骨盤骨折による出血性ショックでは、TAE(経カテーテル動脈塞栓術)、PPP(腹膜前骨盤パッキング)、骨盤の固定、REBOA(大動脈内バルーン遮断)のどれか一つを正解とせず、出血源と、止血を何分後に始められるかで組み合わせを決める。本稿は成人の鈍的骨盤骨折を対象に、指針の推奨とその強さ、PPPとTAEの比較研究の数値と限界、2023年以降に不利な結果が続くREBOAの評価、国内の分類・IVR体制・データを原著で確かめて整理する。
医療従事者向け:本記事は教育および一般的な医学情報の提供を目的としています。個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。
まず押さえる要点
- 骨盤以外の出血を並行して探し、固定を早く始める。WSES 2017は非侵襲的な骨盤圧迫を早期の手段として強く推奨し(1A)、バインダーは大転子と恥骨結合の高さに巻くとしている[1]。骨盤骨折があるとき、FASTは腹腔内出血を否定できるほど感度が高くない(EAST 2011、Level I)[2]。
- TAEは動脈性出血に有効で、始めるまでの時間が転帰と関連する。米国の登録研究(来院4時間以内に塞栓を受けた181例)では、来院から塞栓までが1時間延びるごとに院内死亡のオッズ比1.79(95%CI 1.11〜2.91)[3]。国内の日本外傷データバンク(JTDB)では、来院時に循環が安定していた例でも、150〜180分で塞栓した群の調整30日死亡が17.0%(95%CI 10.2〜23.9%)だった[4]。どちらも観察研究で、遅れた理由による交絡は除けない。
- PPPはTAEの代わりではなく、組み合わせる手段。欧州指針は、出血が続くとき、または塞栓を適時に行えないときの一時的な腹膜外パッキングを推奨する(1C)[5]。PPPの後に塞栓を要した割合は、単施設で13%[6]、18研究の統合で27%だった[7]。両者を比べた無作為化試験は見つからず、両群を比べた統合解析では院内死亡に有意差は出ていないが、同等を示したものでもない[7][8]。
- REBOAは止血ではなく橋渡しで、ルーチンの使用を支持する根拠はない。英国の無作為化試験(UK-REBOA)の90日死亡はREBOA群54%、標準治療群42%(オッズ比1.58、95%信用区間0.72〜3.52)だった[9]。EAST 2025は、骨盤骨折を含む横隔膜下出血が疑われる循環不安定な外傷で、REBOAの使用に条件付きで反対している(確実性は非常に低い)[10]。使うなら、決定的止血へすぐ移れる体制が前提である[11]。
- 国内の判断材料は、観察研究と体制の情報に限られる。JTDBの研究は、塞栓の遅れ、緊急塞栓、病院前バインダー、REBOAの推移と転帰の関連を示すにとどまる[4][12][13][14]。JATEC・JETECの本文、国内のREBOAカテーテルの製品と保険上の扱い、夜間・休日のIVR体制の全国データは、本稿では未確認である。
対象と扱わない範囲
対象:成人(研究により16歳以上または18歳以上)の鈍的骨盤輪骨折で、出血性ショックまたは持続する出血が疑われる患者。救急外来の初期評価から、止血直後の再評価までを扱う。
扱わない範囲:
- 小児と妊婦(本稿の数値は主に非妊娠の成人のもの。妊婦へのバインダー装着の注意は2節)。
- 骨盤輪・寛骨臼の根治的固定の手技、泌尿生殖器・直腸損傷の修復、開放骨盤骨折の感染対策の詳細。
- 穿通性外傷と、REBOAの挿入手技そのもの。腹部の損傷を伴う場合の手術判断はDamage Control Surgery:いつ手術を切り上げ、いつ再建するかも参照。
1.緊急度と出血源:骨折型だけで決めない
WSES 2017は、骨盤骨折の10〜15%がショックの状態で救急外来に到着し、その約3分の1が死亡し、最近の報告では死亡率32%に達すると記載している[1]。出血源については、静脈80%・動脈20%、あるいは出血の85%が骨・軟部組織・大きな静脈に由来するという推定を引いている[1]。本稿の解釈これは骨盤骨折全体の推定で、目の前の不安定な患者で動脈性出血がどれだけ関わるかは、CTや治療への反応で個別に見直す。
WSES分類:骨折の形と循環を合わせる
WSES分類は、Young-Burgess分類(骨折の力学的な型)、循環動態、合併損傷を合わせて考える[1]。
- grade I(軽症):APC I・LC Iで、循環が安定
- grade II(中等症):APC II〜III・LC II〜IIIで、循環が安定
- grade III(中等症):垂直剪断(VS)・複合機序(CM)で、循環が安定
- grade IV(重症):骨折型を問わず、循環が不安定
WSESの「循環不安定」は、来院時収縮期血圧90 mmHg未満、または90 mmHg以上でも急速輸液・輸血・昇圧薬を要する、来院時の塩基欠乏6 mmol/L超、ショック指数1超、最初の24時間に赤血球4〜6単位以上の輸血、のいずれか(原文は and/or)とされる[1]。「単位」は海外の製剤の単位である(「日本で実施するとき」参照)。
EAST 2011も、骨盤X線の骨折型だけでは死亡、出血、血管造影の必要性を予測できないとし、500 cm³を超える骨盤血腫では動脈損傷と血管造影の必要が多いとした(いずれもLevel II)[2]。
FASTとCTで何を決めるか
- FAST:循環不安定な骨盤骨折では開腹止血を勧めるのに十分な特異度があるが、腹腔内出血を除外できるほどの感度はない(EAST 2011、Level I)[2]。WSESは不安定な患者に骨盤X線とE-FASTを推奨する(1B)[1]。
- 造影CT:WSESは循環が安定した患者に多相の造影CTを推奨し(1B)、動脈性の造影剤漏出と骨盤血腫を、塞栓が必要になることを最もよく予測する所見とする(1C)[1]。
- CTの限界:造影剤漏出がなくても、活動性出血を常に否定できるわけではない(EAST 2011、Level II)[2]。
