外傷後にICUで発熱したとき、原因は感染とは限らない。受傷や手術による組織損傷、頭部外傷、薬剤、静脈血栓塞栓症、輸血でも熱は出る。本稿は、米国集中治療医学会・米国感染症学会(SCCM/IDSA)2023年の「ICUの新規発熱の評価指針」と米国外傷外科学会(AAST)2024年の合意文書を軸に、受傷後早期の非感染性発熱、感染巣の探し方、頭部外傷の中枢性発熱と平熱管理、薬剤熱・血栓・輸血反応、プロカルシトニンの使いどころ、解熱の是非を、原著の数値と限界とともに整理する。対象は成人の外傷ICU患者である。
医療従事者向け:本記事は教育および一般的な医学情報の提供を目的としています。個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。
まず押さえる要点
- ICUの発熱は多く、感染はおよそ半分。SCCM/IDSAはICUの発熱を「1回でも38.3℃以上」と定義してきた。2023年の指針は、発熱が定義と対象により成人ICU患者の26〜88%に起こるとする[1]。AAST 2024は外科系ICUの発熱のうち感染によるものは約半数とする[2]。一般ICUの前向き研究でも、発熱の原因は感染性と非感染性がほぼ同数で、多くは入室後1〜2日以内に始まった[3]。
- 検査は「発熱したから一式」ではなく、疑う症候群から選ぶ。SCCM/IDSAはICUで新たに発熱した患者の胸部X線、血液培養は別々の部位から少なくとも2セット(合計約60 mL)、中心静脈カテーテルがあれば末梢血と同時採取を勧める(いずれもベストプラクティス声明)[1]。AASTは、発熱だけを理由に喀痰・尿・血液の培養を出さないとする[2]。
- 頭部外傷の中枢性発熱は除外診断だが、熱そのものは放置しない。外傷に限らない神経ICUの研究では、入室72時間以内の発熱の開始が感染検索の陰性を予測した(p=0.01)[4]。ESICM/NACCS 2024の合意は、二次性脳損傷の危険がある重症頭部外傷で発熱を速やかに見つけて管理し、中枢性発熱もICPの値にかかわらず36.0〜37.5℃の平熱管理で治療するとした(この項目は18人中15人、83%の中等度の合意)[5]。
- 感染がなければ、薬剤・血栓・輸血・その他を順に疑う。薬剤熱に特徴的な熱型はなく、比較的徐脈・皮疹・好酸球増多は少数例にしかみられない[6]。血管造影で確認した肺塞栓で他の原因がない311例の14%に発熱があった[7]。発熱性非溶血性輸血反応は輸血中から輸血終了後4時間以内に起こるものと定義される[8]。
- プロカルシトニン(PCT)と解熱は、使う場面を絞る。SCCM/IDSAは、細菌感染の見込みが低〜中等度ならPCTの追加を提案し、高ければ除外目的に測らないことを提案する(弱い推奨)[1]。外傷では初期PCTが損傷重症度と相関するため、AASTは外傷患者での標準的な使い方はないとする[2][9]。感染疑いの発熱にアセトアミノフェン1 gを6時間ごとに投与したHEAT試験(700例)で、28日までのICU非滞在日数に有意差はなかった[10]。
対象と扱わない範囲
対象:ICUに入室した成人外傷患者で、入室後に新たに発熱した場合の原因の鑑別と初期の評価・対応。受傷当日から数日の早期の発熱と、1週以降の発熱の両方を扱う。
扱わない範囲:重度の免疫不全(好中球減少、臓器移植後)の発熱。SCCM/IDSA指針もこれらの患者を直接の対象にしていない[1]。熱傷、小児、感染症ごとの抗菌薬の選択と投与期間(外傷後の抗菌薬:予防投与と感染治療をどう分けるかを参照)、低体温の予防と脳保護目的の体温操作(外傷患者の体温管理:低体温の予防からTTMまでを参照)、VTEの予防法の詳細。
読み方:SCCM/IDSA 2023は一般の成人ICU患者を対象としたGRADE法の指針で、外傷患者に限った推奨ではない。AAST 2024は外科系ICUの専門家の合意文書で、系統的レビューではない。頭部外傷の平熱管理は専門家の修正デルファイ法による合意である。本稿では、外傷患者で得られた結果と、一般ICU・神経ICU・術後患者から外挿する部分を分けて示す。本稿は検索方法を記録したナラティブレビューで、系統的レビューではない。
1.発熱の定義と測り方
指針SCCM/IDSAはこれまで、ICU患者の発熱を「1回の測定で38.3℃以上」と定義してきた(2023年の指針の序文による)[1]。AASTは重症患者で38.3℃超を発熱、39.5℃超を高熱とする(好中球減少を除く)[2]。一方、重症頭部外傷の体温管理の合意(ESICM/NACCS 2024)は、発熱を「深部体温37.5℃超」と定義しており、閾値が違う[5]。頭部外傷では「38.3℃未満だから発熱ではない」とは扱わない。
指針測り方について、SCCM/IDSAは、肺動脈カテーテル・膀胱カテーテル・食道の温度センサーが入っている場合や正確な体温が診断と管理に欠かせない場合は、これらの中枢温の測定を優先するとした。こうした装置がない患者では、腋窩温・鼓膜温・側頭動脈の非接触型体温計・化学式の体温計より、口腔温か直腸温を用いることを提案する(弱い推奨、非常に低い確実性)[1]。ESICM/NACCSは重症頭部外傷で、間欠的な測定より連続的な体温モニタリングを、体表より深部(膀胱・食道・脳)の温度を支持した(いずれも強い合意、100%と94%)[5]。
指針SCCM/IDSAは、感染があっても発熱しない患者がいること、感染患者で発熱がないことは転帰の悪さと関連することにも触れている[1]。本稿の解釈低体温や体温の低下、説明のつかない循環・呼吸・意識・検査値の変化も、熱と同じく評価のきっかけにする。
2.受傷後早期の発熱:頻度と時期
