外傷性気胸・血胸の胸腔ドレーン管理|適応・サイズ選択・残存血胸とVATS

外傷性気胸・血胸 — PTD ZERO

外傷性気胸・血胸に胸腔ドレーンを入れるかどうかは、画像上の大きさだけでなく、呼吸と循環、人工呼吸の予定、すぐに再処置できる体制で決まる。循環が安定した血胸では、14 Frの細いカテーテルと太いチューブの失敗率に有意差はなかったが、試験は小規模で、代表的な2試験は緊急挿入の必要な患者を除いている。本稿は成人を対象に、ドレナージの適応、チューブの太さ、開胸を考える排液量の目安とその出典、潜在性気胸、残存血胸と早期VATS、予防的抗菌薬、抜去までを、指針と主要研究の数値で整理する。

  • 気胸
  • 血胸
  • 胸腔ドレーン
  • pigtail
  • 残存血胸

医療従事者向け:本記事は教育および一般的な医学情報の提供を目的としています。個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。

目次

まず押さえる要点

  1. 不安定なら、画像の大きさより処置が先。WSES–AAST 2025は、循環が不安定な患者の血胸を大きさにかかわらず太いチューブで排液するとし、安定した患者では2 cm以下の気胸(少なくとも24時間の観察)と300 mL未満の血胸を保存的に管理できるとした(いずれも根拠の確かさは低、推奨度は中等度)[1]。
  2. 細いカテーテルは「循環の安定した血胸」で検討できる。14 Fr pigtailと28〜32 Frの失敗率は、単施設RCTで10%対17%(43例、P=0.49)[2]、多施設RCTで11%対13%(119例、p=0.74)[3]だった。原著(P-CATは抄録)に信頼区間はなく、本稿の計算では差の95%CIが−28.4〜+15.2ポイント、−13.9〜+10.4ポイントと広い。RCT 4件の統合はRR 0.95(95%CI 0.66〜1.35)で、必要な情報量の22%にとどまる[4]。前記の2試験は緊急挿入を要する患者を除外している。
  3. 開胸を考える排液量は、出典ごとに条件と強さが違う。EAST 2011は「任意の24時間で1,500 mL」で外科的検索を考慮するとし、同時に数値より生理学的状態を優先するとした(いずれもLevel 2)[5]。WSES–AAST 2025は、胸部出血による循環不安定、24時間で1,500 cc超、200 mL/時超が3時間連続(他の出血原因がないとき)を手術適応とする(根拠の確かさは低、推奨度は強)[1]。1,500 mLの根拠として引用される研究は、開胸例だけの後ろ向き研究である[6]。
  4. 人工呼吸中の潜在性気胸は、短期なら慎重に観察できる。OPTICC試験(142例)の呼吸窮迫は観察群38%、ドレナージ群25%(p=0.14、検出力0.38)で有意差はなかったが、観察群の4分の1が観察に失敗し、人工呼吸が5日を超えると40%に達した[7]。すぐに救済ドレナージができる体制が前提である。
  5. 残存血胸は2本目のドレーンで粘らない。EAST 2021は線溶療法よりVATSを条件付きで推奨し、4日以内に行うことを推奨した[8]。AAST多施設研究(328例)では26.5%が2回の処置を要し、20.4%が最終的に開胸となり、膿胸は26.8%だった[9]。挿入時の予防的抗菌薬は、膿胸を減らす目的で条件付きで推奨されている(OR 0.47、95%CI 0.25〜0.86)[10]。

対象と扱わない範囲

対象:成人(主要な試験の多くは18歳以上)の鈍的・穿通性外傷による気胸・血胸・血気胸。救急外来でドレーンを入れるかの判断から、チューブの選択、開胸・VATSの相談、入院中の排液管理、抜去までを扱う。

扱わない範囲:

1.まず呼吸・循環で分ける:ドレナージの適応

WSES–AAST 2025(2000年1月〜2024年2月の文献が対象)は、緊張性気胸と大量血胸を、生命を脅かし直ちに認識して治療すべき状態とし、胸腔ドレーンを単純性・緊張性気胸と血胸の治療の第一選択とした(いずれも根拠の確かさは中等度、推奨度は強)。根拠の確かさは高・中等度・低・非常に低、推奨度は強・中等度・弱で示される。循環の状態と気胸・血胸の大きさに応じた推奨は次のとおりで、いずれも根拠の確かさは低、推奨度は中等度である[1]。

  • 循環が不安定な外傷患者の血胸は、大きさにかかわらず太いチューブで排液する。
  • 安定した患者の2 cm以下の気胸は、少なくとも24時間の観察で保存的に管理できる。
  • 安定した患者の300 mL未満の血胸は保存的に管理でき、500 mL以上の血胸は排液すべきである。

2 cmの測り方や血胸量の推定法は、今回確認した本文の範囲では明記されていなかった。EAST 2011は、大きさにかかわらずすべての血胸で排液を検討し、最初の排液は胸腔ドレーンで試みるとした(いずれもLevel 3)[5]。EAST 2021の抄録の結論には、ドレナージか経過観察かの問いへの推奨は書かれていない(全文は未取得)[8]。

CTで見つかった気胸には35 mmという目安がある。WTA 2022の外傷性気胸のアルゴリズム(合意に基づく、Level V)は、35 mm未満または容積の20%未満なら観察してよく、約10%は観察に失敗するとした[11]。35 mmの目安を検討した後ろ向き研究では、CTで最も大きい空気の層を胸壁に垂直に測り、条件を満たした例の89.0%が退院まで観察を続けられた(35 mm以下の陽性的中率90.8%)。血胸を伴う例、CTの前にドレーンを入れた例、人工呼吸中の例は除外されている[12]。

本稿の解釈観察は放置ではない。再評価の時刻と担当、悪化したときに誰がどこでドレーンを入れるかを決めて初めて成り立つ。すぐに処置できない搬送や検査が続くなら、同じ大きさでも判断は変わりうる。

2.チューブの太さ:細いカテーテルはどこまで使えるか

成人の排液には従来、36〜42 Frの太いチューブが標準とされてきた[5]。近年、14 Frのpigtailカテーテルなどと比べた無作為化試験(RCT)が行われている。