本稿の解釈「CTを撮れる血圧になった」と「CT室への移動と撮影の間も安全に待てる」は別の判断である。輸血を続けないと血圧を保てない、乳酸や塩基欠乏が改善しない場合は、画像がそろう前に止血チームを呼ぶ。
2.初療で並行すること:骨盤の固定と止血の準備
WSESは、骨盤輪を安定させ蘇生早期の骨盤出血を減らすため、非侵襲的な骨盤圧迫を早期の手段として推奨し(1A)、バインダーはシーツで巻くより出血の制御に優れるとした(1C)。生理学的に正当化できしだい外し、必要なら創外固定や根治的な固定に置き換える(1B)。妊婦と高齢者では注意して装着し(2A)、装着中はできるだけ早くバックボードから移して皮膚の圧迫損傷を減らす(1A)[1]。
装着の位置は、大転子と恥骨結合を囲む高さとされる[1]。米国外科学会(ACS)TQIPの2015年の整形外傷の指針も、バインダーまたはシーツを大転子に合わせて巻くとしている[15]。
効果の大きさには不確かさがある。EAST 2011は、一時的なバインダーは骨盤の容積を減らし出血を抑え得るが、死亡には影響しないようだとした(Level III)[2]。欧州指針(2023年)は、出血性ショックを伴う骨盤輪損傷ではできるだけ早く骨盤輪を閉じて安定させること(推奨20、1B)と、骨盤骨折が疑われるときの病院前でのバインダーの補助的使用(1C)を推奨している[5]。国内のJTDB(2019〜2023年)では、病院前のバインダー使用は鈍的骨盤骨折の1.8%にとどまり、傾向スコアでマッチさせた比較では24時間の赤血球輸血量に有意差はなく、院内死亡は同程度で、骨盤の塞栓は多かった(「根拠の比較表」参照)[13]。
止血の準備と並行して輸血を始める。トラネキサム酸について欧州指針は、出血している、または重大な出血の危険がある外傷患者に、できるだけ早く、可能なら搬送中に、受傷後3時間以内に1 gを10分で投与し、続けて1 gを8時間で投与することを推奨し(1A)、粘弾性検査の結果を待たないことを推奨している(1B)[5]。凝固障害の評価と補正は外傷性凝固障害(TIC)とは?なぜ脳・肺損傷で悪化するのか、麻酔導入と輸血の進め方は外傷麻酔の実践:出血性ショックの導入から止血までをエビデンスで考えるで扱う。
3.TAE:誰に、いつまでに始めるか
WSES 2017のTAE(原文 angioembolization)の推奨は次のとおりである[1]。
- 後腹膜の骨盤出血のうち、動脈性の出血源に対して有効な止血手段である(1A)。
- 骨盤の安定化、積極的な止血的蘇生の開始、骨盤外の出血源の除外の後に、循環不安定または出血持続の所見がある患者は、血管造影・塞栓を考慮すべき(2A)。
- CTで骨盤内に動脈性の造影剤漏出がある患者は、循環動態にかかわらず血管造影・塞栓が有益な場合がある(2A)。
- 骨盤外の出血源を除外したうえで、血管造影の後も出血の徴候が続く患者は、再度の血管造影・塞栓を考慮すべき(2B)。高齢者は循環動態にかかわらず考慮すべき(2C)。
EAST 2011も、骨盤外の出血源を除外した後の循環不安定・出血持続例と、CTで動脈性の造影剤漏出がある例について、血管造影・塞栓を考慮すべき、または必要となり得るとし(Level I)、60歳を超える重度の骨盤骨折では循環動態にかかわらず考慮すべきとした(Level II)[2]。
開始までの時間と転帰
- Matsushima 2018:米国ACS TQIP(2013〜2014年)で、来院4時間以内に骨盤の塞栓を受けた18歳以上の鈍的骨盤骨折181例(4時間以内に合併損傷の止血手術を要した例は除外)。院内死亡は21.0%で、多変量解析で塞栓までの時間が1時間延びるごとに院内死亡のオッズ比1.79(95%CI 1.11〜2.91)だった[3]。
- Tanizaki 2014:国内1施設(7.5年間)で血管造影・塞栓を受けた循環不安定な24例の死亡は12例(50%)で、来院60分以内に塞栓された患者では16%、それ以外は64%だった(p=0.04)[16]。
- Aoki 2021:JTDB(2004〜2018年)で、16歳以上、来院時の収縮期血圧90 mmHg以上かつ心拍数120/分以下で、来院3時間以内に塞栓を受けた620例(創外固定以外の止血手術を受けた例、いずれかの部位のAIS 6の例を除く)。塞栓までの中央値は101分(四分位74〜131分)。30日死亡は8.9%(55/620)で、30分ごとの群の粗死亡は0〜30分の0%(0/12)から150〜180分の15.7%に上がり、調整後の30日死亡は150〜180分群で17.0%(95%CI 10.2〜23.9%)だった[4]。
いずれも観察研究で、「何分以内なら安全」という閾値は示していない。Aokiらは限界として、塞栓の適応や手技の詳細がJTDBに登録されていないこと、死因が分からないことを挙げている[4]。本稿の解釈それでも、塞栓が必要と判断された患者では待つ時間が短いほど転帰がよいという方向は研究間で一致している。施設では、来院、方針決定、搬送、穿刺、最初の塞栓までの各時刻を測る。これらは安定した骨盤骨折の全例に予防的な塞栓を勧める根拠ではない。
塞栓の合併症
EAST 2011は、両側の内腸骨動脈の塞栓は大きな合併症が少なく安全と考えられ、男性の性機能も損なわれないようだとした(いずれもLevel III)[2]。一方、国内の総説は、骨盤骨折の塞栓後の殿筋壊死を3.3〜9.4%と既報から引用し、塞栓の方法と材料は循環動態、造影所見、緊急度を合わせて選ぶとしている[17]。
4.PPP:何を止め、どこに限界があるか
PPPは、腹膜前腔にガーゼを詰めて主に静脈叢や骨折面からの出血を圧迫する手術で、動脈性の出血が残れば塞栓を加える。代表的な報告は、米国の同じ研究グループ(1施設)からのものである。
- Cothren 2007:2004年9月から、骨盤骨折で循環不安定な全例にPPPと創外固定を行うプロトコルを導入した後の連続28例(救急外来の収縮期血圧77±3.0 mmHg、ISS 55±3.0)。PPP後の塞栓は、定型的に造影した最初の4例中1例、その後の24例中4例だった。死亡は7例(25%)で、急性の失血による死亡はなかった[18]。