研究結果9床の一般ICUに連続して入室した100入室(93例、1996年7〜10月)の前向き観察研究では、深部体温38.4℃以上の発熱が70%の入室でみられ、原因は感染性と非感染性がほぼ同数だった。多くの発熱は入室後1〜2日以内に始まり、5日未満で終わった。非感染性の原因で最も多かったのは術後の発熱(34例)で、全例が入室当日か翌日に発熱していた。5日を超えて続いた発熱16例のうち13例は感染によるもので、残る3例は感染と非感染の原因が併存した。遷延した発熱の死亡率は62.5%(10/16)で、5日未満の発熱の29.6%(16/54)より高かった[3]。
指針AASTは、組織損傷はよく知られた発熱の原因で、術後患者の最大39%が少なくとも1回発熱するとする。熱型については、非感染性の原因では38.9℃未満が多いこと、39.3℃を超え、とくに数日続く発熱は感染の可能性が高いこと、41℃を超える極端な高体温は感染によることがほとんどないことを挙げる[2]。本稿の解釈これは合意文書の記載で、外傷患者で閾値として検証された値ではない。熱の高さだけで感染か否かを決めない。
研究結果神経ICUに48時間を超えて入室し、抗菌薬の前に2検体以上の培養で精査された発熱患者の前向き研究では、93例中31例(33%)で発熱は非感染性だった。非感染性の発熱は感染性より早く始まり(平均2.6日対4日、p=0.007)、入室72時間以内の発熱の開始は感染検索が陰性になることを予測した(p=0.01)[4]。重症頭部外傷110例(ミラノ近郊の3つのICU、後ろ向き)では、受傷後1週間に80例(73%)が発熱し、発熱の有無と持続期間は神経学的な重症度とICU滞在の延長に関連した[11]。
研究結果術後早期の発熱の原因として無気肺がよく挙げられるが、心臓・腹部・顎顔面の手術を受けた998例を含む8研究の系統的レビューでは、無気肺と早期の術後発熱の関連を示したのは1研究だけで、発熱の無気肺に対する統合診断オッズ比は1.40(95%CI 0.92〜2.12)で、研究間の異質性が大きく正式なメタ解析は行われなかった[12]。本稿の解釈早期の発熱を「無気肺だろう」で片付けず、受傷・手術の侵襲、輸血、薬剤、血栓、見逃し損傷を並べて考える。
本稿の解釈受傷後48〜72時間の発熱は非感染性であることが多いが、この時期にも誤嚥性肺炎、見逃した腸管損傷、汚染創、開放骨折の感染は起こり得る。「早期だから感染ではない」とは言えず、時期は事前確率を動かす一つの情報にとどまる。5日を超えて続く、いったん下がってから再び上がる、臓器障害が新たに出る、といった経過は感染を強く疑う理由になる。
3.感染の検索:SCCM/IDSA 2023とAAST 2024
指針SCCM/IDSA 2023はGRADE法で作られ、12の推奨と9のベストプラクティス声明を示したが、推奨はすべて「弱い」に分類された[1]。指針は、術直後の発熱のように非感染性の原因が明らかな場合は、すべての発熱に精査が要るわけではないとする[1]。AASTは、診察だけの診断精度は感度60%・特異度64%にとどまるため、臨床評価に、疑いに応じて選んだ追加検査を組み合わせることを勧める。「一式の培養(pan-culture)」は、臨床上の利益を上乗せせずに抗菌薬の使用や費用、患者の苦痛、医原性の感染を増やすとして疑問視している[2]。
| 項目 | SCCM/IDSA 2023[1] | AAST 2024[2] |
|---|---|---|
| 胸部画像 | ICUで発熱したら胸部X線(BPS)。胸部X線に異常があれば、胸水と肺実質・間質の病変を判定できる技量がある場合に胸部超音波(弱い推奨、低い確実性) | 画像所見、酸素化の悪化、膿性分泌物と新たな発熱などで肺炎の症候群を判断する |
| 血液培養 | 別々の部位から少なくとも2セット(理想は合計60 mL)を時間をあけずに採取(BPS)。明らかな感染源がなく中心静脈カテーテルがあれば、カテーテルと末梢から同時に採取し陽性化までの時間差を比べる。カテーテルからは少なくとも2内腔(BPS) | 発熱だけ、局所の感染だけでは採取しない。敗血症・敗血症性ショック、壊死性軟部組織感染、髄膜炎、脾摘後の全身感染、重症の腹腔内感染などで採取。定期的な監視培養は不要 |
| 尿 | 膿尿があり尿路感染を疑うときは、尿道カテーテルを入れ替えて新しいカテーテルから採取(BPS) | 尿路症状がなければ、カテーテルの有無にかかわらず尿検査・培養は不要。発熱だけで尿検査をしない |
| 気道検体 | 肺炎や新たな上気道症状があればウイルスの核酸増幅検査(弱い推奨) | 肺炎の新たな症候群がなければ採取しない。発熱だけで気道培養を出さない |
| CT・超音波 | 胸部・腹部・骨盤の術後で初期評価で原因が分からなければ、外科と協議してCT(BPS)。腹部術後、腹部症状、肝胆道系検査の異常があれば腹部超音波(BPS)。これらがなければ腹部超音波を初期検査に定型的には行わない(BPS) | 記載は症候群ごとの治療が中心 |
| バイオマーカー | 細菌感染の見込みが低〜中等度ならPCTまたはCRPの追加を提案。見込みが高ければ除外目的に測らない(いずれも弱い推奨、非常に低い確実性) | 施設の多職種プロトコルの中で使用可。外傷・手術後は上昇するため有用性は限られる |
BPS:ベストプラクティス声明(best practice statement)。本稿の解釈2つの文書の違いは主に血液培養にある。SCCM/IDSAは「採るならどう採るか」を示し、AASTは「発熱だけでは採らない」と一歩踏み込む。敗血症を疑う所見がある、明らかな感染源がない、中心静脈カテーテルがある患者では、SCCM/IDSAの採り方に従って2セット以上を採る、と整理すると両者は矛盾しない。