血胸・血気胸のRCT

Bauman 2021(単施設RCT):米国のレベルI外傷センター1施設で2015年7月〜2018年1月に、排液を要する18歳以上の外傷性血胸・血気胸を、14 Fr pigtailカテーテルと28〜32 Fr胸腔ドレーンに割り付けた。循環不安定による緊急挿入、手術室での挿入、参加拒否は除外した。主要評価項目の「失敗」は、追加の介入(2本目のカテーテル、線溶療法、VATS)を要した残存血胸または再発気胸である[2]。

43例(pigtail 20例、太いチューブ23例)で、失敗は10%対17%(原著の表では20例中2例、23例中4例)、P=0.49だった。初回排液量の中央値は650 mL対400 mL(P=0.06)、留置日数の中央値はともに4日、挿入時の体験(1=耐えられる〜5=人生で最悪)は中央値1対3(P=0.001)で、挿入に伴う合併症は43例とも起きなかった[2]。

原著に信頼区間の記載はない。報告された割合と例数から本稿で計算すると、失敗率の差(pigtail−太いチューブ)は−7.4ポイント、95%CIは−28.4〜+15.2ポイントである(Newcombe法)。試験は非劣性試験として計画され(対照の失敗率15%、非劣性マージン15ポイント、各群95例が必要)、中間解析で主要評価項目が非劣性に達したこと、30か月に及ぶ登録期間と資源の制約などを理由に、予定の約23%の例数で終了した。著者は、単施設であること、30か月で43例しか集まらなかったこと、挿入の多くが待機的だったこと、体験の尺度が検証されていないこと、挿入時の鎮痛・局所麻酔とチューブの管理が標準化されていないことを限界に挙げた[2]。

本稿の解釈本稿の計算では差の片側95%上限は+11.3ポイントでマージンを下回る。ただしマージンの15ポイントは対照の失敗率(15%)と同じ大きさで、失敗が倍になっても非劣性と判定しうる幅である。

P-CAT(多施設RCT):同じ研究グループが2015年7月〜2020年9月に行い、状態が極めて悪く緊急挿入を要する患者と参加拒否を除いた119例(14 Frの経皮的カテーテル56例、28〜32 Fr胸腔ドレーン63例)を比べた。失敗(2回目の介入を要する残存血胸)は11%対13%(p=0.74)で、挿入時の体験は中央値1対3(p<0.001)とカテーテル群がよく、ほかの副次評価項目(排液量、留置日数、ICU・入院日数)に有意差はなかった[3]。抄録に信頼区間はなく、割合と例数(56例中6例、63例中8例)から本稿で計算した差は−2.0ポイント(95%CI −13.9〜+10.4)である。

McCartt 2025(単施設RCT):Seldinger法で入れる14 Frのまっすぐなチューブ(Thal)と28 Frを比べた非劣性試験で(除外基準は抄録に記載がない)、109例(54例対55例)の失敗は8.3%対3.9%、非劣性マージン15%のもとで非劣性と判定され、副次評価項目に有意差は認められなかった[13]。細い側の失敗率が数値の上では高い点に注意したい。

統合解析:RCT 4件(676例)のメタ解析では、失敗率に有意差はなく(RR 0.95、95%CI 0.66〜1.35、I²=0%)、留置期間は細いほうが短かった(平均差−0.49日)。ただし試験逐次解析で必要な情報量(3,110例)の22%しか集まっておらず、著者は現時点の根拠では結論に至らないとし、初回排液が500 ccを超える大量血胸は検討できなかったと述べた。根拠の確実性は中等度とされた。Bauman 2021は、P-CATと登録期間が重なるとして除外された[4]。

気胸のRCT

Kulvatunyou 2014は、合併症のない外傷性気胸40例(各群20例。緊急挿入を除外し、血胸やフレイルチェストはなし)で14 Fr pigtailと28 Frを比べた。挿入直後の挿入部の痛み(平均)は3.2対7.7で、1日目と2日目もpigtail群が低かった。留置期間、気胸の解消、挿入に伴う合併症は両群で似ていたと報告されている[14]。

指針の位置づけ

  • EAST 2021:循環動態の安定した外傷性血胸に、pigtailカテーテルを条件付きで推奨する[8]。
  • WSES–AAST 2025:循環が不安定な外傷患者の血胸は、大きさにかかわらず太いチューブで排液する(根拠の確かさは低、推奨度は中等度)[1]。本文は、細いチューブは痛みが少ない一方で、血胸を残して膿胸の危険因子を増やしうるとも述べる[1]。
  • WTA 2022(気胸のアルゴリズム、Level V):手元にある最も細いチューブを使いつつ、細く壁の薄いチューブより壁の厚いものを勧め、血胸の成分が大きければ28 Frを考えてよいとする[11]。

試験の条件から外れる場面:Bauman 2021とP-CATは緊急挿入を要する患者を除外し[2][3]、統合解析も初回500 ccを超える血胸を検討できていない[4]。循環不安定、出血の持続、大量の血胸、閉塞したときにすぐ入れ替えられない環境では、細いカテーテルの成績をそのまま当てはめないほうが安全である(本稿の解釈)。

3.開胸を考える排液量:数値の出典と推奨の強さ

「1,500 mL」「200 mL/時」は、指針ごとに時間の区切り、付いている条件、推奨の強さが違う。原文を確認できた範囲を表にまとめる。

出典目安推奨の強さ・位置づけ付いている条件
EAST 2011[5]受傷機転を問わず、任意の24時間で胸腔ドレーンから1,500 mLLevel 2。外科的検索を「考慮」するきっかけとする推奨同じ指針が、手術の主な判断材料は初回・持続排液の絶対値ではなく患者の生理学的状態だとする(Level 2)
EAST 2011の本文[5]ドレーン挿入直後に1,500 mL超、150〜200 mL/時が2〜4時間続く、または循環を保つために輸血を続ける必要がある推奨文ではなく、緊急開胸の「従来の基準」としての説明前向き試験ではなく専門家の意見から作られたと同指針が述べる
WSES–AAST 2025[1]胸部出血による循環不安定、24時間で1,500 cc超、または200 mL/時超が3時間連続手術適応とする推奨。根拠の確かさは低、推奨度は強文末に「他の出血原因がない場合」の条件が付く
ATLS(第10版・第11版)本文を取得できず未確認未確認—
JATEC(改訂第6版)本文を取得できず未確認(国内資料での引用は「日本で実施するとき」を参照)未確認—