- Burlew 2017:同じグループの11年間の報告で、骨盤骨折の入院2,293例のうちPPPは128例(6%)。平均44歳、ISS 48、救急外来の最低収縮期血圧74 mmHg。手術開始までの中央値は44分で、赤血球輸血の中央値はSICU入室前8単位、術後24時間3単位だった(p<0.05)。PPP後に16例(13%)が造影剤漏出を確認して塞栓を受けた。死亡は21%で、死因は脳損傷9例が最多だった[6]。
Burlewらは、塞栓を用いた近年の報告より介入までが短く死亡が少ないと結論したが、比べた相手は同時期の対照ではなく他の報告である[6]。本稿の解釈PPPを即座に始められる施設の成績として読む。
WSES 2017のPPPと創外固定の推奨は次のとおりである[1]。
- 骨盤骨折による循環不安定の患者では常にPPPを考慮すべきで、とくに血管造影ができない病院で重要である(1C)。直接のPPPは、低血圧を伴う骨盤輪損傷の出血を早期に制御する有効な手術である(1B)。
- PPPは骨盤の安定化と組み合わせて行う(2A)。血管造影の後も出血が続く患者では常にPPPを考慮すべきで、前方固定やCクランプの後の患者でも有効な手技である(いずれも2A)。
- 創外固定は、循環不安定な骨盤輪損傷の早期の止血の補助になる(1A)。パッキングの反力を得るため、PPPには創外固定が必要な補助である(2A)。
WSESは本文で、PPPの見直し(原文 revision)を48〜72時間以内に行うこと、PPP後に塞栓を要した割合は13〜20%と報告されていることを記載している[1]。EAST 2011は、塞栓後の救済手段として、また骨盤固定具・Cクランプを含む多職種の診療経路の一部として、後腹膜のパッキングは出血の制御に有効とした(Level III)[2]。
5.PPPとTAE、どちらを先にするか
本稿の検索では、PPPとTAEを比べた無作為化試験は見つからなかった。統合解析と大規模な登録研究の結果は次のとおりである。
- McDonogh 2022(系統的レビュー・メタ解析):最初の止血としてPPPまたはTAEを受けた循環不安定な骨盤骨折の18研究、579例(PPP 402例、TAE 177例。コホート研究と準無作為化試験1件)。院内死亡(粗)はPPP 23%、TAE 32%(p=0.001)だったが、両群を含む研究だけでは有意差はなかった。PPPの27%は後に塞栓を要した。年齢、動脈性出血、ISS、介入までの時間が群間で異なり、著者らは結論的な比較はできないとした[7]。
- Macias Martinez 2024(系統的レビュー・メタ解析):8論文、循環不安定な骨盤骨折2,040例。最初にPPPを行った群は24時間の赤血球輸血が少なかった(平均差−1.0単位、95%CI −1.8〜−0.2)。院内死亡(RR 0.91、95%CI 0.80〜1.05)と深部静脈血栓症(RR 0.89、95%CI 0.62〜1.28)に有意差はなかった[8]。
- Zhang 2024(系統的レビュー・メタ解析):2000年1月〜2023年1月の15研究、1,136例(総死亡28.4%)。比較はパッキング対血管内治療(塞栓とREBOAを含む)。急性期の制御できない出血による死亡はパッキングで少なかった(RR 0.41、95%CI 0.22〜0.79)が、総死亡(RR 0.92、95%CI 0.49〜1.74)と他の合併症による死亡(RR 1.60、95%CI 0.79〜3.24)に有意差はなかった。著者らは、多くの症例でパッキングを優先すべきと結論している[19]。
- Anand 2023(米国の登録研究):ACS TQIP 2017年で、18歳以上の骨盤骨折のうち4時間以内に赤血球4単位以上を輸血され、骨盤の止血処置を1つ以上受けた1,396例。塞栓774例、PPP 659例、Zone 3のREBOA 126例(重複あり)。院内死亡36%。回帰分析で院内死亡の低下と関連したのは塞栓だけで(オッズ比0.62、95%CI 0.47〜0.82)、処置の数が増えるほど死亡が多く(1.57、1.05〜2.37)、PPPは合併症の増加と関連した(1.39、1.07〜1.80)[20]。
本稿の解釈研究によって結論の向きが違う。Zhangらの「優先すべき」は、総死亡に差がない結果より一歩踏み込んだ結論である。Anandらの研究では、塞栓は一時的に循環を保てた患者に、PPPは開腹を要する重い患者に選ばれやすかった可能性があり、適応による交絡は大きいと考える。
指針も順番を固定していない。ACS TQIP 2015は、安定化の後も不安定な患者とパッキング後の患者に血管造影・塞栓を求め、できなければPPPや創外固定、それも無理なら早期の転院とした[15](「指針の比較表」参照)。
本稿の解釈現時点の実務的な答えは、「自施設でより早く始められ、合併損傷の処置と両立する方を先にし、残った出血を他方で止める」である。開腹が必要ならPPPを同じ手術で行い、残る動脈性出血を塞栓する。IVRをすぐ始められ、腹腔内の手術が要らなければ塞栓を先にし、制御できなければPPPへ移る。
6.REBOA:2023年以降の評価
REBOAは大動脈をバルーンで一時的に遮断し、遮断部より遠位の出血を減らす処置で、出血している血管そのものは止めない。骨盤出血には、遠位腹部大動脈(Zone 3)での遮断が想定されている[1][11]。
UK-REBOAより前の指針
WSES 2017は、骨盤出血が疑われる循環不安定な患者(収縮期血圧90 mmHg未満、または血液製剤の輸血に反応しない)で、決定的治療への橋渡しとしてZone 3のREBOAを考慮すべきとし(2B)、遮断時間と虚血を減らす部分遮断・間欠遮断も考慮すべきとした(2C)[1]。欧州指針(2023年3月)は橋渡しとしての考慮を提案し(推奨21、2C)、生存を改善する証拠は相反し、重大な合併症があり得ると解説している[5]。ACS外傷委員会などの共同声明(2019年)は、蘇生に反応しない横隔膜下の出血に使ってよいとし、Zone 3は、骨盤・接合部・下肢近位に限局した重い出血で、止血帯で止められないものに用いるとした[11]。
