せは、多施設試験では示せなかった」ということだ。より重い凝固障害、特定のアルゴリズム、介入の速さで効果が変わるかは、次の検証課題として残る。
7.凝固因子製剤は、早く・多く入れればよいのか
重要なのは、低値や機能的な欠損を確かめてから補うことと、選んでいない患者へ一律に投与することを区別することだ。次の3つの試験は、いずれも後者に近い問いを扱った。
| 試験 | 対象 | 比較した戦略 | 主な結果 | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| CRYOSTAT-2(2023)[4] | 英米26施設。MHPが起動され、活動性出血があり、収縮期血圧90 mmHg未満(時点を問わない)で、製剤を1単位以上受けた成人。1,604例を無作為化、1,531例を解析 | 標準治療+クリオプレシピテート3プール(フィブリノゲン6 g相当)を無作為化から90分以内かつ受傷3時間以内 対 標準治療(非盲検) | 28日全死亡 25.3%対26.1%(OR 0.96、95%CI 0.75〜1.23、P=.74)。安全性の評価項目と血栓性イベント(12.7%対12.9%)にも差なし | 早期・経験的な高用量投与の試験。低フィブリノゲンを確かめた補充を否定する試験ではない |
| PROCOAG(2023)[5] | フランスのレベルI外傷センター12施設。大量輸血の危険がある外傷(最高レベルの外傷受け入れ4,313例のうち適格350例)。324例を解析 | 4因子PCC 1 mL/kg(第IX因子25 IU/kg)対 生理食塩液(二重盲検)。全例が比率に基づく早期輸血(赤血球:FFP 1:1〜2:1)を受けた | 24時間の製剤総量 中央値12単位対11単位(差0.2単位、95%CI −2.99〜3.33)。血栓塞栓症 35%対24%(RR 1.48、95%CI 1.04〜2.10) | 一律の追加を支持しない。著者も系統的な使用を支持しないと結論 |
| FiiRST-2(2025)[20] | カナダのレベルI外傷センター6施設。来院時にMHPが起動された16歳以上(無作為化前に赤血球2単位超を受けた例と重篤な頭部外傷〔catastrophic head injury〕を除外)。217例を登録、137例を主解析 | MHPパック1・2で、血漿4単位の代わりにフィブリノゲン濃縮製剤4 g+PCC 2,000 IU。両群とも同時に赤血球4単位(両パック)と血小板1回分(パック2)を投与 | 24時間の製剤 平均20.8単位対23.8単位(平均比0.87、片側97.5%CI 0.00〜1.19、P=.20)。血栓塞栓症、24時間・28日死亡に有意差なし | 条件付き検出力が25%未満となり中間解析後に中止。優越性なしは同等の証明ではない |
「有意差がない」は、同等性・非劣性・安全性が証明されたという意味ではない。また、ワルファリンなど抗凝固薬の中和にPCCを使う場面は、抗凝固薬を使っていない外傷患者にPCCを一律に投与する問題とは別である(抗凝固薬内服中の外傷)。
指針国内指針(2019)は、血漿フィブリノゲン150 mg/dL未満を伴う外傷の大量出血患者に、クリオプレシピテートまたはフィブリノゲン濃縮製剤を投与することを弱く推奨している(2C)[12]。国内の製剤と適応は「日本で実施するとき」で述べる。
8.低カルシウム血症:測る項目に入れておく
国内のFFPの電子添文は、短時間に大量輸血した場合、クエン酸による血中カルシウム濃度の低下による症状(手指のしびれ、嘔気など)やアシドーシスが起こり得ると記載している。FFPの保存液にはクエン酸ナトリウムとクエン酸が含まれる[10]。TQIP 2014も、低体温・アシドーシスとともに低カルシウム血症を、凝固障害を悪化させ是正すべき因子に挙げている[14]。