4.外傷ICUで探す感染巣
手術部位・腹腔内・創
指針SCCM/IDSAは、胸部・腹部・骨盤の手術後に初期の評価で原因が分からない発熱では、外科と協議してCTを撮ることを勧める。術後数日たってから初めて発熱し、ほかの原因がすぐに見つからない場合に、術野のCTは妥当とするのがパネルの合意である[1]。AASTは手術部位感染(SSI)について、感染した内容物の排出を治療の中心に置く[2]。本稿の解釈外傷では、ダメージコントロール手術後の開腹創、見逃した腸管損傷、非手術管理中の実質臓器損傷の膿瘍や壊死、開放骨折・デグロービング損傷の創、血腫の感染を毎日の診察で確かめる。
人工呼吸器関連肺炎(VAP)
指針SCCM/IDSAは、肺炎がICU患者の発熱の原因として多く、発熱したICU患者で最も多い感染だとする[1]。AASTは、発熱も白血球増多も、その組み合わせも、気道培養の陽性とは関連しないこと、陽性の培養は臨床の判断にかかわらず抗菌薬で治療されがちなことを挙げ、肺炎の症候群を臨床的に判断してから検体を採るとする。気管吸引より気管支肺胞洗浄などの侵襲的な採取を勧める強い根拠はないとし、治療期間は多くの患者で7日で足りるとする[2]。人工呼吸の管理は重症外傷の人工呼吸・ARDS:肺保護換気から腹臥位までどう組み立てるかを参照。
カテーテル関連血流感染・尿路感染
指針AASTは、カテーテル関連血流感染を疑ったら中心静脈カテーテルを抜去し、原因菌に応じて7〜14日の抗菌薬を用いるとする。カテーテル関連尿路感染は尿検査だけで診断せず、症状や敗血症のない尿検査の異常では治療を始めないとする[2]。SCCM/IDSAのパネルも、尿路の症状・所見と膿尿(5〜10 WBC/hpf)を尿培養の根拠にすべきと考えたとし、無症候性細菌尿の陽性培養は抗菌薬の過剰使用を招き、本当の原因から目をそらせるとする[1]。
副鼻腔炎
研究結果経鼻挿管で人工呼吸を受けた399例の無作為化試験では、発熱時に副鼻腔CTで系統的に副鼻腔炎を探した群(199例)で80例に院内副鼻腔炎が見つかり、洗浄と抗菌薬で治療された。1か月のVAPの累積発生(Kaplan-Meier推定)は34%対47%(RR 0.61、95%CI 0.40〜0.93)、2か月の死亡は36%対46%(RR 0.71、95%CI 0.52〜0.97)で探索群が少なかった。著者は死亡への効果は確認が必要としている[13]。本稿の解釈対象は経鼻挿管の患者で、経口挿管が中心の現在の外傷ICUにそのまま当てはめられない。顔面骨折、経鼻の胃管・挿管、膿性鼻汁があり、ほかの原因が見つからない発熱で考える鑑別として位置づける。
無石胆嚢炎
指針SCCM/IDSAは、無石胆嚢炎を「頻度は高くないが重要で、見逃されやすい」発熱の原因とし、腹部術後、腹部症状、腹部の異常所見、トランスアミナーゼ・アルカリホスファターゼ・ビリルビンの上昇がある患者では正式なベッドサイドの腹部超音波を勧める(BPS)[1]。AASTも無石胆嚢炎を非感染性の発熱の原因の表に挙げている[2]。本稿の解釈絶食が長い、昇圧薬や大量輸血を要した、鎮静で腹部所見がとりにくい外傷患者では、肝胆道系検査の変化を超音波のきっかけにする。
Clostridioides difficile感染
指針IDSA/SHEAの指針は、説明のつかない新たな下痢(24時間に3回以上の非有形便)がある患者を検査の優先対象とする(弱い推奨、非常に低い確実性)[14]。本稿の解釈抗菌薬を使用中・使用後の外傷患者で発熱と下痢が重なれば鑑別に入れるが、経腸栄養や下剤による下痢と区別するため、便の回数と性状を記録してから検査する。
5.頭部外傷の中枢性発熱と平熱管理
研究結果神経ICUの研究では、非感染性の発熱はくも膜下出血に多く(48%対18%、p=0.01)、血管攣縮と関連した[4]。重症頭部外傷の後ろ向き研究(1996〜1999年、1施設)では、びまん性軸索損傷(OR 9.06、95%CI 0.99〜82.7)と前頭葉の損傷(OR 6.68、95%CI 1.1〜39.3)が中枢性発熱の独立した予測因子と報告されたが、信頼区間は非常に広く、びまん性軸索損傷の下限は1を下回る[15]。
指針重症の後天性脳損傷では、心拍数・血圧・呼吸数・体温の上昇と発汗が、姿勢異常と同時に発作的に起こる症候群を発作性交感神経過活動(PSH)と呼ぶことが国際合意で提案され、11項目の診断尺度が作られ、これをもとに評価尺度(PSH-AM)が作られた[16]。本稿の解釈発作性に熱・頻脈・高血圧・発汗が繰り返す場合はPSHも鑑別に入れる。ただし、PSHも中枢性発熱も、感染・薬剤・血栓などを除外したうえでの診断である。
指針ESICM/NACCS 2024は、重症頭部外傷と、ICP管理のためにICUに入る悪化した中等症頭部外傷を対象に、18人の専門家の修正デルファイ法で合意をまとめた(強い合意は18人中16人以上〔88%以上〕、中等度の合意は14人以上〔78%以上〕)。要旨は、二次性脳損傷の危険があると考えられる患者では発熱を速やかに見つけて管理すべきだとまとめている。項目ごとの合意率(本文の表1)は、中枢性発熱(敗血症や臨床的に重要な炎症がないのに神経調節の異常で起こる37.5℃超の深部体温)をICPの値にかかわらず速やかに見つけて36.0〜37.5℃を目標とする平熱管理で治療することが83%(中等度の合意)、平熱管理(36.0〜37.5℃)をSIBICCのICP管理の第1・第2段階の治療に加えることも83%(中等度の合意)だった。後者を要旨は「strongly recommended」と表現しているが、表1の合意率では中等度の合意に当たる。中枢性発熱と感染性発熱の区別は難しいが臨床的に重要だとも述べている[5]。