UK-REBOA試験(2023年)
英国16の外傷センターで行われた、実践的なベイズ流の無作為化試験である。2017年10月〜2022年3月に、失血死の危機にある出血(原文 exsanguinating hemorrhage)のある16歳以上の外傷患者90例を、救急外来でのREBOAを含む戦略と標準治療(46例)と、標準治療のみ(44例)に割り付けた。主要評価の90日全死亡(解析89例)は、REBOA群25/46例(54%)、標準治療群18/43例(42%)だった(オッズ比1.58、95%信用区間0.72〜3.52)。オッズ比が1を超える(REBOAで死亡のオッズが高い)事後確率は86.9%だった。6か月、院内、24時間、6時間、3時間の死亡のオッズ比もすべてREBOA群で高く、評価時点が早いほど大きかった。出血による死亡はREBOA群8/25例(32%)、標準治療群3/18例(17%)で、多くは24時間以内だった。著者らは、REBOAを含む戦略は死亡を減らさず、むしろ増やす可能性があると結論した[9]。
信用区間は1をまたいでおり、害を確定した試験ではない。骨盤出血に限った試験でもなく、遮断部位などの内訳は本稿では未確認である(抄録のみ確認)。本稿の解釈それでも、「救急外来でREBOAを加えれば死亡が減る」という仮説を支持しない無作為化データであり、骨盤出血だけは別と考える根拠は、現時点では観察研究しかない。
EAST 2025と観察研究
EAST 2025(GRADE、31研究のメタ解析)は次のように判断した。確実性はいずれも非常に低い[10]。
- 横隔膜下出血が疑われる循環不安定な外傷:死亡に有意差なし(5研究の統合、オッズ比0.86、95%CI 0.37〜2.04)。リスクがあり利益が認められないとして、REBOAの使用に条件付きで反対。
- 鈍的骨盤骨折による横隔膜下出血が疑われる循環不安定な外傷:4研究の統合でREBOA群の死亡のオッズが高く(オッズ比2.15、95%CI 1.35〜3.42。1,000人あたり150人多い〔53〜262人〕)、赤血球輸血も多かった(平均差4.81単位、95%CI 2.67〜6.95)。条件付きで反対。著者らは、研究のバイアスのリスクが高く、調整後もREBOAを使わない群に有利な適応による交絡が残る可能性を挙げている。
- 横隔膜下出血が疑われる外傷性心停止:蘇生的開胸との比較でREBOAに条件付きで賛成(オッズ比0.32、95%CI 0.15〜0.69)。心停止前のショックに当てはめられる結果ではない(本稿の解釈)。
個々の観察研究も、REBOAの利益を示していない。
- Inoue 2016(JTDB):体幹の外傷に緊急手術または塞栓を受けた患者(登録183,457例中12,053例が適格)を傾向スコアで625組にマッチさせると、院内死亡はREBOA群61.8%、非使用群45.3%だった(差+16.5%、95%CI +10.9〜+22.0%)。来院から最初の手術まではREBOA群が短かった(97分対110分)。操作変数法では死亡は高い方向だが有意ではなかった(+16.4%、95%CI −0.6〜33.3%)[22]。
- Harfouche 2021(米国AAST AORTAレジストリ):2013〜2020年に重度骨盤骨折でZone 3の遮断を受けた160例。遮断のみ37.5%、ほかに1つの止血処置を受けた例31.3%、2つ受けた例30.6%で、全体の死亡は37.7%。多変量解析で死亡の低下と関連したのは創外固定だけだった(オッズ比0.22、p=0.011)[23]。
- Hallmann 2025(AT-REBOA):オーストリアの1施設(2019〜2023年)で、観察データを無作為化試験に似せて設計した解析(target trial emulation)。16歳以上の重い非圧迫性体幹出血が疑われる患者を22対22でマッチさせ、30日院内死亡は9/22(41%)対9/22(41%)、オッズ比1.00(95%CI 0.3〜3.36)だった[24]。例数が少なく信頼区間が広いため、同等を示したものではない。
7.止血後の再評価
- 改善しないとき:輸血量、血圧、乳酸・塩基欠乏の推移を追い、改善しなければ骨盤の残存出血と骨盤外の出血源の両方を探し直す。骨盤外を除外したうえでの再度の血管造影・塞栓は、3節の推奨(WSES 2B、EAST Level II)のとおり考慮する[1][2]。
- パッキング:48〜72時間以内に見直す(WSES本文)[1]。本稿の解釈出血が続く、感染が疑われるなどの場合は、その時刻を待つ理由はない。
- バインダー:2節の推奨どおり、生理学的に許されしだい外し(1B)、装着中は皮膚の圧迫損傷に注意する[1]。
- 塞栓後:殿筋壊死などの虚血性の合併症に注意する[17]。
- 開放骨折・合併損傷:開放性骨盤骨折と直腸・腟・尿路の損傷は、日本外傷学会の分類でもOi、R、V、Uとして付記する[25]。感染対策と再建は関係する診療科と計画する。
指針の比較表
推奨の強さは各指針の表記のまま示す。WSESはGRADE方式で、1が強い推奨、2が弱い推奨、A〜Cが根拠の質を表す[1]。欧州指針も同じ形式(1は「推奨する」、2は「提案する」)で表記している[5]。
| 指針(年) | 固定・TAE・PPP | REBOA | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| WSES(2017)[1] | 非侵襲的圧迫(1A)。安定化・止血的蘇生・骨盤外の除外の後、不安定なら塞栓を考慮(2A)。不安定ならPPPを常に考慮、とくに血管造影ができない施設(1C) | Zone 3を橋渡しとして考慮(2B) | UK-REBOA前。多くが弱い推奨 |
| EAST(2011)[2] | 骨盤外を除外した後の不安定例と、CTで漏出のある例に血管造影・塞栓を考慮(Level I)。パッキングは塞栓後の救済、多職種経路の一部(Level III) | 推奨一覧に記載なし | 学会サイトで改訂作業中と表示 |