数値はどこから来たか

Karmy-Jones 2001:外傷センター5施設の後ろ向き症例集積で、1995〜1998年に受傷48時間以内に出血のため緊急開胸を受けた157例(鈍的36例、穿通性121例。救急室開胸は除く)を調べた。死亡は鈍的67%、穿通性17%で、胸腔からの総出血量が増えるほど死亡も増え、1,500 mLでの死亡リスクは500 mLの3倍だった。著者は、受傷機転を問わず24時間以内の排液が1,500 mLを超えれば開胸の適応と結論した[6]。EAST 2011もこの研究を取り上げている[5]。より古いKish 1976の抄録は、手術の適応を出血、心タンポナーデ、持続・再発する出血などの項目で挙げ、排液量の数値は示していない[15]。

本稿の解釈Karmy-Jonesは開胸を受けた患者だけを集めた研究で、開胸しなかった患者との比較はない。排液量と死亡の関連は、出血が多い患者ほど重症であることでも説明できる。数値は「ここまで待てばよい」基準ではなく、遅くともここで判断するという目安として読むのが安全である。

数値だけで決めないことを示す研究

Huang 2021(後ろ向き研究):大量血胸の排液基準を満たした鈍的外傷44例のうち、6例は保存的治療で問題なく退院し、11例は止血操作を伴わない手術だった。止血を要した患者は脈拍が速く、蘇生後の血圧とpHが低く、乳酸値が高かった(5.7対1.8 mmol/L)。著者は、この基準は軍の穿通性外傷の観察に基づくとし、鈍的外傷では選択的に保存的治療を行いうるとした[16]。

水島 2008(国内):胸部AIS 3以上の鈍的胸部外傷254例のうち急性期の開胸は24例(9.4%)で、19例が外傷死の三徴の基準を一つ以上満たしていた。血胸で手術した14例のほとんどは従来の開胸基準より少ない排液量で開胸されており、著者は、排液量を開胸の基準にすると手術判断が遅れる可能性があるとした[17]。

持続する出血の出どころが肋間動脈のこともある。国内の研究では、肺裂傷のある鈍的胸部外傷で胸腔ドレーンを入れた29例(38か所)のうち、200 mL/時以上の出血が続いた6か所中5か所に肋間動脈からの造影剤漏出があり、TAEが成功したと報告された。著者は、持続する血胸と肋骨の大きな転位があれば造影CTを行い、漏出があればTAEの適応とした[18]。

排液が減った・止まったとき:止血したのか、チューブの閉塞・位置異常・凝血塊で出なくなったのかを区別する。循環、輸血の必要量、画像で胸腔内に残る血液を合わせて確かめ、数値に届くのを待たずに外科医へ相談する(本稿の解釈)。

肋間動脈を傷つけたとき:一時止血としてのバルーン圧迫

胸腔ドレーンの挿入そのものが、胸壁の動脈を傷つけることがある。肋骨の上縁から入るのが原則だが、中腋窩線の第4〜6肋間を調べた献体研究では、神経血管束がしばしば肋骨下縁の溝から離れて走り、下の肋骨のすぐ上にも側副動脈が走りうることが示された。著者は、肋間の上端から下へ50〜70%の範囲を安全域とした[19]。後方の肋間動脈(第3〜8肋間)については、蛇行がよくみられ、60歳を超える人で特に多いとした献体研究がある[20]。国内では、胸腔ドレーン挿入による外側胸動脈損傷の2例を報告した著者が、大胸筋の近くを外側胸動脈が走るため、安全三角での挿入でも損傷しうるとした[21]。挿入手技の詳細はJATEC Bの異常|緊急脱気・胸腔ドレーンの適応と手技を徹底解説にゆずる。

疑う所見:確認できた報告と提言に書かれているのは、挿入後も続く血性の排液、刺入部からの出血、血圧低下などの循環の悪化である。上記の国内の2例は、胸腔ドレーン挿入後に血性排液が続き、翌日の造影CTでドレーンに沿った血管外漏出が見つかった例と、胸腔穿刺の刺入部から出血し、刺入経路上に仮性動脈瘤が疑われた例で、いずれも血管造影で外側胸動脈(またはその分枝)からの出血と分かり、TAEで止血された。著者は、造影CTでは出血部位の同定が難しく、血管造影が必要だったとしている[21]。医療事故調査・支援センターの提言第12号は、報道記事による要旨では、穿刺後に血圧低下、呼吸促迫、呼吸困難、皮下気腫の拡大があれば肋間動脈損傷などによる出血や気胸・縦隔気腫を疑って速やかに対応すること、血性の排液が病状によるものか臓器損傷によるものか迷うときは、まずカテーテルをクランプし、心臓・大血管損傷を念頭に置いて対応することを挙げている[22]。

標準の対処:蘇生と輸血を進めながら、出血源の検索と確定的な止血を急ぐ。胸部の出血による循環不安定と排液量の基準は、前記の表のとおり手術適応とされる[1]。肋間動脈からの出血にはTAEが行われ、鈍的外傷の持続する血胸での成績は前述した[18]。鈍的外傷11例と医原性損傷13例の計24例に肋間動脈のTAEを行った後ろ向き研究では、1回目の手技で止血できたのは21例(87.5%)、累積死亡は鈍的外傷群9.1%、医原性群61.5%(8例中7例は重い併存症による)で、胸壁や脊髄の虚血は起きなかった。著者は、経験のある術者が行い、側副路を含む解剖を把握することが必須とした。抄録では、医原性損傷がどの手技によるものかは示されていない[23]。

バルーン圧迫の報告:胸壁からFoleyカテーテルを入れてバルーンを膨らませ、引き戻して出血部を圧迫する方法について、確認できた報告は次のとおりである。いずれも症例報告・短報か、胸壁以外の部位を中心とした症例集積で、比較研究はない。