研究結果重症頭部外傷110例の研究では、薬物による解熱の効果はわずかで(平均0.58±0.7℃の低下)、脳灌流圧(CPP)が有意に低下した(6.5±12.5 mmHg)[11]。ESICM/NACCSも、解熱薬による発熱の制御と体温変動の抑制には限界があるとし、体温管理を始めるときには精密な制御ができる自動フィードバック式の装置が望ましいとする(強い合意、100%)。シバリングは評価・記録・管理し(強い合意、100%)、ICPが不安定なら十分な鎮静を確かめたうえで筋弛緩薬を考えるとしている(強い合意、94%)[5]。
低体温療法の是非、平熱管理の装置や目標の詳細は、外傷患者の体温管理:低体温の予防からTTMまでと頭部外傷の血圧・ICP・CPP・Hb管理:HEMOTIONとTRAINをどう読むかで扱う。本稿の平熱管理の記載は、ESICM/NACCSの合意の範囲に限った。
6.薬剤熱
研究結果米国ダラスの2病院の51エピソード(45例、1959〜1986年)と英語文献の97エピソードの分析では、教科書的な特徴と違い、比較的徐脈は少数例にしかみられず、特徴的な熱型はなく、薬剤の開始から発熱までの期間は非常にばらつき、皮疹や好酸球増多を伴うことは少なかった。心血管疾患がなければ再投与の危険は小さかった[6]。
指針AASTはICUで薬剤熱を起こしやすい薬として、β-ラクタム系・スルホンアミド・ニトロフラントインなどの抗菌薬、プロカインアミド・キニジン、フェニトイン・カルバマゼピン、デクスメデトミジン・バルビツール酸、サルファ基を含むループ利尿薬、便軟化剤を表に挙げる[2]。本稿の解釈外傷ICUでは、抗菌薬、抗てんかん薬(頭部外傷後の発作予防)、鎮静薬がこれに当たる。感染の検索が陰性で全身状態が保たれていれば、疑わしい薬を1剤ずつ中止・変更して熱の経過をみるのが現実的である。ただし、薬剤熱は除外診断であり、「熱のわりに元気」という印象だけで決めない。
7.静脈血栓塞栓症(VTE)
研究結果肺塞栓症の診断研究(PIOPED)で、血管造影で確認した肺塞栓がありほかに発熱の原因がない311例のうち43例(14%)に発熱があった。肺出血・肺梗塞のある例とない例で発熱の頻度に有意差はなかった(15%対9%)。説明のつかない発熱のある肺塞栓の患者には、深部静脈血栓症の臨床所見を伴うことが多かった。著者は、微熱は珍しくなく、高熱はまれだが起こり得ると結論した[7]。AASTも深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、肺塞栓を非感染性の発熱の原因に挙げる[2]。
本稿の解釈外傷患者は静脈血栓の危険が高く、予防が遅れた・中断した患者、骨盤・下肢骨折、脊髄損傷、長期臥床では、発熱に頻脈・低酸素・片側の下肢腫脹が加われば下肢静脈超音波や造影CTを考える。予防の開始時期と中断の見直しは外傷後VTE予防:出血を恐れて待つ間に、何を再評価するかを参照。
8.輸血反応
指針米国NHSNの血液安全監視の定義では、発熱性非溶血性輸血反応は、輸血中または輸血終了後4時間以内に、38℃以上かつ輸血前から1℃以上の発熱、または悪寒・戦慄が起こるものとされる。輸血関連急性肺障害(TRALI)は輸血中または輸血終了後6時間以内、輸血関連循環過負荷(TACO)は輸血終了後12時間以内の発症・悪化を条件とする[8]。日本輸血・細胞治療学会の症状項目の説明では、発熱は輸血開始後に38℃以上に上昇した場合、輸血前から発熱している場合は開始後に1℃以上上昇した場合とされ[17]、TRALIは輸血中もしくは輸血後6時間以内、TACOは12時間以内が基準の時間枠である[18]。
指針同学会の輸血有害事象対応ガイドライン改訂第2版は、発熱などの副反応歴がない場合は輸血前にアセトアミノフェンを使わないことを考慮するとし(2C)、頻回の副反応歴がある場合は使用を考慮するとする(2D)[19]。本稿の解釈大量輸血の後や輸血中の発熱では、まず輸血を止めて、溶血反応と細菌汚染を除外する。発熱性非溶血性輸血反応は除外診断で、呼吸状態が悪化すればTRALIやTACOを考える。大量輸血の運用は大量輸血プロトコル(MTP)|1:1:1・VEM・全血輸血を参照。
9.そのほかの非感染性の原因
指針AASTの表は、上に挙げたもののほか、心膜炎・心筋梗塞、脳卒中・頭部外傷・けいれん・頭蓋内出血、副腎不全・甲状腺機能亢進症、腸管虚血・肝炎・膵炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)・肺臓炎、自己免疫疾患、薬物・アルコールの離脱、脂肪塞栓、血腫、悪性腫瘍、術後の発熱を非感染性の原因に挙げる[2]。本稿の解釈外傷ICUでは、長管骨骨折後の脂肪塞栓、大きな血腫の吸収、膵損傷後の膵炎、飲酒歴のある患者の離脱、昇圧薬が減らせない患者の副腎不全を、受傷機転と経過から思い浮かべる。
10.プロカルシトニンの使いどころ
指針SCCM/IDSAは、新たに発熱し明らかな感染巣がない重症患者で、細菌感染の見込みが低〜中等度ならPCT(またはCRP)をベッドサイドの評価に加えることを提案し、見込みが高ければ細菌感染を否定する目的では測らないことを提案する(いずれも弱い推奨、非常に低い確実性)[1]。指針が引用した最近の系統的レビュー・メタ解析(9研究、敗血症495例・非敗血症873例)では、敗血症の診断でPCTの感度0.80(95%CI 0.69〜0.87)、特異度0.77(95%CI 0.60〜0.88)、CRPの感度0.80(95%CI 0.63〜0.90)、特異度0.61(95%CI 0.50〜0.72)だった。指針は、患者が安定したあと、PCTが0.5 µg/L未満またはピークから80%以上低下したことを抗菌薬中止の目安にできるとも述べる[1]。