| 欧州(2023)[5] | 骨盤輪の早期の閉鎖・安定化(1B)。出血持続または塞栓を適時にできないとき腹膜外パッキング(1C) | 橋渡しとして考慮を提案(2C) | 2023年3月公開でUK-REBOA前 |
| ACS TQIP(2015)[15] | 大転子にバインダー。不安定例とパッキング後は血管造影・塞栓。できなければPPP・創外固定、無理なら早期転院 | 瀕死の骨盤出血で代替の初期介入になり得る | 2015年版 |
| ACS外傷委員会ほか(2019)[11] | — | 蘇生に反応しない横隔膜下出血に使ってよい。決定的止血へ速やかに移れない所では行わない | 施設要件と時間の目標を示す |
| EAST(2025)[10] | — | 横隔膜下出血、鈍的骨盤骨折とも条件付きで反対。外傷性心停止では開胸との比較で条件付き賛成 | 確実性は非常に低い |
| ドイツS3(2025年改訂)[21] | 骨盤出血の項の記載は本稿では再確認できず、掲載を見送った | REBOAの推奨は推奨度0 | 文献検索は2021年6月まで |
根拠の比較表
表はスマートフォンでは横にスクロールして読む。「主な結果」の数値は「介入・比較」と同じ順(A 対 B)に並べた。
| 出典(年) | デザイン | 対象 | 介入・比較 | 主な結果 | 限界と診療への意味 |
|---|---|---|---|---|---|
| Cothren(2007)[18] | 単施設、プロトコル導入後の連続症例 | 循環不安定な骨盤骨折28例 | PPP+創外固定(対照なし) | 死亡25%、急性失血による死亡0。後の塞栓は最初の4例中1例、その後の24例中4例 | 対照群がなく例数が少ない |
| Burlew(2017)[6] | 単施設、11年間 | PPPを受けた128例(骨盤骨折2,293例中) | PPP(対照なし) | 手術まで中央値44分。PPP後の塞栓13%。死亡21% | 比較は他の報告との間。即応できる施設が前提 |
| McDonogh(2022)[7] | 系統的レビュー・メタ解析(18研究) | 循環不安定な骨盤骨折579例 | PPP 402例 対 TAE 177例 | 院内死亡(粗)23%対32%(p=0.001)。両群を含む研究では有意差なし。PPPの27%が後に塞栓 | 背景が群間で異なり、著者は比較できないと結論 |
| Macias Martinez(2024)[8] | 系統的レビュー・メタ解析(8論文) | 循環不安定な骨盤骨折2,040例 | PPP先行 対 TAE先行 | 院内死亡RR 0.91(95%CI 0.80〜1.05)。24時間の赤血球 平均差−1.0単位(−1.8〜−0.2) | 有意差なしは同等を意味しない |
| Zhang(2024)[19] | 系統的レビュー・メタ解析(15研究) | 循環不安定な骨盤骨折1,136例 | パッキング 対 血管内治療(塞栓・REBOA) | 出血による死亡RR 0.41(0.22〜0.79)。総死亡RR 0.92(0.49〜1.74) | 比較群に塞栓とREBOAが混在。結論は総死亡より強い |
| Anand(2023)[20] | 米国TQIP 2017年、後ろ向き | 4時間以内に赤血球4単位以上を要した骨盤骨折1,396例 | 塞栓・PPP・Zone 3 REBOA(重複あり) | 院内死亡36%。塞栓のみ死亡の低下と関連(OR 0.62、0.47〜0.82)。PPPは合併症の増加と関連(OR 1.39、1.07〜1.80) | 適応による交絡。1年分のデータ |
| Matsushima(2018)[3] | 米国TQIP 2013〜2014年、後ろ向き | 4時間以内に塞栓した成人の鈍的骨盤骨折181例 | 塞栓までの時間 | 院内死亡21.0%。1時間ごとにOR 1.79(1.11〜2.91) | 早期の止血手術例を除外。閾値は示さない |
| Tanizaki(2014)[16] | 国内単施設、後ろ向き | 循環不安定で塞栓を受けた24例 | 来院60分以内 対 それ以外 | 死亡16%対64%(p=0.04) | 小規模。群別の例数は抄録に記載なし |
| Aoki(2021)[4] | JTDB 2004〜2018年、後ろ向き | 来院時に循環が安定し、3時間以内に塞栓した620例 | 塞栓までの時間(30分ごとの6群) | 30日死亡8.9%。150〜180分群の調整死亡17.0%(10.2〜23.9%) | 適応・手技・死因の情報がない |
| Tanaka(2022)[12] | JTDB 2004〜2018年、後ろ向き | 孤立性の鈍的骨盤損傷(AIS 3〜5)4,207例 | 緊急塞栓799例 対 それ以外 | 院内死亡(粗)7.4%対4.0%。調整OR 0.60(0.37〜0.96) | 粗と調整で向きが逆。残余交絡 |
| Matsumoto(2026)[13] | JTDB 2019〜2023年、傾向スコア1:3 | 鈍的骨盤骨折(適格10,332例) | 病院前バインダー182例 対 非使用546例 | 24時間の赤血球 中央値2.0対0.0単位(P=0.486)。院内死亡は同程度。塞栓33.0%対21.2%(OR 1.82、1.24〜2.66) | 使用率1.8%。効果より選択の違いを反映し得る |
| Jansen/UK-REBOA(2023)[9] | 無作為化試験(英16施設、ベイズ) | 失血死の危機にある16歳以上の90例 | REBOA+標準治療 対 標準治療 | 90日死亡54%対42%(OR 1.58、95%信用区間0.72〜3.52)。出血による死亡32%対17% | 骨盤に限らない。例数が少ない |
| Inoue(2016)[22] | JTDB、傾向スコア | 体幹外傷で手術・塞栓を受けた625組 | REBOA 対 非使用 | 院内死亡61.8%対45.3%(差+16.5%、+10.9〜+22.0%) | 適応による交絡。骨盤に限らない |