Tian 2025(症例報告、外傷ではない):5歳児で、右腋窩開胸による心室中隔欠損の修復後、第6肋間から右室に通した一時ペーシングワイヤの刺入部から出血した例である。ICUに戻った時点で、術後3時間に右胸腔ドレーンから約260 mLが出ており、心拍数は140〜160/分、血圧は53〜60/32〜36 mmHgだった。著者は、排液が鮮紅色で勢いが弱いことから肋間静脈の損傷を推定し、年齢と、出血点を素早く見つけて縫う難しさから、再開胸は二次損傷の危険を高めうると判断し、ベッドサイドでの検索の準備を進めながら、その間の圧迫止血としてFoleyカテーテルを選んだ。10 FrのFoleyカテーテルを胸壁から入れ、生理食塩水5 mLでバルーンを膨らませ、ゆっくり引き戻して胸壁に当てた位置でクランプし(原文 clamped against the chest wall)、出血部を圧迫した。どの位置から入れたか(ワイヤの刺入部か別の部位か)は本文から特定できなかった。その後、排液は減り、心エコーと胸部X線でタンポナーデを除外し、24時間の排液は約20 mL、血圧は80〜90/50〜60 mmHgになった。術後2日目にドレーンとペーシングリードを抜いたとあるが、Foleyカテーテルを抜いた時期と手順は記載がなかった。3か月後の画像に異常はなかった。出血源は画像や手術で確かめられておらず、輸血とTAEの記載はない[24]。

同じ報告で著者は、成人なら12〜14 Frのカテーテルと8〜10 mLのバルーン容量に上げることを勧めるとしたが、これは提案で、成人で使った結果ではない。治療の選択肢を比べた表では、この方法の対象を「安定した患者の小〜中等量の出血」、危険を「位置のずれ、感染、不完全な止血」とし、重い出血や制御できない出血は再開胸の対象としている(本例は低血圧を伴っていた)[24]。

Chao 2011(短報):Injury誌の2ページの短報で、肋間血管からの出血にFoleyカテーテルのバルーン圧迫を用いた経験を報告している。閲覧できた冒頭部分では、最初の症例は52歳男性で、thoracostomyの後に遅れて出血し、その後48時間出血が続いたため開胸を予定したが、全身麻酔中に心停止し、蘇生後は開胸を続ければ死亡の危険が非常に高い状態になったとされる。著者は、手術設備のない環境で救命につながりうる手技としている。冒頭で医原性の原因として thoracostomy と thoracentesis を挙げ、開胸(thoracotomy)と書き分けていることから、thoracostomyは胸腔ドレーン挿入を指すと読めるが、症例数、挿入法、バルーン容量、固定、抜去、結果は、本文を取得できず未確認である[25]。

外傷の出血全般の症例集積:民間の外傷患者でバルーンカテーテルによる緊急タンポナーデを要した44例(1998〜2009年)では、最初のタンポナーデが93%で成功し、生存率は肝67%、四肢血管67%、腹部血管50%、心臓38%、顔面8%で、Foley、Fogarty、Blakemoreなどが使われた[26]。穿通性の体幹外傷29例の後ろ向き研究では、救急室で止血できた9例は頸部4例と心臓5例、手術室で止血を要した20例は心臓15例と腹腔内5例だった[27]。いずれも抄録に挙がる部位に胸壁・肋間はなく、胸壁や肋間の出血に当てはめられる数値は得られなかった。胸部刺創による胸壁の出血や、外傷患者のドレーン挿入に伴う肋間動脈損傷に限った症例集積・総説・比較研究は、今回の検索では見つからなかった。

本稿の解釈バルーン圧迫は、TAEや手術による確定的な止血までの時間を稼ぐ一時止血の選択肢の一つにとどまり、それ自体を治療として勧める根拠はない。根拠は、小児の術後の、静脈性と推定された出血の1例と、詳細を確認できない短報だけで、外傷での成績はない。圧迫が効くのは出血点が胸壁のバルーンの当たる範囲にある場合に限られ、肺実質、心臓、大血管からの出血には効かないと考えられる。肋間動脈には側副路があり(TAEの報告は側副路を含む解剖の把握を必須とした[23])、中枢側と末梢側の両方から出血が続けば一点の圧迫では止まらないことも考えられるが、これを直接示した報告は見つからなかった。血性の排液を胸壁からの出血と決めつけず、心臓・大血管損傷を念頭に置いて対応し[22]、圧迫を試みるなら、同時にIVRか手術の準備を進め、排液量、循環、輸血量で効果を確かめ、排液が減っても胸腔内に血液がたまり続けていないかを画像で確かめる。外傷でドレーンを抜き、その穴からバルーンを入れる手順は、確認できた報告には書かれていない。

国内で使うとき:Foleyカテーテルは止血を目的として作られた製品ではなく、尿路への留置を使用目的とする製品を止血に使うことは、承認された使用目的の外(適応外の使用)にあたる。国内の電子添文の記載そのものは、今回は取得できず未確認である。一方で、バルーンカテーテルによる一時止血は、心臓の損傷を含む外傷の出血に対して症例集積で報告されてきた方法であり[26][27]、救命のための一時止血として用いることは、外傷診療では一般に受け入れられている面がある(著者の見解)。使うときは、止血を目的とした製品ではないことを踏まえ、診療録への記載と、事後の患者・家族への説明を行いたい(本稿の解釈)。

4.潜在性気胸と人工呼吸

潜在性気胸は、胸部X線では見えずCTで見つかる気胸を指す。EAST 2011は、安定した患者では陽圧換気の有無にかかわらず観察してよいとし、ドレーンの要否を予測するスコアは正確でないとした(いずれもLevel 3)。同指針が要約した1990年代のRCT2件は、観察群21例中8例が人工呼吸中に進行してドレーンを要した試験と、進行や呼吸器合併症に差がなかった試験に分かれた[5]。

OPTICC(多施設RCT):陽圧換気を要する成人の外傷性潜在性気胸を、観察(75例)とドレナージ(67例)に割り付けた。主要評価項目の複合的な呼吸窮迫は38%対25%(p=0.14、検出力0.38)で有意差はなく、死亡にも差はみられなかった。観察群の4分の1は観察に失敗し、人工呼吸が5日を超えた患者では40%に達した。ドレナージ群の23%に合併症または機能しないドレーンがあった。著者は、短期の陽圧換気を受ける安定した患者では、すぐに救済ドレナージができる場合に限り慎重に観察できるとし、5日以上の人工呼吸では、専門家の指導のもとでのドレナージを考えるよう提案した[7]。

本稿の解釈検出力0.38の試験で有意差がなかったことは、観察とドレナージが同じ結果になることを意味しない。観察を選ぶなら、手術室、CT室、搬送中も含めて、誰がすぐに救済ドレナージを行えるかを確かめておく。