輸血の前から低い患者も多い。輸血前の来院時カルシウム値を調べた15研究のメタ解析(2024年6月30日までの検索)では、低カルシウム血症の頻度は56%(95%CI 37〜74%)で、研究間の異質性は大きかった。低カルシウム血症の患者は死亡が多かった(OR 2.44、95%CI 1.76〜3.40)。著者はイオン化カルシウムの監視を勧め、至適な閾値・治療手順・転帰を検討する研究を優先すべきとしている[21]。
これは関連であり、カルシウムを補えば死亡が減ることを示したものではない。院外でのカルシウム投与と院内でのバソプレシン投与をプラセボと比べるRCT(CAVALIER)の試験ページには、2026年9月24日の確認時点で結果は掲載されていなかった[22]。
本稿の解釈MTPの起動時からイオン化カルシウムを測定項目に入れ、測る間隔と補充を担当する人を決めておく。補充の目標値は、本稿で確認した範囲では試験で確立していない。
9.全血輸血:観察研究とRCTの食い違い
全血は赤血球・血漿・血小板を1つの袋で運べる。しかし、運びやすさと患者の転帰の改善は、別に評価する必要がある。
成人と小児の文民の外傷を対象に観察研究を統合したメタ解析(24研究、58,717例、うち低力価O型全血5,164例、2023年12月1日までの検索)では、低力価O型全血は成分輸血と比べて24時間生存(RR 1.07、95%CI 1.03〜1.12)と後期の生存(RR 1.05、95%CI 1.01〜1.09)の改善と関連した。全研究の偏りは中等度と判定され、著者は多施設RCTで確認中と述べていた[8]。その後に公表された2つのRCTは、院外での全血の使用を検証した。
| 試験 | デザイン・場面 | 対象・解析数 | 比較 | 主要評価の結果 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|
| SWiFT(2026)[6] | 実用的第3相、非盲検、優越性RCT。英国の航空救急10サービス | 外傷による大出血。942例を無作為化し、外傷以外の出血と外傷性心停止を除く616例(全血群314、標準群302)を解析 | 病院到着前に全血最大2単位 対 赤血球・血漿を各最大2単位 | 24時間以内の死亡または大量輸血(製剤10単位以上):48.7%対47.7%(RR 1.02、95%CI 0.80〜1.31、P=0.84) | PTが基準範囲を超えたのは40.7%対30.5%。重篤な有害事象は標準群37、全血群31で標準群に多い。血栓性イベントは同程度 |
| TOWAR(2026)[7] | 実用的第3相クラスターRCT。米国の航空医療拠点44か所を2:1で1か月単位に割付 | 病院前の輸血を要した外傷。全血群715例・成分群305例のうち695例・298例を解析 | 全血最大2単位 対 必要に応じた成分(血漿、赤血球、またはその両方) | 30日死亡 25.9%対20.5%(調整OR 1.24、95%CI 0.87〜1.76、P=0.24) | 有害事象に大きな差なし。観察的サブ研究で、保存15〜21日と1〜14日の全血の30日死亡は27.1%対26.4%(調整OR 0.99、95%CI 0.74〜1.32) |
本稿の解釈両試験とも、輸血しない群との比較ではない。院外で始める限られた量の戦略を評価しており、院内の蘇生全体を全血で行う戦略の答えにもならない。TOWARの全血群の30日死亡は数値上高いが、信頼区間は1をまたいでおり、害を示したとも言えない。観察研究とRCTの食い違いには、全血を受けた患者の選ばれ方や、比較した成分輸血がすでに早期・高比率になっていることなどが関わる可能性があるが、検証されてはいない。2026年時点では「全血へ置き換えれば死亡が減る」と約束せず、供給、製剤管理、適合性、搬送の環境を含めて導入を評価するのが妥当である。
10.開始だけでなく、切り替えと終了まで設計する
本稿の解釈本稿では、MTPの振り返りを次の4点で行うことを提案する。
- 起動:活動性出血と生理学的な破綻を認識し、輸血部門と止血チームへ伝わったか。
- 初期供給:必要な製剤が到着し、実際に患者へ投与されたか。