| Harfouche(2021)[23] | AORTAレジストリ 2013〜2020年 | Zone 3の遮断を受けた重度骨盤骨折160例 | 組み合わせた止血処置(非使用群なし) | 死亡37.7%。創外固定のみ死亡の低下と関連(OR 0.22、p=0.011) | REBOAの効果は評価できない。CIは抄録に記載なし |
| Hallmann/AT-REBOA(2025)[24] | 単施設、target trial emulation | 重い体幹出血が疑われる44例 | REBOA 22例 対 非使用22例 | 30日院内死亡41%対41%(OR 1.00、0.3〜3.36) | 小規模で、同等の証明ではない |
評価時点について:UK-REBOAは90日死亡、Aokiは30日死亡、Hallmannは30日院内死亡、McDonogh・Macias Martinez・Anand・Matsushima・Tanaka・Matsumoto・Inoueは主に院内死亡を評価した。Cothren・Burlew・Tanizaki・Harfouche・Zhangの死亡は、抄録では評価時点を確認できない。表の数値は時点をそろえた比較ではない。
日本で実施するとき
国内の指針と分類
- JATEC:『改訂第6版 外傷初期診療ガイドラインJATEC』(2021年2月)には第7章「骨盤外傷」があり、技能7-1「骨盤外傷への対応」には、骨盤骨折に対する止血アルゴリズム、病院前での簡易骨盤固定具の装着適応、簡易骨盤固定具の解除基準の項目がある(目次で確認)[26]。本文を取得できず、中身は未確認である。公開されている改訂の概要には、骨盤骨折の種類と出血量の関係を3D解剖動画で示したとある[27]。
- JETEC:『改訂第3版 外傷専門診療ガイドラインJETEC』(2023年6月)には「骨盤外傷」(分類、診断、治療戦略と戦術)と「蘇生に必要なIVR」(REBOAを含む)の項がある(目次で確認)[28]。本文は未確認である。
- 日本外傷学会 臓器損傷分類2008(骨盤損傷分類):I型 安定型(a 片側性、b 両側性)、II型 不安定型(a 片側性、b 両側性)、III型 重度不安定型(a 片側性、b 両側性、c 垂直性)に分ける。I型は単純X線とCTで骨盤環の連続性が保たれているか、前方骨盤環に限局する損傷。II型は前方骨盤環の離開があり、明らかな後方骨盤環の離開がないもの(CTでは後方の離開幅10 mm未満)。III型は後方骨盤環の離開が明らかなもの(CTでは10 mm以上)、または垂直性不安定型である。開放性はOi、合併する直腸・腟・尿路の損傷はR・V・Uと付記する[25]。本稿の解釈形態の分類で循環動態を含まないため、WSES分類のgrade IV(循環不安定)に当たる情報は別に記録する。
- 日本IVR学会の指針:日本IVR学会と日本外傷学会の「肝外傷に対するIVRのガイドライン2016」はMindsに掲載されているが[29]、骨盤骨折を対象にした同種の指針は、今回の検索(J-STAGE、Minds)では見つからず、学会サイトにも接続できなかったため未確認である。
- JRC蘇生ガイドライン2020:外傷や骨盤固定に関わる記載は、サイトに接続できず未確認である。
IVR体制と止血開始までの時間
国内の塞栓開始までの時間は、3節のAoki 2021(来院時に循環が安定し3時間以内に塞栓を受けた620例)で中央値101分と分かる程度である[4]。夜間・休日を含めたIVRの開始時間や、IVR医の院内待機・呼び出しの体制を全国で調べたデータは、今回の検索では見つからなかった(未確認)。初療室でCTと血管造影を行えるハイブリッドERについては、JTDBのREBOA研究の著者らが、2011年に国内で導入されたと論文中で述べている[14]。
担い手については、日本IVR学会が日本専門医機構のサブスペシャルティ学会として承認されたことに伴い、放射線科以外(とくに救急科)で研修した医師を対象に「救急IVR認定医」制度を設けることになった。要件は、救急科などの基本領域の専門医であること、3年以上の研修で100例以上(うち救急IVR 60例以上)を経験していること、IVRに関わる画像診断を含む試験に合格することである[30]。制度の開始時期と認定医の数は、抄録からは未確認である。
REBOAの機器・保険・使われ方
JTDBの記述研究では、2004〜2021年にREBOAを受けた外傷患者は2,557例で、REBOAを行った施設は2004年の10施設から2019年の105施設に増え、院内死亡は期間中に91.3%から50.9%に下がった[14]。著者らは使用が増えた背景として、7 Frの細径バルーンが2013年に臨床使用を承認されたことと、ハイブリッドERの導入を挙げている(いずれも論文の考察中の記述で、承認された製品名と承認区分は本稿では未確認)[14]。ただし、この研究はREBOAを使わなかった患者と比べておらず、有効性は示していない。JTDBを用いた比較研究では、前述のとおりREBOA群の死亡が高かった[22]。
未確認国内で承認されているREBOAカテーテルの製品名、承認番号、添付文書上の使用目的・警告、特定保険医療材料としての償還区分、手技料の算定は、PMDAの添付文書検索と製造販売業者のサイトを開けず、本稿では確認できていない。導入する施設は、使う製品の電子添文と院内の手続きを直接確認する。
国内の総説は、REBOAの管理の原則を、決定的止血までの許容的低血圧を伴う部分遮断とし、遮断時間をできるだけ短くし、虚血再灌流障害などの合併症を避けることとしている[31]。日本外傷学会雑誌の総説も、TAEは手技までに時間がかかる場合に予後が悪いと報告されており、そうした施設を中心にPPPが普及していること、REBOAは止血手技ではないため、その後どう止血手技につなげるかが課題であることを挙げている[32]。
輸血の単位と海外の基準