研究結果外傷患者のPCTの系統的レビュー(19研究、外傷4,146例)では、すべての研究で初期のPCTが損傷重症度スコア(ISS)と強く相関した。16研究中12研究で、のちに敗血症になった患者の初期PCTが高かった。7日以降にPCTが再び上がる二相性の上昇が敗血症の発症と関連したとする研究が2つあった。研究間の違いが大きく、結果は統合されていない[9]。AASTは、PCTを施設の多職種プロトコルの中で使えるとしつつ、外傷(手術を含む)や膵炎では基礎値が上がるため、重症外傷患者での有用性は限られ、標準的な使い方はないとする[2]。
指針日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)は、敗血症の抗菌薬を中止する指標としてPCTを用いることを提案する(GRADE 2A)。16の無作為化試験のネットワークメタ解析で、PCTに基づく中止は死亡を1,000人あたり32人減らし(95%CI 53人減〜9人減)、抗菌薬の投与期間を2.15日短縮した(95%CI 2.80〜1.50日短縮)[20]。本稿の解釈外傷ICUでは、受傷直後の高いPCTで感染と決めず、始める判断より「数日後の推移」と「中止の判断」に使うほうが根拠に合う。
11.抗菌薬を始めるか、待つか
指針AASTは、不適切な抗菌薬には大きな害があるため、開始を決めるときに感染の見込みを評価することが重要とし、関連する検査結果が出るまで、あるいは評価が進むまでの数時間、抗菌薬の開始を遅らせても転帰は悪化しないとする。培養の結果が確定したら、狭域化や中止を行うとする[2]。J-SSCG 2024は、敗血症・敗血症性ショックと診断したら抗菌薬はできるだけ早く始めるべきとしつつ、「1時間以内」という目標時間を設けることには反対を提案する(GRADE 2C)[20]。
12.解熱するか:HEATと各指針
研究結果HEAT試験は、既知または疑いの感染があり38℃以上の発熱があるICU患者700例を、アセトアミノフェン1 gの静注を6時間ごとに投与する群とプラセボ群に割り付けた。28日までのICU非滞在日数は中央値23日(四分位範囲13〜25)対22日(12〜25)で有意差はなく(差0日、96.2%CI 0〜1、P=0.07)、90日死亡は15.9%(55/345)対16.6%(57/344)だった(RR 0.96、95%CI 0.66〜1.39)[10]。
研究結果昇圧薬・人工呼吸・鎮静を要する発熱した敗血症性ショック200例の無作為化試験では、48時間の体表冷却(目標36.5〜37℃)で、12時間の時点で昇圧薬を50%減量できた割合が54%対20%(絶対差34%、原著の表記で95%CI −46〜−21)と多かったが、48時間の時点では72%対61%で有意差はなかった(絶対差11%、原著の表記で95%CI −23〜2)。ショックからの離脱は86%対73%(絶対差13%、95%CI 2〜25)、14日死亡は19%対34%(絶対差−16%、95%CI −28〜−4)だった[21]。本稿の解釈単一の試験で、対象は昇圧薬・人工呼吸・鎮静を要する患者に限られる。SCCM/IDSAとJ-SSCG 2024は、この結果を定型的な解熱の推奨には広げていない(次段落)。
指針SCCM/IDSAは、体温を下げること自体を目的とした解熱薬の定型的な使用を避けることを提案する(弱い推奨、中等度の確実性)。指針が参照した、神経系の重症患者を除く13の無作為化試験(1,963例)の系統的レビュー・メタ解析では、発熱の治療は28日死亡を改善しなかった(11試験・1,745例、RR 1.03、95%CI 0.79〜1.35)。一方、体温を下げて楽になることを重視する患者では、非薬物的な方法より解熱薬を使うことを提案する(弱い推奨、低い確実性)。神経損傷後や心停止後の患者では理論上の利益が危険を上回るかもしれないが、定型的な使用を支持する根拠は乏しいとしている[1]。J-SSCG 2024も、発熱した敗血症患者に解熱療法を行わないことを提案する(GRADE 2C)[20]。
本稿の解釈外傷ICUでは、①頭部外傷などで二次性脳損傷の危険がある患者は平熱管理の対象として別に考える、②それ以外の患者では熱を下げること自体を目標にせず、苦痛・頻脈・酸素需要の増加が問題になるときに解熱薬を使う、③解熱で熱型が隠れても感染の検索は続ける、と整理できる。
指針の比較表
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| 指針・文書 | 対象 | 発熱の扱いの要点 | 推奨の強さ・確実性 | 注意 |
|---|---|---|---|---|
| SCCM/IDSA 2023[1] | 重度の免疫不全を除く成人ICU患者の新規発熱 | 38.3℃以上を発熱。胸部X線、血液培養2セット以上、中心静脈カテーテルからの同時採取、膿尿時の尿培養、術後の原因不明の発熱にCT、PCT/CRPは見込みが低〜中等度のとき。解熱薬の定型的使用を避ける | GRADE。推奨はすべて弱い。ほかにベストプラクティス声明9 | 外傷に限った推奨ではない。解熱のメタ解析は神経系の重症患者を除外 |
| AAST 2024[2] | 外科系ICUの患者 | 38.3℃超を発熱、39.5℃超を高熱。発熱だけで気道・尿・血液の培養を出さない。数時間の開始の遅れは許容。PCTは外傷では有用性が限られる | 専門家の合意文書(推奨の強さの表示なし) | 系統的レビューではない。熱型の目安は検証された閾値ではない |