- 調整:繰り返しの検査(イオン化カルシウムを含む)と術野の変化に応じ、補充を修正できたか。
- 終了:止血と循環の改善を確認し、経験的なパックを漫然と追加せず、輸血部門へ終了を伝えたか。
これは検証済みのスコアではなく、原著と指針を施設の運用へ翻訳するための確認項目である。TQIP 2014も、外科的出血の制御後の切り替えと、蘇生が無益と判断されたときの終了を明記している[14]。MTPの本命は装置や1つの製剤ではない。出血源の制御と、患者に合わせて変えられる止血蘇生を、途切れずに実行するチームの仕組みにある。
根拠の比較表
表はスマートフォンでは横にスクロールして読む。群の値は「介入・比較」の列に書いた順(前者対後者)で示す。
| 出典(年) | デザイン | 対象 | 介入・比較 | 主な結果 | 限界と診療への意味 |
|---|---|---|---|---|---|
| PROMMTT(2013)[15] | 前向き観察研究(米国10施設) | 24時間以内に製剤3単位以上を受けた成人外傷905例 | 時間とともに変わる血漿:赤血球比・血小板:赤血球比 | 6時間死亡と、血漿比の上昇(調整HR 0.31、95%CI 0.16〜0.58)・血小板比の上昇(0.55、0.31〜0.98)が関連。24時間以降は関連なし | 観察研究。比率の因果効果は示せない |
| PROPPR(2015)[1] | 実用的第3相RCT(北米12施設) | 大量輸血が予測された重症外傷680例 | 血漿:血小板:赤血球 1:1:1 対 1:1:2 | 24時間死亡12.7%対17.0%(差−4.2%、95%CI −9.6〜1.1%)、30日死亡22.4%対26.1%(差−3.7%、−10.2〜2.7%)。止血86%対78%、失血死9.2%対14.6% | 主要評価は有意差なし。高い比率どうしの比較 |
| Nunez(2009)[16] | 単施設後ろ向き | 受傷現場から直接搬送された成人596例(大量輸血12.4%) | ABC、TASH、McLaughlinの各スコア | AUROC 0.842、0.842、0.846。ABC 2以上で感度75%、特異度86% | 単施設。起動で転帰が変わるかは評価していない |
| Schroll(2018)[17] | 単施設後ろ向き | 外傷チーム起動645例(18歳未満・頭部外傷を除外) | SI 1以上 対 ABC 2以上 | 感度67.7%対47.0%、特異度81.3%対89.8%。AUROC 0.83対0.74 | 大量輸血の定義(24時間で赤血球10単位超)に依存 |
| Ogura(2014)[18] | 国内単施設(作成119例・検証113例) | 重症外傷 | TBSS(年齢、収縮期血圧、FAST、骨盤骨折、乳酸値) | 15点超で感度97.4%、特異度96.2%。AUROC 0.985 | 少数例。著者も多施設での検証が必要としている |
| Gonzalez(2016)[19] | 単施設RCT | MTPが起動された外傷111例 | TEGに基づくMTP 対 標準検査に基づくMTP | 死亡19.6%対36.4%(P=0.049)。最初の2時間の血漿・血小板はTEG群で少ない | 単施設・少数例。多施設のITACTICで再現されず |
| ITACTIC(2021)[3] | RCT(欧州7施設) | MHP起動・赤血球輸血開始の成人外傷396例 | VHA併用 対 標準検査併用(両群とも経験的なMHP) | 24時間の生存かつ大量輸血なし67%対64%(OR 1.15、95%CI 0.76〜1.73)。28日死亡25%対28%(OR 0.84、0.54〜1.31) | 群間差は予測より小さい。頭部外傷の結果は探索的 |
| CRYOSTAT-2(2023)[4] | 非盲検RCT(英米26施設) | MHP起動の成人1,604例(解析1,531例) | 早期・経験的な高用量クリオ追加 対 標準治療 | 28日死亡25.3%対26.1%(OR 0.96、95%CI 0.75〜1.23) | 選んだ患者への補充の効果は検証していない |