国内の赤血球液は、1単位が血液200 mLに由来する[33]。WSESの循環不安定の定義(24時間に4〜6単位以上)[1]やAnandらの対象(4時間に4単位以上)[20]の「unit」は海外の製剤の単位である。本稿の解釈国内の単位数とそのまま一致しないため、海外の閾値を国内の単位数に置き換えて使わない。
国内データの読み方
JTDB(2004〜2018年)の孤立性の鈍的骨盤損傷(AIS 3〜5)4,207例(登録345,932例中)では、緊急塞栓を受けた799例の院内死亡は7.4%で、それ以外の群の4.0%より高かった(p<0.01)。しかし、年齢、性別、GCS、来院時の収縮期血圧、ISS、骨盤のAIS、開腹、REBOA、創外固定と施設内のクラスターで調整すると、緊急塞栓はオッズ比0.60(95%CI 0.37〜0.96)だった[12]。本稿の解釈粗と調整で向きが逆になるのは、重い患者ほど塞栓を受けるという選択の偏りの表れで、登録データの比較は調整の方法に左右される。病院前バインダーの研究でも、著者らはバインダーが輸血を直接減らすというより、その後の止血戦略の違いに影響しているか、それを反映している可能性があるとした[13]。
施設で決めておくこと
本稿の解釈上の研究と指針から、施設ごとに次の点を文書にしておくことを勧める。
- 骨盤出血を疑ったときにIVR・手術室・輸血部門へ同時に連絡する手順と、平日日中・夜間・休日それぞれの「塞栓を始められるまでの時間」の実測値。
- IVRをすぐ始められないときのPPPと創外固定の担当者。どちらもできない時間帯の転院基準と連絡先[15]。
- 開腹が必要な場合のPPPの同時施行と、術後の塞栓への移り方(ハイブリッドERやハイブリッド手術室の有無)。
- REBOAを置く場合の適応、遮断部位、遮断時刻の記録、決定的止血を始める担当者[11]。
- 止血後の再評価(輸血量、乳酸、再造影の基準、パッキングの見直しの時期)を、誰がいつ行うか。
まだ分からないこと
- PPPとTAEのどちらを先にすべきか。無作為化試験はなく、統合解析の結論の向きも分かれている[7][8][19]。
- REBOAで利益を得る患者はいるか。EAST 2025は、利益を得る部分集団を見つける研究が必要としている[10]。Zone 3の遮断や部分遮断に限った比較試験は、本稿の確認範囲にはない。
- 塞栓開始の目標時間。観察研究は遅れと死亡の関連を示すが、閾値も因果も示していない[3][4]。
- バインダーが死亡を減らすか。EAST 2011は死亡には影響しないようだとし、国内の病院前使用の研究でも院内死亡は同程度だった[2][13]。
- 国内の体制の実態。夜間・休日のIVRの開始時間、PPPの実施数、REBOA機器の保険上の扱いは、本稿では確認できなかった。
- 指針の改訂。EASTの骨盤骨折出血の指針は2011年版で、学会サイトでは改訂作業中と表示されている(2026年9月24日時点)[2]。公表されれば本稿を見直す。
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医学的内容の最終確認日・確認範囲
文献ごとの確認範囲を開く(最終確認日:2026年9月25日)
医学的内容の最終確認日:2026年9月25日(著者確認)。文献照合日:2026年9月24日(文献検索も同日)。今回の照合では一般の検索エンジンを使えなかったため、OpenAlex、Crossref、NCBI BioC(PubMed抄録・PMC本文)、PubTator3、J-STAGEの検索API、出版社・学会の公開ページとPDFで確認した。PubMed本体・PMC・JAMAのページは取得できず、日本IVR学会・JRC・製造販売業者のサイトは接続できず、PMDAの添付文書検索は自動取得に対応していなかった。検索記録は編集部で保管している。
- 全文(または該当部分の全文)を確認:[1] WSES 2017(出版社PDF、推奨文・GRADE表・本文の該当部分)、[5] 欧州指針2023(出版社PDF、推奨20・21・23とREBOAの解説部分)、[10] EAST 2025(出版社の全文ページ)、[11] 共同声明2019(出版社の全文ページ)、[15] ACS TQIP 2015(骨盤骨折の項)、[21] ドイツS3 2025(REBOAの推奨度と文献検索の終了日。骨盤出血の項は検証時に再確認できず、本文には用いていない)、[4] Aoki 2021(PMC本文)、[14] Hoshi 2024(PMC本文の一部)、[17] Usui 2024(PMC本文の一部)。
- 学会公式ページで推奨一覧を確認:[2] EAST 2011(学会ページと学会サイト掲載PDFの推奨一覧で、推奨とLevelを照合。論文本体の本文は未確認)。
- 抄録のみ確認:[18] [6] [7] [8] [19] [20] [3] [16] [12] [13] [9] [23] [22] [24](NCBI BioC)、[30] [31](英文抄録)、[32](和文抄録)。本文中の数値は抄録にある範囲に限った。[22] Inoue 2016と[24] Hallmann 2025は、OpenAlex(文献データベース)が公開する抄録の単語データから復元した抄録で照合した後、NCBI BioCの抄録原文で数値を照合し直した。
- 公式資料を確認:[25] 臓器損傷分類2008(学会公開PDF)、[27] JATEC改訂の概要(公開PDF)、[29] Minds の書誌ページ、[33] 赤血球液の電子添文(KEGG MEDICUS掲載分)。
- 書誌・目次のみ確認:[26] JATEC改訂第6版、[28] JETEC改訂第3版(いずれも本文未取得)。
- 未取得:UK-REBOAとEAST 2011の本文、JATEC・JETECの本文、日本IVR学会の骨盤外傷に関する指針の有無、国内のREBOAカテーテルの電子添文・承認情報、材料価格基準と診療報酬点数表の該当箇所、JRC蘇生ガイドライン2020。訂正・撤回は、OpenAlexの撤回フラグ(主要文献)とCrossrefの更新情報(一部)で確認し、該当はなかった。