| ESICM/NACCS 2024[5] | 重症頭部外傷とICP管理を要する中等症頭部外傷 | 37.5℃超を発熱。連続した深部体温測定。中枢性発熱もICPにかかわらず36.0〜37.5℃の平熱管理で治療 | 修正デルファイ法の合意。深部体温の連続測定は強い合意(100%・94%)。中枢性発熱の平熱管理と、平熱管理の第1・2段階への追加は中等度の合意(各83%) | 無作為化試験に基づくGRADEの推奨ではない。要旨の「strongly recommended」は合意率83%(中等度)の項目を指す |
| J-SSCG 2024[20] | 敗血症・敗血症性ショック | 解熱療法を行わないことを提案。PCTを抗菌薬中止の指標に提案。血液培養は抗菌薬前に2セット以上 | 解熱 2C、PCT 2A、血液培養 GPS | 外傷後の非感染性発熱や頭部外傷は対象外 |
| 日本輸血・細胞治療学会[17][19] | 輸血を受ける患者 | 輸血開始後38℃以上、または1℃以上の上昇を発熱とする。副反応歴がなければ前投薬のアセトアミノフェンを使わないことを考慮 | 前投薬 2C(歴あり 2D) | 発熱性非溶血性反応の時間枠は国内資料で本稿では未確認 |
根拠の比較表
数値は抄録(HEAT、Stein、Mavros、Mackowiak、Holzapfel、Schortgen、Circiumaru、Rabinstein、Stocchetti、Thompson)または公開本文(SCCM/IDSA、AAST、AlRawahi、ESICM/NACCS)で確認できた範囲に限った。
| 出典(年) | デザイン | 対象 | 介入・比較/評価 | 主な結果 | 限界と診療への意味 |
|---|---|---|---|---|---|
| Circiumaru(1999)[3] | 前向き観察(1施設、4か月) | 一般ICU 100入室(93例) | 発熱の頻度・原因・時期 | 発熱70%。感染性と非感染性がほぼ同数。多くは入室1〜2日以内に開始。5日超の発熱16例中13例が感染 | 外傷に限らない小規模研究。早期の発熱は非感染性が多く、遷延は感染を疑う |
| Rabinstein(2007)[4] | 前向き観察 | 神経ICUの発熱93例(培養で精査) | 非感染性発熱の頻度と予測因子 | 非感染性33%。入室72時間以内の開始が感染陰性を予測(p=0.01) | 外傷に限らない。時期は事前確率の目安 |
| Stocchetti(2002)[11] | 後ろ向き観察(3施設) | 重症頭部外傷110例 | 受傷後1週の発熱 | 発熱80例(73%)。薬物の解熱で0.58℃低下、CPPは6.5 mmHg低下 | 後ろ向き。解熱薬の効果は小さくCPP低下に注意 |
| Thompson(2003)[15] | 後ろ向き観察(1施設) | 重症頭部外傷 | 中枢性発熱の予測因子 | びまん性軸索損傷OR 9.06(0.99〜82.7)、前頭葉損傷OR 6.68(1.1〜39.3) | 信頼区間が非常に広い。頻度は抄録で未確認 |
| Mavros(2011)[12] | 系統的レビュー(異質性のため正式なメタ解析なし) | 8研究・術後998例 | 無気肺と早期の術後発熱 | 関連を示したのは1研究。診断オッズ比1.40(0.92〜2.12) | 外傷以外の手術。無気肺で早期の発熱を説明しない |
| Stein(2000)[7] | PIOPEDの解析 | 血管造影で確認した肺塞栓でほかに原因のない311例 | 発熱の頻度 | 14%(43例)に発熱。微熱は珍しくなく、高熱はまれ | 外傷に限らない。原因の判定は後ろ向き |
| Mackowiak(1987)[6] | 症例の分析 | 51エピソード(2病院)と文献97エピソード | 薬剤熱の臨床像 | 比較的徐脈は少数、熱型は特徴なし、皮疹・好酸球増多は少ない | 古い症例集積。ICUの頻度は分からない |
| Holzapfel(1999)[13] | 無作為化試験 | 経鼻挿管の人工呼吸399例 | 発熱時の副鼻腔CTによる系統的探索 対 なし | 1か月VAP 34%対47%(RR 0.61、0.40〜0.93)。2か月死亡36%対46%(RR 0.71、0.52〜0.97) | 経鼻挿管の患者に限る。死亡への効果は著者も確認が必要とする |
| AlRawahi(2019)[9] | 系統的レビュー(統合せず) | 19研究・外傷4,146例 | 初期PCTと転帰 | 全研究でISSと相関。12/16研究で後の敗血症と関連。7日以降の再上昇が敗血症と関連(2研究) | 研究間の異質性が大きい。予後の指標で、感染の診断精度ではない |
| HEAT(2015)[10] | プラセボ対照の無作為化試験 | 感染(疑い)で38℃以上のICU患者700例 | アセトアミノフェン1 g静注6時間ごと 対 プラセボ | ICU非滞在日数23日対22日(P=0.07)。90日死亡15.9%対16.6%(RR 0.96、0.66〜1.39) | 外傷・頭部外傷に特化していない。解熱の定型的使用を支持しない |
| Schortgen(2012)[21] | 無作為化試験(多施設) | 発熱した敗血症性ショック200例(昇圧薬・人工呼吸・鎮静下) | 体表冷却48時間 対 なし | 12時間の昇圧薬50%減量54%対20%(48時間では72%対61%で有意差なし)。14日死亡19%対34% | 1試験。長期の死亡は抄録で未確認 |