| PROCOAG(2023)[5] | 二重盲検RCT(仏12施設) | 大量輸血の危険がある外傷324例 | 4因子PCC 対 生理食塩液 | 24時間製剤12単位対11単位(差0.2、95%CI −2.99〜3.33)。血栓塞栓症35%対24%(RR 1.48、1.04〜2.10) | 一律投与を支持しない |
| FiiRST-2(2025)[20] | RCT(カナダ6施設) | MHP起動の16歳以上。登録217例、主解析137例 | フィブリノゲン濃縮製剤+PCC 対 血漿(初期パック) | 24時間製剤20.8単位対23.8単位(平均比0.87、P=.20) | 早期中止。優越性なしは同等ではない |
| Morgan(2024)[8] | 観察研究のメタ解析(24研究) | 成人と小児の文民の外傷58,717例(低力価O型全血5,164例) | 低力価O型全血 対 成分輸血 | 生存のRR:24時間1.07(95%CI 1.03〜1.12)、後期1.05(1.01〜1.09) | 観察研究のみ。偏りは全研究で中等度 |
| SWiFT(2026)[6] | 実用的第3相RCT(英国の航空救急10サービス) | 外傷による大出血。解析616例 | 院外で全血最大2単位 対 赤血球・血漿を各最大2単位 | 24時間の死亡または大量輸血48.7%対47.7%(RR 1.02、95%CI 0.80〜1.31) | 院外・限られた量。PTの延長は全血群に多い |
| TOWAR(2026)[7] | クラスターRCT(米国の航空医療拠点44か所) | 病院前の輸血を要した外傷。解析993例 | 全血最大2単位 対 必要に応じた成分 | 30日死亡25.9%対20.5%(調整OR 1.24、95%CI 0.87〜1.76) | 院外。全血の優越性なし |
| Takiguchi(2025)[23] | 国内後ろ向き研究(JTDB、2019〜2022年) | 24時間に赤血球10単位以上を受けた鈍的外傷2,849例 | FFP:赤血球比・PC:赤血球比(国内の単位) | FFP:赤血球比1〜1.5で院内生存が高い(0.5〜1との比較で調整OR 1.46、95%CI 1.12〜1.92)。PC比1.5〜2は1.62(1.00〜2.69、P=0.053) | 観察研究。国内の単位比で検討した数少ないデータ |
| Srichuachom(2025)[21] | 観察研究のメタ解析(15研究) | 輸血前に来院した成人の重症外傷 | 来院時の低カルシウム血症の有無 | 頻度56%(95%CI 37〜74%)。死亡OR 2.44(1.76〜3.40) | 関連のみ。補充の効果は示していない |
評価時点について:PROMMTTの主解析は院内死亡を時間依存で扱い、Takiguchiは院内生存、Morganの「後期」は28日・30日・院内の死亡をまとめたものである。表の値は評価時点が同じ研究どうしの比較ではない。
指針の比較表
| 指針(年) | 起動・初期供給 | 検査・VEM | フィブリノゲンほか | 強さ・注意 |
|---|---|---|---|---|
| 欧州外傷出血ガイドライン第6版(2023)[2] | 初期はフィブリノゲン濃縮製剤またはクリオ+赤血球(1C)、またはFFP:赤血球少なくとも1:2(1C)。血小板:赤血球比を高く(2B) | 早期から繰り返し監視(1C)。標準検査とVEMの両方または一方で目標指向型に継続(1B) | フィブリノゲン・血小板・カルシウムの閾値の推奨は本稿の取得範囲外(未確認) | 文献検索は既存の推奨が2018年1月1日〜2021年12月2日、新しい項目が2001年1月1日〜2021年12月2日 |