5.残存血胸:2本目のドレーン、VATS、線溶療法

EAST 2011は、ドレーンを入れても胸部X線で陰影が続けば胸部CTを行い(Level 2)、単純X線で残存血胸が続けば2本目のドレーンではなく早期のVATSで治療し(Level 1)、VATSは感染と開胸への移行を減らすため入院3〜7日目までに行う(Level 2)とした。線溶療法は6〜13日を経た亜急性の被包化・滲出性の貯留に用いてよく(Level 3)、受傷3日目にエアリークが続けばVATSでの評価を促す(Level 2)[5]。同指針が引用するMeyer 1997のRCT(39例)では、VATS群でドレーン留置期間、術後の在院日数、費用が少なく、2本目のドレーン群は24例中10例が後に手術を要した[28][5]。

EAST 2021は、6,391件から選んだ14件(多くは後ろ向きで、根拠の質は非常に低い)をもとに、線溶療法を試みるよりVATSを条件付きで推奨し、VATSは早期(4日以内)に行うことを推奨した。抄録と出版社ページのハイライトは、線溶療法との比較を「条件付きで推奨」、早期実施を「推奨」と書き分けているが、全文を取得できず、推奨の強さはこの文言以上には確認できていない[8]。EASTの公式ページはこの指針を改訂作業中とし、作成中の指針の一覧に2025年の改訂が載るが、2026年9月23日時点で改訂版の公表は確認していない[29]。

DuBose 2012(AAST、20施設の前向き観察研究):入院24時間以内に胸腔ドレーンを入れ、その後のCTで残存血胸が見つかった328例では、最初の処置はVATSが最も多く(33.5%)、26.5%が2回、5.4%が3回の処置を要し、20.4%が最終的に開胸となった。観察で済む最も強い予測因子は推定量300 cc以下(OR 3.7、95%CI 2.0〜7.0)で、ドレーン挿入時の予防的抗菌薬はVATSで完結することと関連した(OR 3.3、同1.2〜9.0)。VATSの時期と成功率の関連は見いだされなかった。膿胸は26.8%、肺炎は19.5%だった[9]。

Zambetti 2022(米国TQIPの後ろ向き解析):受傷14日以内にVATSを受けた3,546例では、VATSまでの時間の中央値は134時間だった。3.9日より前のVATSでは肺合併症(13%対17%)と在院日数(9日対12日)が少なく、入院7日以内のVATSは、肺合併症の減少と関連した唯一の修正可能な因子だった(OR 0.52、95%CI 0.43〜0.63)[30]。

Edu 2024(南アフリカ、単施設RCT):穿通性外傷後の残存血胸がある安定した患者を、遅い時期のVATSとドレーンの再挿入に割り付けた。解析した62例(VATS 30例、再挿入32例)の総在院日数は12日対14.4日(p=0.224)で有意差はなく、著者は、VATSで合併症と追加処置が少なかったと結論した[31]。

胸腔内線溶療法

Kumar 2015(インド、単施設RCT)は、18〜70歳の外傷性残存血胸35例をVATS(18例)とストレプトキナーゼの胸腔内投与(17例)に割り付け、解消は72%対71%(p=1)だった[32]。少数例で、有意差がないことは同等を意味しない。Hendriksen 2019のメタ解析(RCT 1件、非RCT 9件、162例)では、線溶療法の後に手術を避けられた割合は87%(95%CI 81〜92%)、tPAでは83%(同71〜94%)だったが、統合したのは治療後の割合で、対照群との比較ではない[33]。WSES–AAST 2025の本文は、胸腔内線溶薬のデータは少ないが、外傷患者では解消の遅れ、費用と合併症の増加と関連するようだとしている[1]。国内の線溶薬の添付文書には胸腔内投与の記載がない(「日本で実施するとき」を参照)。

本稿の解釈「4日以内」は4日目まで待ってよいという意味ではない。排液が不十分と分かった段階で、残った血液の量と位置、感染の徴候、呼吸状態、手術の条件を評価する。時期の根拠は観察研究で、結果も一致していない[9][30]。

6.予防的抗菌薬と抜去

予防的抗菌薬

EAST 2012は、外傷性血気胸のドレーン挿入時の予防的抗菌薬について、賛否いずれの推奨にも十分な根拠がないとした[34]。後継のEAST 2022は、14研究(うち8件がRCT)の統合で予防投与を受けた患者の膿胸が少なかった(OR 0.47、95%CI 0.25〜0.86)として、挿入時の予防的抗菌薬を条件付きで推奨した。穿通性外傷ではOR 0.25(95%CI 0.10〜0.59)、鈍的外傷ではOR 0.25(同0.06〜1.12、p=0.07)で、肺炎と死亡に有意な影響はなかった。最も多く使われた薬剤はセファゾリンで、期間は挿入時の単回から抜去後48時間までとばらつき、薬剤と期間の推奨は示されていない[10]。WSES–AAST 2025の本文は、穿通性外傷と、開胸・胸腔鏡で外科的検索を行うすべての例で予防的抗菌薬の適応があるとし[1]、WTA 2022は予防投与を提案し、挿入前の投与が望ましいとした[11]。

抜去

外傷に限って、抜去を決める排液量の基準を比べたRCTは、今回の検索では確認できなかった。外傷患者69例の胸腔ドレーン102本を吸気終末と呼気終末の抜去に割り付けたRCTでは、抜去後の気胸の再発または小さな気胸の拡大は52本中4本(8%)対50本中3本(6%)(p=1.0)、再挿入は2本対1本だった[35]。刺創による胸部外傷163例の前向き研究では、抜去後の再発気胸は11例(7%)で、再挿入は1例、すべて抜去後6時間未満に見つかった[36]。

本稿の解釈抜去の判断と引き継ぎでは、肺の再膨張、エアリークの有無と推移、排液の量と性状、画像に残る胸腔内の病変、人工呼吸の条件、水封か吸引かを記録し、抜去する側と抜去後に診る側が同じ状態を想定できるようにする。