更新履歴
更新履歴を開く(全6件・最新:2026年9月26日)
- 2026年9月26日(表記):確認範囲の記載を読者向けの表現に改め、関連記事と分野の一覧へのリンクを加えた(医学的内容は変えていない)。
- 2026年9月25日(著者確認):著者(医師)が数値・用量・適用条件を含む医学的内容を確認した。確認日の表記を更新した。
- 2026年9月24日(改訂):原著と指針の照合にもとづき全面改訂した。冒頭の要点(条件つき5項目)、対象と扱わない範囲、WSES 2017・EAST 2011・欧州指針2023・ACS TQIP 2015・ドイツS3 2025のREBOAの推奨度、WSES分類と循環不安定の定義、PPPの成績とPPP・TAEの比較研究(メタ解析3件、米国の登録研究)、塞栓までの時間の研究(国内2件を含む)、REBOAの無作為化試験・EAST 2025・観察研究、指針と根拠の比較表、「日本で実施するとき」(JATEC・JETEC・臓器損傷分類2008、IVR体制と救急IVR認定医、REBOAの国内の使われ方と機器・保険の未確認事項、輸血の単位)、文献ごとの確認範囲を追加した。UK-REBOAの事後確率の説明を原文に合わせて直した。欧州指針を出典としていた保温・カルシウム・フィブリノゲンの評価は、凝固障害の記事で扱うこととして本文から外し、出典を示せない記述(晶質液の影響、施設条件の例示など)も外した。理由:主要研究の数値・限界、国内のIVR体制とREBOA機器の扱い、比較表、確認範囲、更新履歴が不足していたため。
- 2026年9月20日(更新):冒頭に「この記事で整理する、3つの問い」の案内(医療者向けの3つの問い)を追加した(WordPressの保存版の比較で確認)。本文・数値・文献の変更はなかった。
- 2026年9月17日:更新日とする記録があるが、WordPressの保存版(9月15日と9月20日の2件)に同日の版はなく、変更内容は確認できない。
- 2026年9月15日(初回公開):文献確認日2026年9月14日、8文献(WSES 2017、欧州指針2023、Burlew 2017、Matsushima 2018、Aoki 2021、UK-REBOA、EAST 2025、AT-REBOA)で公開。
本記事は医療従事者への教育および一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。実際の診療では、各施設のプロトコルおよび最新の診療ガイドラインをご確認ください。
利益相反:本記事に関連して開示すべき利益相反はありません。


コメント
コメント一覧 (10件)
[…] 48〜72時間の再評価をCTとCEUSのどちらで行い、誰が判断するか。自施設で塞栓できない場合の転院基準。肝損傷や骨盤骨折の出血と重なる場面は肝損傷の初期治療と骨盤骨折出血も参照。 […]
[…] BTAIは多発外傷の一部として見つかることが多い。大動脈の所見があっても、循環不全の主因が腹腔内や骨盤の出血なら、止血の順序はそちらが先になる。米国のレベルI外傷センター9施設の研究(2008〜2013年、解析382例)では、入院時に低血圧があったのは14.7%で、大動脈関連死亡25例のうち18例は修復の機会が来る前に起きていた[9]。SVS 2026がgrade 3で24時間以内の介入を強く推奨するのは、「不安定で、大動脈損傷がその原因と懸念される」場合である[1]。出血源が複数あるときの順序はDamage Control Surgeryと骨盤骨折出血の止血戦略を参照。 […]
[…] 骨盤骨折出血:TAE・PPP・REBOAをどう組み合わせるか […]
[…] 胸部・骨盤・四肢のダメージコントロール、REBOA、蘇生的開胸。骨盤は骨盤骨折出血:TAE・PPP・REBOAをどう組み合わせるかを参照。 […]
[…] 出血性ショックの蘇生と凝固障害、骨盤骨折の止血。外傷性凝固障害(TIC)、骨盤骨折出血を参照。 […]
[…] トラネキサム酸と輸血戦略:妊娠中の外傷に限ってトラネキサム酸(TXA)の効果や輸血の比率を検証した比較試験は、本稿で確認した指針と文献の範囲にはなかった。EAST 2025の5つの問いにも、SOGC 2015の推奨にも、TXAの項目はない[1][2]。AHA 2025は、生命を脅かす羊水塞栓症が疑われる周産期の患者に、バランスのとれた輸血戦略による大量輸血プロトコルを用いるよう新たに推奨したが、対象は外傷ではない[7]。凝固障害の考え方は外傷性凝固障害(TIC)、骨盤骨折の止血戦略は骨盤骨折出血を参照する(いずれも妊娠中への適用は別に検討が要る)。 […]
[…] 骨盤骨折:WTAは高リスクに挙げる[1]。予防なしの時代の研究ではDVTが61%にみられた[14]。手術を受けた四肢骨折と、手術の有無を問わない骨盤・寛骨臼骨折はPREVENT CLOTの対象である(8節)。止血の考え方は骨盤骨折出血、脊髄損傷の急性期管理は急性脊髄損傷の初期診療と集中治療を参照。 […]
[…] 外傷性凝固障害の病態(外傷性凝固障害(TIC))、止血手技(ダメージコントロール手術、骨盤骨折出血)、抗凝固薬の中和(抗凝固薬内服中の外傷)。 […]
[…] 骨盤骨折出血での固定・TAE・PPPとの組み合わせ方は骨盤骨折出血:TAE・PPP・REBOAをどう組み合わせるか、PPPの手技は外傷手技|Preperitoneal Pelvic Packing:骨盤出血をどうパッキングするかで扱う。 […]
[…] TAEとの優劣は決まっておらず、登録研究にはPPPに不利な結果もある。準無作為化試験(56例)では、PPP群は介入までが短かったが(中央値77分対102分)、死亡に有意差はなかった[8]。米国の登録研究では、PPPが深部静脈血栓症・肺塞栓症の増加と関連し[9]、ほかの部位の損傷が軽い重症骨盤骨折では院内死亡が高かった(14.1%対2.2%)[10]。どれも適応による交絡を除けない。TAE・REBOAとの組み合わせは骨盤骨折出血:TAE・PPP・REBOAをどう組み合わせるかで扱う。 […]