| ACS TQIP 大量輸血(2014)[14] | 起動:ABC 2以上、持続する循環不安定、手術・塞栓を要する活動性出血、初療室での輸血。血漿:赤血球1:1〜1:2、赤血球6単位ごとに血小板1 | TEG・rapid TEG・ROTEMの閾値を例示 | 低カルシウム血症を含む増悪因子の是正 | 米国の製剤単位と体制が前提。2026年9月時点で掲載は2014年版 |
| 日本輸血・細胞治療学会(2019)[12] | MTPを用いる(1C)。投与単位比FFP:PC:RBC 1:1:1を目標、少なくとも1:1:2以上を維持(1C) | 確認した外傷の推奨にVEMの推奨文は見当たらず | フィブリノゲン150 mg/dL未満でクリオまたは濃縮製剤(2C)。トラネキサム酸は発症後3時間以内が望ましい(2B) | 国内の単位比で示す |
| 同 第2版(2025)[13] | 外傷の推奨文と強さは本文未取得で未確認 | キーワードに血液粘弾性検査を含む。推奨文は未確認 | 確認できたのは心臓血管外科のCQ1(フィブリノゲン150 mg/dL以下で濃縮製剤またはクリオ、2C)のみ | 現行の版。改訂内容は原文で確認が必要 |
日本で実施するとき
製剤の単位と「1:1:1」の読み替え
日本赤十字社の電子添文(2026年8月改訂 第3版)では、各製剤の単位は次のとおりである。
- 赤血球液-LR:RBC-LR-1は血液200 mLに由来する赤血球(1単位)、RBC-LR-2は400 mL由来(2単位)。2〜6℃で保存し、有効期間は採血後28日間[9]。
- 新鮮凍結血漿-LR:FFP-LR120は血液200 mLに由来する血漿、FFP-LR240は400 mLに由来する血漿、FFP-LR480は成分採血による480 mL。−20℃以下で採血後1年間。30〜37℃で融解し、直ちに使えない場合は2〜6℃で保存して融解後24時間以内に使う[10][24]。
- 照射濃厚血小板-LRBS:1単位は血小板0.2×1011個以上。10単位(約200 mL)は2.0×1011個以上、15単位・20単位(約250 mL)はそれぞれ3.0×1011・4.0×1011個以上。20〜24℃で振とうしながら保存し、採血後6日間[11]。
国内指針(2019)は比を「各製剤の投与単位比」として示している[12]。本稿の換算FFPの電子添文には「単位」の記載がないため、ここでは由来する血液量でそろえる。たとえば赤血球液10単位(血液2,000 mL由来)に対して、同じく血液2,000 mL由来の血漿(FFP-LR240なら5本、FFP-LR120なら10本)と濃厚血小板10単位(2.0×1011個以上)が1:1:1、血液1,000 mL由来の血漿(FFP-LR120なら5本)と濃厚血小板5単位が1:1:2に当たる。国内のJTDB研究も、比を国内の単位で計算している[23]。
一方、PROPPRやTQIPの比は北米の製剤単位で表されている。TQIPは「赤血球6単位ごとにアフェレーシス血小板1単位またはプール血小板1つ」としている[14]。海外の1単位あたりの採血量や血小板の含有量を示す原資料は、本稿では確認していない(未確認)。そのため、海外の「単位数」を院内パックの本数にそのまま写さず、国内指針の投与単位比、または由来する血液量と血小板数で設計する。
国内の指針とJATEC
- 日本輸血・細胞治療学会「大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン」(2019):外傷について、MTPの使用(1C)、投与単位比の目標(1C)、フィブリノゲン150 mg/dL未満での補充(2C)、トラネキサム酸(2B)を推奨する[12]。
- 同 第2版(2025年12月):日本輸血細胞治療学会誌 71巻6号に掲載された[13]。外傷の推奨文と強さは本文を取得できず未確認である。旧版の推奨が改訂された可能性があるため、院内の手順書を改める際は第2版の原文で確かめる。
- 輸血療法実践ガイド(令和8年2月):日本輸血・細胞治療学会ガイドライン委員会が、厚生労働省の「血液製剤の使用指針」と「輸血療法の実施に関する指針」を統合したガイドとして作成し、厚生労働省のウェブサイトに掲載されている[25]。大量出血の章の内容は取得できず未確認である。