| SCCM/IDSAが参照したメタ解析(2023年の指針)[1] | 系統的レビュー・メタ解析 | 神経系を除く重症患者1,963例(13試験) | 発熱の治療 対 治療なし | 28日死亡RR 1.03(0.79〜1.35、11試験・1,745例) | 神経系の重症患者は含まれない |
評価時点:HEATの主要評価は無作為化から28日までのICU非滞在日数で、死亡は90日。Schortgenは12時間と48時間の昇圧薬減量、14日死亡。Holzapfelは1か月のVAP(Kaplan-Meier推定)と2か月の死亡。SCCM/IDSAのメタ解析は28日死亡と院内死亡。Stocchettiは受傷後1週間。CirciumaruとRabinsteinは入室中の発熱である。
日本で実施するとき
解熱薬の量:海外試験と国内の添付文書は違う
指針国内の静注用アセトアミノフェン(アセリオ静注液1000mgバッグ)の効能は「経口製剤及び坐剤の投与が困難な場合における疼痛及び発熱」である。発熱に対する成人の用量は1回300〜500 mgを15分かけて静注、投与間隔は4〜6時間以上、原則1日2回まで、1日最大1,500 mgとされる。疼痛では1回300〜1,000 mg、1日総量4,000 mgまで(体重50 kg未満では1回15 mg/kg、1日60 mg/kgまで)と別に定められている。アセトアミノフェンを含む他の薬剤との併用は、過量投与による重篤な肝障害のおそれから避けるよう警告されている[22]。本稿の解釈HEATの「1 gを6時間ごと」は国内の発熱の用量を超えるため、試験の結果を国内の処方にそのまま移さない。鎮痛目的でアセトアミノフェンを定時投与している外傷患者では、解熱目的の追加で重複しないよう総量を確認する。
国内の指針と制度
- 指針日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024):血液培養は抗菌薬の前に少なくとも2セット(GPS)、感染源の推定に応じた画像検査(GPS)、PCTを抗菌薬中止の指標とすること(2A)、発熱した敗血症患者に解熱療法を行わないこと(2C)を示す[20]。外傷後の非感染性発熱は対象ではない。
- 指針輸血の発熱:日本輸血・細胞治療学会の症状項目(38℃以上、または輸血前からの発熱では1℃以上の上昇)と、有害事象対応ガイドライン改訂第2版の前投薬の推奨を用いる[17][19]。
- 未確認JATEC(外傷初期診療ガイドライン改訂第6版)と、日本脳神経外傷学会の「頭部外傷治療・管理のガイドライン」の本文は本稿で確認しておらず、ICUの発熱評価や頭部外傷の体温目標についての記載は未確認である。
- 未確認プロカルシトニン定量の診療報酬上の算定要件(対象患者や回数の制限)は、本稿では公式資料で確認できていない。施設の医事担当に確認する。
- 未確認平熱管理に用いる体温管理装置の国内の承認範囲と保険上の扱いは、機器ごとに異なり、本稿では確認していない。
院内の手順に落とすとき(本稿の整理)
本稿の解釈外傷ICUの発熱時の手順として、①受傷・手術からの日数、輸血・薬剤の開始日、デバイス(中心静脈・尿道カテーテル、ドレーン、経鼻チューブ)の留置日を一覧にする、②全身の診察(創、ドレーン排液、腹部、下肢、カテーテル刺入部)と胸部X線を行う、③敗血症を疑う所見があれば血液培養2セット以上を採って抗菌薬と感染源の処置を始める、④安定していれば症候群に応じた検体だけを採り、数時間から1日の範囲で再評価する、⑤感染が見つからなければ薬剤・血栓・輸血・その他を順に検討する、⑥頭部外傷では並行して平熱管理を行う、という流れが考えられる。これは指針の推奨を組み合わせた本稿の整理で、この手順自体の効果は検証されていない。
まだ分からないこと
- 外傷患者に限って、受傷後の日数ごとに感染性・非感染性の発熱の割合を示した前向き研究は、本稿の検索では見つからなかった。受傷後早期の非感染性発熱の頻度は、一般ICU・神経ICU・術後患者のデータから外挿している。
- 頭部外傷で、発熱を防ぐ平熱管理が機能転帰を改善するかを直接示した無作為化試験は、本稿の検索では見つからなかった。ESICM/NACCSの推奨は専門家の合意である。
- 中枢性発熱の診断基準は統一されていない。熱型・時期・画像所見の組み合わせの診断精度は、外傷患者では十分に検証されていない。
- 外傷後のPCTは損傷そのもので上がる。感染の診断に使える外傷特有のカットオフ値や、PCTに基づく抗菌薬中止の外傷患者での安全性は確立していない。
- 頭部外傷のない外傷患者で解熱が転帰を変えるかを検証した試験はない。HEATとSchortgenは感染(疑い)の患者が対象である。
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文献
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- テルモ株式会社. アセリオ静注液1000mgバッグ 電子添文(2026年8月改訂、第4版). KEGG MEDICUS https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067788(2026年9月26日閲覧)
医学的内容の最終確認日・確認範囲
文献ごとの確認範囲を開く(最終確認日:2026年9月26日)
医学的内容の最終確認日:2026年9月26日(著者確認)。文献照合日:2026年9月26日(日本時間)。文献の検索・照合は同日に行った。NCBI BioC(PubMedの抄録)、Crossref、出版社・学会・公的機関の公式ページ、KEGG MEDICUSを直接開いて確認した。Europe PMC、OpenAlex、Semantic Scholar、NCBIの一部には接続できない時間帯があった。数値・用量・適用条件を含む医学的内容は、2026年9月26日に著者(医師)が確認した。