根拠の比較表

出典(年)デザイン対象比較(A対B)主な結果(A対B)限界と意味
Bauman(2021)[2]単施設RCT(非劣性として計画、早期終了)排液を要する18歳以上の外傷性血胸・血気胸43例(緊急挿入などを除外)14 Fr pigtail対28〜32 Fr失敗10%対17%(P=0.49)。挿入時の体験 中央値1対3原著にCIなし。本稿計算の差−7.4ポイント(95%CI −28.4〜+15.2)。予定例数の約23%で終了
P-CAT(2021)[3]多施設RCT外傷性血胸119例(緊急挿入を要する例などを除外)14 Fr経皮的カテーテル対28〜32 Fr失敗11%対13%(p=0.74)。挿入時の体験 中央値1対3(p<0.001)抄録にCIなし。本稿計算の差−2.0ポイント(95%CI −13.9〜+10.4)。Baumanと登録期間が重なる
McCartt(2025)[13]単施設RCT(非劣性)外傷性血胸109例14 Fr Thal(Seldinger法)対28 Fr失敗8.3%対3.9%。マージン15%で非劣性細い側が数値上は高い。マージンが広い
Granieri(2025)[4]RCTのメタ解析(4件)外傷性血胸・血気胸・気胸676例14 Ch以下対28 Ch以上失敗 RR 0.95(95%CI 0.66〜1.35、I²=0%)。留置期間 平均差−0.49日必要な情報量の22%。初回500 cc超の血胸は検討できず
Kulvatunyou(2014)[14]単施設RCT合併症のない外傷性気胸40例(緊急挿入を除外、血胸・フレイルなし)14 Fr pigtail対28 Fr挿入直後の挿入部の痛み(平均)3.2対7.7(P<0.001)。留置期間・解消・合併症は似ていたと報告主な評価は痛み。血胸には当てはまらない
OPTICC(2021)[7]多施設RCT陽圧換気を要する成人の外傷性潜在性気胸142例観察対ドレナージ呼吸窮迫38%対25%(p=0.14、検出力0.38)。死亡に差はみられず検出力不足。観察群の4分の1が失敗し、5日超の人工呼吸では40%
Karmy-Jones(2001)[6]5施設の後ろ向き症例集積受傷48時間以内に出血で緊急開胸した157例胸腔からの出血量と死亡1,500 mLでの死亡リスクは500 mLの3倍開胸例だけの解析で、開胸しなかった例との比較はない
Huang(2021)[16]後ろ向き大量血胸の排液基準を満たした鈍的外傷44例止血を要した例対それ以外乳酸5.7対1.8 mmol/L(p=0.002)。6例は保存的治療で退院、11例は止血操作を伴わない手術小規模。基準だけで手術を決めないことを示唆
DuBose(2012)[9]20施設の前向き観察研究24時間以内にドレーンを入れ、CTで残存血胸がある328例治療の選択と転帰最初の処置はVATSが33.5%、最終的な開胸20.4%、膿胸26.8%。VATSの時期と成功率に関連なし観察研究で、時期の効果は示せない
Zambetti(2022)[30]米国TQIPの後ろ向き解析受傷14日以内にVATSを受けた3,546例3.9日より前対それ以降肺合併症13%対17%、在院9日対12日。7日以内のVATSで肺合併症のOR 0.52(95%CI 0.43〜0.63)データベース研究で、交絡の可能性
Kumar(2015)[32]単施設RCT18〜70歳の外傷性残存血胸35例VATS対ストレプトキナーゼ胸腔内投与解消72%対71%(p=1)小規模。有意差なしは同等を意味しない
EAST 2022(Freeman)[10]系統的レビュー・メタ解析(14研究、うちRCT 8件)胸腔ドレーンを入れる成人の外傷予防的抗菌薬あり対なし膿胸 OR 0.47(95%CI 0.25〜0.86)。肺炎・死亡に有意な影響なし鈍的外傷ではCIが1をまたぐ。薬剤と期間はばらつく

評価時点:Bauman 2021の本文は失敗を評価する期間を定めておらず[2]、P-CAT、McCartt 2025、OPTICC、DuBose 2012、EAST 2022の抄録にも、主要な評価項目を何日目まで追ったかの記載はない[3][13][7][9][10]。時点が分かるのは、Kulvatunyou 2014の痛み(挿入直後・1日目・2日目)[14]、McCartt 2025の再入院(90日以内)[13]、抜去後の再発気胸(6時間未満にすべて検出)[36]などに限られる。表の数値は入院中の一定期間の発生割合として読み、長期転帰の比較としては扱わない(本稿の解釈)。

日本で実施するとき

国内の指針と分類

  • JATEC:外傷初期診療ガイドライン改訂第6版の本文は取得できず、開胸の目安の数値と勧めるドレーンの太さは未確認である。日本外傷診療研究機構の改訂概要は、EFASTはsecondary survey以降に行うことを原則としつつ、気胸が疑われ気管挿管を要する患者ではprimary surveyで行ってよいとした[37]。
  • 国内資料でのJATECの引用:国内の発表資料(JATEC本文ではない二次資料)に、JATECの開胸適応として「施行時1,000 mLの血液吸引、開始後1時間で1,500 mL以上、2〜4時間で200 mL/時以上、持続する輸血が必要」を挙げたものがあるが、版の記載はない[38]。海外の指針とは時間の区切りが違うため、施設で使っている版の本文で確かめたい。
  • 日本外傷学会臓器損傷分類2008:胸郭損傷分類2008は、付記として気胸(Pt)、血胸(Ht)、血気胸(HPt)、縦隔気腫(Pm)、縦隔血腫(Hm)、緊張性気胸(TPt)、緊張性血胸(THt)の表記を定める。肺損傷分類2008はⅠ型(表在性損傷)、Ⅱ型(深在性損傷)、Ⅲ型(肺門部損傷)に分ける[39]。
  • 外傷性気胸・血胸を対象とした国内学会の独立した診療指針は、今回の検索では見つからなかった。

国内のデータ

  • 国内の研究として、従来の基準より少ない排液量での開胸が多かった報告と、肋間動脈出血へのTAEの報告、胸腔ドレーン挿入による外側胸動脈損傷へのTAEの報告がある(3節)[17][18][21]。
  • 日本医療機能評価機構の公開データベース(2010年1月〜2020年4月)を用いた研究では、胸腔穿刺・胸腔ドレーン挿入に伴う有害事象137件のうち、少なくとも15件が死亡、17件が左右の取り違えだった。合併症は肺損傷55%、胸部血管損傷21%、肝損傷10%で、43件(31%)が手術を要し、胸部血管損傷は他の合併症より死亡の危険が高かった(p=0.02)。経験10年以上の医師の事例も含まれていた[40]。外傷に限った集計ではない。
  • 日本外傷データバンク(JTDB)などで、国内の外傷性血胸におけるドレーンの太さ、VATSの時期、排液量と開胸の関係を調べた研究は、今回の検索では見つからず未確認である。