- JATEC:日本外傷診療研究機構が公開する外傷初期診療ガイドライン改訂第6版の改訂概要には、受傷早期(1時間以内、遅くとも3時間以内)のトラネキサム酸投与を推奨に加えたこと、循環が明らかに破綻している場合は初期輸液への反応をみるまでもなく蘇生的な止血術と大量輸血プロトコルを発動することを強調したことが記載されている。製剤比についての記載は見当たらなかった[26]。本文は未確認である。
全血・クリオプレシピテート・フィブリノゲン濃縮製剤
- 全血:日本赤十字社は人全血液-LR(血液200 mL由来の1単位、400 mL由来の2単位。白血球の大部分を除去、2〜6℃で採血後21日間、効能・効果は「一般の輸血適応症」)を供給している[27]。SWiFTやTOWARのような外傷の緊急輸血用の全血を院外・初療室に備える国内の仕組みは、本稿の確認範囲では見つからなかった(未確認)。
- クリオプレシピテート:日本赤十字社の製剤一覧(2026年9月24日確認)に、クリオプレシピテートとフィブリノゲン製剤は含まれていない[28]。院内での調製の手順や保険上の扱いは本稿では未確認である。
- フィブリノゲン濃縮製剤:フィブリノゲンHT静注用1g「JB」の電子添文(2026年3月改訂 第2版)の効能・効果は、先天性低フィブリノゲン血症の出血傾向と、産科危機的出血・心臓血管外科手術における出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症(血中フィブリノゲン値150 mg/dL未満)へのフィブリノゲンの補充である。心臓血管外科手術は人工心肺を用いた手術の出血に限られ、投与直前のフィブリノゲン値の測定が求められる[29]。外傷は効能・効果に含まれていない。海外の指針の推奨と国内の承認は別の情報である。
国内のデータ
JTDB(2019〜2022年)を用いた後ろ向き研究では、24時間以内に赤血球10単位以上(国内の単位)を受けた鈍的外傷2,849例で、FFP:赤血球比1〜1.5は0.5〜1に比べて院内生存が高かった(調整OR 1.46、95%CI 1.12〜1.92、P=0.006)。PC:赤血球比1.5〜2は生存が高い傾向だった(調整OR 1.62、95%CI 1.00〜2.69、P=0.053)。ショックを伴う体幹部外傷の型(70.3%)では、FFP:赤血球比1〜1.5(調整OR 1.56、95%CI 1.12〜2.20)と2超(同2.32、1.14〜5.10)が生存の高さと関連した[23]。観察研究であり、比率を上げたことの効果を証明するものではない。起動の予測では、国内単施設で作られたTBSSがある[18]。
施設体制
- 起動基準(スコアの閾値と臨床判断)、起動できる人、輸血部門への連絡経路を文書にする。
- 1回目・2回目のパックの中身を、国内の単位と本数で決める(例:赤血球液・FFP・濃厚血小板の単位数、FFPの融解にかかる時間)。
- 検査の項目(フィブリノゲン、血小板数、PT、イオン化カルシウム、VEMの有無)、採血の間隔、結果が返るまでの時間を把握する。
- 使える製剤、不足したときの代替、調製・搬送にかかる時間を明文化する。検査で不足が分かってから供給方法を相談し始めると、その間に治療が止まる。
- 切り替えと終了の条件、終了を輸血部門へ伝える担当を決める。医師だけでなく、輸血部門・看護師・麻酔科・手術室と同じ手順を共有する。麻酔導入と術中の輸血は外傷麻酔も参照。
まだ分からないこと
- 最適な比率と、その切り替えの時期。PROPPRは1:1:1と1:1:2の比較で、主要評価に差はなかった[1]。より高い比率や、患者ごとに比率を変える戦略の比較試験は、本稿の確認範囲にはない。
- VEMで生存が改善するか。単施設RCTでは生存が高かったが[19]、多施設のITACTICでは全体の差を示せなかった[3]。どのアルゴリズムが、どの患者で効くかは未確定である。