- 本文を確認:SCCM/IDSA 2023(IDSA公式ページの全文。推奨文、解熱と診断精度のメタ解析の数値。表の一部は未確認)、AAST 2024(出版社の公開本文とPDF。定義、各質問への回答、表1・表2の項目名)、ESICM/NACCS 2024(出版社の公開本文とPMCの本文。表1の項目ごとの合意率を含む)、AlRawahi 2019(出版社の公開本文。抄録と考察の一部)、J-SSCG 2024英語版(出版社の公開本文。CQ1-4、CQ1-7、CQ2-2、CQ2-11、CQ6-4の推奨文とCQ2-11の根拠の要約)、IDSA/SHEA 2017(出版社の本文で診断の推奨のみ)。
- 抄録のみ確認:HEAT、Stein 2000、Mackowiak 1987、Mavros 2011、Baguley 2014(NCBI BioC)、Holzapfel 1999、Schortgen 2012(Crossrefの抄録)、Circiumaru 1999、Stocchetti 2002(出版社ページの抄録)、Rabinstein 2007、Thompson 2003(出版社ページの抄録)。本文中の数値は抄録にある範囲に限った。
- 公式資料を確認:NHSN Hemovigilance Module Surveillance Protocol(CDCのPDF)、日本輸血・細胞治療学会の資料2・資料4・輸血有害事象対応ガイドライン改訂第2版(学会のPDF)、アセリオ静注液1000mgバッグの電子添文(KEGG MEDICUS、2026年8月改訂第4版)。
- 未取得:SCCM/IDSA 2023の表(非感染性の原因の一覧)、Thompson 2003とRabinstein 2007の本文、JATEC改訂第6版と頭部外傷治療・管理のガイドラインの本文、プロカルシトニン定量の算定要件の公式資料。
- 訂正・撤回:AAST 2024とHEATはCrossrefで訂正・撤回の登録なし(2026年9月26日確認)。そのほかの文献は、アクセス制限により訂正・撤回の有無を個別には確認できていない。
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- 2026年9月26日(著者確認):著者(医師)が数値・用量・適用条件を含む医学的内容を確認した。確認日の表記を更新した。あわせて、確認範囲の記載を読者向けの表現に改め、関連記事と分野の一覧へのリンクを加えた(医学的内容は変えていない)。
- 2026年9月26日(改訂):全面的に書き直した。主な変更は次のとおり。(1)SCCM/IDSA 2023の指針(推奨文と強さ、診断精度・解熱のメタ解析の数値)を加え、AAST 2024と並べて検査の選び方を比較した。(2)受傷後早期の非感染性発熱の頻度と時期(Circiumaru、Rabinstein、Stocchetti)、無気肺と発熱の関係(Mavros)を加えた。(3)手術部位・VAP・カテーテル関連・副鼻腔炎・無石胆嚢炎・C. difficileの節、頭部外傷の中枢性発熱とPSH、ESICM/NACCS 2024の平熱管理、薬剤熱、VTE、輸血反応(NHSNと国内の定義)の節を新設した。(4)PCTの使いどころ(SCCM/IDSA、AAST、外傷の系統的レビュー、J-SSCG 2024)と、解熱の是非(HEAT、Schortgen、SCCM/IDSA、J-SSCG 2024)を数値と限界とともに示した。(5)「日本で実施するとき」に静注アセトアミノフェンの国内用量とHEATの用量の違い、国内の指針、未確認の事項を明記した。(6)文献を1件から22件にし、DOI・PMIDのリンクと文献ごとの確認範囲を付けた。理由:現行版は要点と表が1文献の要約にとどまり、主題に挙げた中枢性発熱・薬剤熱・血栓の根拠、主要研究の数値、国内での適用が欠けていたため。
- 2026年9月26日(初回公開):AAST 2024の合意文書(1文献)をもとに、ICUの発熱の定義(38.3℃超)、感染は約半数であること、発熱だけで気道培養を出さないこと、中枢性発熱は除外診断であること、敗血症を伴う感染疑いでは抗菌薬を遅らせないことを短く整理した版として公開。
本記事は医療従事者への教育および一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。実際の診療では、各施設のプロトコルおよび最新の診療ガイドラインをご確認ください。
利益相反:本記事に関連して開示すべき利益相反はありません。


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[…] 扱わない範囲:小児、熱傷の感染管理、戦傷、動物咬傷の詳細、待機手術の手術部位感染予防、骨折関連感染の治療。感染症ごとの第一選択薬、腎機能に応じた用量、薬物血中濃度モニタリング(TDM)は扱わない。発熱の鑑別は外傷後の発熱、VAPの予防策は重症外傷の人工呼吸・ARDSで扱う。本文の薬剤名は指針や試験に書かれた例であり、実際の選択は施設の感受性データ(アンチバイオグラム)、アレルギー、腎機能、国内の電子添文で決める。 […]
[…] 扱わない範囲:小児の頭部外傷の低体温療法、熱傷、熱中症、寒冷環境での偶発性低体温症そのもの(山岳・水難事故、体外循環による復温)、脊髄損傷の冷却、発熱の原因の鑑別(外傷後の発熱の記事)、加温装置の機種ごとの流量と操作(外傷麻酔の記事)、外傷性心停止の蘇生手技そのもの。 […]