機器・薬剤・保険

  • 胸腔ドレーン:内針付きの胸腔ドレーンの一例(SBカワスミ「トロッカーカテーテル」)は、一般的名称が「滅菌済み体内留置排液用チューブ及びカテーテル」の管理医療機器で、外径8〜28 Fr。添付文書は、胸腔内でカテーテルを操作するときは必ず針を少し引き込んだ状態で行うよう警告している[41]。
  • Seldinger法のキット:一例(カーディナルヘルス「アスピレーション セルジンガー キット」)は、一般的名称が「心膜排液用カテーテル」の管理医療機器で、5 Frと8 Fr(8 Frにpigtail型)があり、使用目的に胸腔内への留置を含む[42]。試験で使われた14 Frのpigtailカテーテルや14 Fr Thalチューブに相当する国内製品は未確認である。
  • 保険:令和8年度の診療報酬点数表では、J019 持続的胸腔ドレナージ(開始日)は990点(3歳未満の乳幼児加算110点)で、2日目以降はJ002 ドレーン法(持続的吸引を行うもの50点)で算定し、非開胸的な胸腔内出血の排除もJ019で算定する。特定保険医療材料「029 吸引留置カテーテル」には能動吸引型の胸腔用の区分がある[43]。いずれも二次資料で確認し、告示・通知の原文とは照合していない。
  • 線溶薬:ウロナーゼ静注用6万単位の効能・効果は脳血栓症と末梢動・静脈閉塞症、アクチバシン注は虚血性脳血管障害急性期と急性心筋梗塞で、いずれも静脈内投与であり、胸腔内投与の記載はない[44][45]。胸腔内投与は適応外使用にあたるため、施設の手続きと患者・家族への説明を確かめたい。
  • 抗菌薬:セファゾリンなど予防投与に使う薬剤の国内添付文書と、ドレーン挿入時の予防投与との関係は未確認である。
  • Foleyカテーテル(止血目的):止血を目的とした製品ではなく、肋間の出血の圧迫に使うことは使用目的の外の使用にあたる(3節)。国内の電子添文の記載は未確認である。

安全情報

  • 日本医療機能評価機構の医療安全情報No.133「胸腔ドレーンの大気への開放」(2017年12月)は、ドレーンバッグの水封部に滅菌蒸留水を入れずに接続し、陰圧の胸腔に空気が逆流して呼吸状態が悪化した事例などを取り上げ、準備の手順づくりと教育を求めた[46]。原本のPDFは取得できず、要点は報道記事で確認した。
  • 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は2020年11月に、提言第12号「胸腔穿刺に係る死亡事例の分析」を公表した。報道記事によれば、胸腔ドレーン挿入を含む胸腔穿刺の死亡事例を分析し、心臓・大血管を穿刺する危険の共有、穿刺前の画像での位置関係の確認、血性の排液で判断に迷うときの対応、穿刺後の観察を提言している[22]。原本のPDFは取得できなかった。

施設体制

本稿の解釈以下は、上記の根拠を国内の施設で使うための本稿の提案である。

  • 循環の安定した血胸に細いカテーテルを使う条件(除外する状態、閉塞したときに入れ替える担当)を手順にする。
  • 排液量を1時間ごとに性状とともに記録し、外科医に連絡する基準を、数値だけでなく循環と輸血量でも決める。
  • VATSと、肋間動脈のTAEなどのIVRが夜間・休日にどこまで対応できるかを把握し、できない場合の転院の基準と経路を決める。
  • ドレーンバッグの準備(水封部への注水)と吸引設定の確認を、医師と看護師の共通の手順にする。予防的抗菌薬を使うなら、挿入前の投与も手順に組み込む。
  • 抗凝固薬を内服する高齢者は高齢者外傷の初期診療と回復支援、出血性ショック下の麻酔は外傷麻酔の実践も参照。

まだ分からないこと

  • 細いカテーテルは循環不安定や大量血胸にも使えるか。主なRCTは緊急挿入を除外し[2][3]、統合解析も初回500 ccを超える血胸を検討できていない[4]。
  • 開胸を決める排液量の最適な値。1,500 mLの根拠は開胸例だけの後ろ向き研究で[6]、基準を見直した研究も、本稿の確認範囲では小規模な後ろ向き研究にとどまる[16][17]。
  • 長期の人工呼吸が見込まれる潜在性気胸。OPTICCは検出力0.38で、5日を超える人工呼吸では観察の失敗が40%だった[7]。
  • VATSの時期と線溶療法の位置づけ。早いほど肺合併症が少ないというデータベース研究と[30]、時期と成功率に関連がなかった前向き観察研究がある[9]。線溶療法の比較試験は小規模である[32]。
  • 抜去の基準と、水封・吸引の選び方。外傷に限った質の高い比較は、今回の検索では確認できなかった。
  • 肋間動脈損傷へのバルーン圧迫。報告は小児の術後の1例と詳細を確認できない短報で[24][25]、外傷での有効性と安全性、TAE・手術との比較は分かっていない。
  • 指針の改訂。EASTは血胸の指針を改訂中で[29]、ATLS第11版とJATEC改訂第6版の該当本文は未確認である。改訂が公表されれば本稿を見直す。

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医学的内容の最終確認日・確認範囲

文献ごとの確認範囲を開く(最終確認日:2026年10月3日)

医学的内容の最終確認日:2026年10月3日(著者確認。2026年10月3日の追記を含む。それ以前の内容は2026年9月25日に確認)。文献照合日:2026年9月23日(文献検索も同日、日本時間では9月24日)。PubMedとEurope PMCには接続できない時間帯があり、PMCのページも一部取得できなかったため、書誌と抄録は出版社、学会・公的機関の公開資料、Semantic Scholar、OpenAlexで確認した。OpenAlex(文献データベース)の抄録は、公開されている抄録の単語データから復元したもので、語の位置が連続しているかを確かめて読み、語順が乱れた部分の数値は使っていない。確認した範囲では、主要な文献に撤回の情報は見当たらなかった。検索記録は編集部で保管している。数値・用量・適用条件を含む医学的内容は、2026年9月25日に著者(医師)が確認し、2026年10月3日の追記分も同日に著者が確認した。