- 院内での全血。2つのRCTは院外で最大2単位の全血を評価したもので[6][7]、院内の蘇生全体を全血で行う効果は分からない。国内で外傷の緊急輸血用の全血を運用する体制も確認できていない。
- カルシウムの補充。低カルシウム血症と死亡の関連は示されているが[21]、補充の目標値と効果を検証するRCTは結果が出ていない[22]。
- 国内指針第2版の外傷の推奨。本稿では本文を取得できず、2019年版からの変更点は未確認である[13]。
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文献
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医学的内容の最終確認日・確認範囲
文献ごとの確認範囲を開く(最終確認日:2026年9月26日)
医学的内容の最終確認日:2026年9月26日(著者確認)。文献照合日:2026年9月24日(文献の検索・照合も同日)。PubMedの抄録(NCBI BioC)、OpenAlex、Semantic Scholar、Crossref、Europe PMC、出版社、学会・公的機関・日本赤十字社の公式資料を直接開いて確認した。PubMedの検索(E-utilities)とPMCの一部には接続できなかった。OpenAlex(文献データベース)の抄録は、公開されている抄録の単語データから復元したもので、群と数値の対応は別の経路(Semantic Scholar、BioC、Europe PMC)で照合したものを採用した。検索記録は編集部で保管している。
- 本文の該当箇所を確認:[3] [12] [14] [23]。ITACTICは出版社の公開本文で組み入れ基準・両群のMHP・限界・考察を、TQIP 2014は公式PDFで起動基準・比率・VEMの閾値・中止の文を、2019年の国内指針は学会公開PDFで外傷のCQ1・2・4の推奨文を、Takiguchi 2025は出版社の公開本文で抄録と大量輸血の定義を確認した。
- 一部のみ確認:[2] [25] [26]。欧州指針第6版は出版社PDFで推奨11・25・26と文献検索期間のみ確認し、推奨27以降(フィブリノゲン・血小板・カルシウムなど)は取得範囲外だった。輸血療法実践ガイドは題名・作成主体・位置づけの記述のみで、大量出血の章は未確認。JATECは改訂概要(公式PDF)のみで、本文は未取得。
- 抄録のみ確認:[1] [4] [5] [6] [7] [8] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21]。本文中の数値は抄録にある範囲に限った。PROPPRの組み入れ・除外基準と製剤パックの中身は本文を取得できず、書いていない。
- 書誌と抄録の単語データの一部のみ確認:[13]。J-STAGEの目次(第71巻第6号、2025年12月20日発行)と記事ページの書誌、OpenAlexが公開する抄録の単語データに含まれるキーワードと心臓血管外科のCQ1のみ。外傷の推奨は未確認。J-STAGEの記事ページの書誌とCrossref・OpenAlexは発行日を2024年12月20日としており、目次の表示と一致しない(記事ページの受付日は2025年9月18日)。
- 公式情報を確認:[9] [10] [11] [22] [24] [27] [28] [29]。日本赤十字社の電子添文と製剤一覧、KEGG MEDICUS掲載のフィブリノゲンHTの電子添文、CAVALIERの試験ページ。
- 未取得:PROPPRの本文(PMCのページを取得できず)、国内指針第2版の本文(J-STAGEのPDFは自動取得不可)、欧州指針第6版の推奨27以降、JATEC改訂第6版の本文、英国JPAC・BSHの大量出血の指針、海外の製剤1単位の量を示す原資料、クリオプレシピテートの院内調製と保険上の扱い。