  • 全文を確認:[1] WSES–AAST 2025(出版社の公開全文)、[2] Bauman 2021(出版社の全文)、[4] Granieri 2025(出版社・PMCの公開全文)、[5] EAST 2011(学会公開PDF)、[10] EAST 2022(出版社の公開全文)、[11] WTA 2022(学会公開PDF)、[34] EAST 2012(学会公開PDFの推奨部分)、[39] 臓器損傷分類2008(学会公開PDF)。
  • 抄録のみ確認:[3] [8] [31](Semantic Scholarの抄録。[8]は出版社のプレビューのハイライトも確認)、[7] [14] [15] [16] [30] [32] [40](出版社の抄録)、[13](出版社の抄録とOpenAlex)、[17](J-STAGEの抄録)、[28](出版社の抄録とEAST 2011の記載)、[33] [35](大学の研究者データベースの抄録)、[36](PMCの抄録)、[6] [9] [12] [18](OpenAlexの単語データから復元した抄録)。本文中の数値は抄録にある範囲に限った。
  • 公式情報・二次資料を確認:[29] EAST公式ページ、[37] 改訂概要、[38] 発表資料、[41] [42] [44] [45] 添付文書、[43] 点数表と材料価格(二次資料)、[46] [22](原本は未取得、報道記事で要旨を確認)。
  • 2026年10月3日の追記で確認:[24] Tian 2025(出版社の公開全文)、[19] [20] [23] [26](PubMedの抄録)、[27](出版社の抄録)、[21](J-STAGEの抄録)、[25](出版社ページで閲覧できた冒頭部分のみ)、[22](報道記事の要旨のうち、穿刺後の観察、血性排液への対応、刺入部位の選択の記載を追加で確認)。[1] [18] は既存の確認範囲のまま引用した。
  • 未取得:ATLS第10版・第11版の本文、JATEC改訂第6版の本文、EAST 2021の全文、日本医療機能評価機構と日本医療安全調査機構の原本PDF、診療報酬の告示・通知の原文、国内の14 Fr pigtailカテーテルとセファゾリンの添付文書、[25] Chao 2011の本文、Foleyカテーテルの国内電子添文。

更新履歴

更新履歴を開く(全5件・最新:2026年10月3日)
  • 2026年10月3日(追記):3節に小節「肋間動脈を傷つけたとき:一時止血としてのバルーン圧迫」を追加し、胸腔ドレーン挿入に伴う胸壁の動脈損傷の解剖と所見、TAEなどの標準の対処、Foleyカテーテルによるバルーン圧迫の報告(Tian 2025ほか)とその限界、国内で使うときの注意を記載した。あわせて「日本で実施するとき」の国内のデータと機器の項、「まだ分からないこと」に各1項目、新しい文献[19]〜[21]、[23]〜[27]とその確認範囲を加え、文献番号を本文の初出順に振り直した(既存の提言第12号は[22]となり、既存の[19]以降の番号が変わった)。理由:胸腔ドレーン挿入時の肋間動脈損傷にFoleyカテーテルの圧迫が使えるとする話題があり、根拠の範囲と、確定的な止血との関係を示す必要があったため。この追記の医学的内容は、2026年10月3日に著者(医師)が確認した。著者確認にあわせ、Foleyカテーテルが止血を目的とした製品ではないことと、外傷診療での一時止血としての位置づけ(著者の見解)を書き加えた。
  • 2026年9月26日(表記):確認範囲の記載を読者向けの表現に改め、関連記事と分野の一覧へのリンクを加えた(医学的内容は変えていない)。
  • 2026年9月25日(著者確認):著者(医師)が数値・用量・適用条件を含む医学的内容を確認した。確認日の表記を更新した。
  • 2026年9月23日(改訂):原著照合にもとづき全面改訂。冒頭の要点、対象と扱わない範囲、WSES–AAST 2025の推奨と強さ、同指針本文にある細いチューブと線溶療法への注意書き、細いカテーテルのRCT(Bauman 2021の群別の失敗率・例数・非劣性の設計と早期終了、P-CAT、McCartt 2025、気胸のRCT)とメタ解析、原著にない信頼区間の本稿での計算、開胸を考える排液量の出典ごとの対応表(EAST 2011のLevel 2、WSES–AAST 2025の強い推奨とその条件)と根拠研究(Karmy-Jones 2001、Kish 1976)、数値だけで決めないことを示す研究、潜在性気胸のOPTICC試験、残存血胸のAAST多施設研究・VATSの時期・線溶療法、予防的抗菌薬(EAST 2012・2022)、抜去の研究、根拠の比較表、「日本で実施するとき」(JATEC、臓器損傷分類2008、国内研究、機器・保険・添付文書、安全情報)、文献ごとの確認範囲を追加した。WSES–AAST 2025の排液量の基準を「手術検討の目安」から原文どおり「手術適応(推奨度は強、根拠の確かさは低)」に、EAST 2021の早期VATSを「提案」から抄録とハイライトの文言どおり「推奨」に改めた。「初稿」の表示と改訂状況の注記を外した。理由:Bauman 2021の群別の数値と効果量、排液量の閾値と指針・推奨の強さの対応、国内の指針・製品・体制、最終確認日と確認範囲の記載が不足していたため。
  • 2026年9月23日(初回公開):成人の外傷性気胸・血胸を中心としたナラティブレビュー初稿として公開(WSES–AAST 2025、Bauman 2021、EAST 2021の3文献と、EASTの指針更新状況の公式ページ)。

本記事は医療従事者への教育および一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。実際の診療では、各施設のプロトコルおよび最新の診療ガイドラインをご確認ください。
利益相反:本記事に関連して開示すべき利益相反はありません。

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この記事を書いた人

外科医・救急科専門医。外傷外科、Acute Care Surgery、救急・集中治療領域の診療と研究に従事しています。外傷性凝固障害、出血性ショック、止血蘇生、大量輸血、腹部外傷を中心に、臨床で使えるエビデンスを解説します。

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