- 訂正・撤回:PROPPRとITACTICはCrossrefで訂正・撤回の登録なし。CRYOSTAT-2はEurope PMCで論評のみ。PROMMTT、Nunez、Schroll、PROCOAG、FiiRST-2、SWiFT、TOWARはOpenAlexで撤回の登録なし(2026年9月24日確認)。
更新履歴
更新履歴を開く(全7件・最新:2026年9月26日)
- 2026年9月26日(表記):確認範囲の記載を読者向けの表現に改め、関連記事と分野の一覧へのリンクを加えた(医学的内容は変えていない)。
- 2026年9月26日(著者確認):著者(医師)が数値・用量・適用条件を含む医学的内容を確認した。確認日の表記を更新した。
- 2026年9月24日(改訂):原著と指針の照合にもとづき全面改訂した。冒頭の要点、対象と扱わない範囲、MTPの起動基準(ABCスコア、ショック指数、TBSS)、PROMMTT、TQIP 2014の具体的な内容、欧州指針第6版の推奨文、VEMの単施設RCT、低カルシウム血症、全血の観察研究メタ解析、根拠と指針の比較表、「日本で実施するとき」(国内の製剤単位での読み替え、国内指針、全血・クリオ・フィブリノゲン濃縮製剤、JTDB研究)、まだ分からないこと、文献ごとの確認範囲を加えた。文献は通し番号に改めた。理由:結論と適用条件の要点、確認日と確認範囲、国内の単位での読み方がなく、文献番号が飛び番で追いにくかったため。あわせて、原著の抄録で確認できなかった記載を修正した(PROPPRの止血達成を抄録の86%対78%に、SWiFTの「修正ITT集団641人」は抄録で確認できず削除、国内指針第2版のVEMの推奨〔2C〕は本文を取得できず未確認とした)。
- 2026年9月23日:記事末に学び方・noteの案内ブロックを追加した(WordPressのリビジョン記録で確認)。
- 2026年9月20日(追記):SWiFTの解析対象とITACTICの頭部外傷の補足解析を追記した(改訂前の本文の記載による)。
- 2026年9月14日(エビデンス増補):主要原著と国内外の指針をもとに増補した(改訂前の本文の記載による)。
- 2026年7月2日(初版):初版を作成した(WordPressのリビジョン記録で最も古い保存日)。
本記事は医療従事者への教育および一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。実際の診療では、各施設のプロトコルおよび最新の診療ガイドラインをご確認ください。
利益相反:本記事に関連して開示すべき利益相反はありません。


コメント
コメント一覧 (8件)
[…] → 外傷に伴う凝固異常を整理する外傷性凝固障害(TIC) → 輸血戦略とエビデンスを読む大量輸血プロトコル(MTP) → 外傷初期診療 ダメージコントロール 出血性ショック 外傷麻酔 […]
[…] → 輸血戦略とエビデンスを読む大量輸血プロトコル(MTP) → 導入から止血までを考える外傷麻酔の実践 → 凝固・輸血 DIC TIC […]
[…] 大量輸血プロトコル(MTP) […]
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[…] 大量輸血プロトコルの起動基準、製剤比、国内の単位換算、全血輸血は大量輸血プロトコル(MTP)の記事で扱う。 […]
[…] 止血の前と後で、輸液の目的は別物として扱う。止血前の蘇生(制限的な輸液、大量輸血プロトコル)は大量輸血プロトコル(MTP)の記事に譲る。止血後は、蘇生(Resuscitation)の後に続く最適化(Optimization)・安定化(Stabilization)・排出(Evacuation)の段階で、水分バランスの目標がプラスからゼロ、マイナスへ移る[1]。段階の境目は時刻ではなく、出血の制御と灌流の指標で判断する(本稿の解釈)。 […]
[…] 外傷で最も大きい介入は止血と灌流の回復で、その方法は大量輸血プロトコル(MTP)と外傷後の輸液管理で扱う。抗菌薬の腎毒性と用量調整は外傷後の抗菌薬:予防投与と感染治療をどう分けるかを参照。 […]