頸部穿通性外傷|Zone分類・ハードサイン・CTAと手術判断

頸部穿通性外傷:気道・血管・食道を見逃さない。

頸部穿通性外傷(刺創・銃創)で広頸筋を越える創は、気道と出血が切迫していれば画像を待たずに手術室へ向かい、安定していれば創の高さ(zone)ではなく身体所見とCT血管造影(CTA)で評価する考え方(no-zone approach)が広がっている[1][2]。ただしCTAだけでは食道損傷を見逃し得る。本稿は成人を対象に、気道確保、一時止血、CTAの精度と限界、食道の追加評価、zone分類の今の使い方、国内で行うときの注意を、指針と原著の数値で整理する。

  • 頸部穿通性外傷
  • no-zone approach
  • CTA
  • 食道損傷

医療従事者向け:本記事は教育および一般的な医学情報の提供を目的としています。個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。

2026年10月20日改訂・著者確認済み:既存のエビデンスレビューに、DSTC、外傷外科手術スタンダード、JETECの頸部外傷の章を統合。no-zone approachと手術解剖・手術原則を分けて整理した。手技の選択、血管内治療、抗血栓療法などは施設体制と患者状態に応じて個別に判断する。

2026年10月21日・図説追記(公開):2026年AAST–WSES頸部血管損傷ガイドラインのhard/soft signsに基づく比較図、初療分岐フロー、Zone I–IIIの概念図、乳様突起先端〜下顎角後方の立体解剖・創路別リスク表を追加。外科解剖の根拠として頭蓋底・耳下腺・乳突部に関する原著を新たに照合した。本追記はAIを用いた編集補助を含み、医学的内容の最終著者確認は未実施。旧稿の最終著者確認日は2026年10月20日。

目次

まず押さえる要点

  1. 最初の分岐は画像ではなく、気道と循環。WTA 2013のアルゴリズムは、ハードサイン(気道の障害、大量の皮下気腫または創からの気泡、拡大・拍動する血腫、活動性出血、ショック、神経脱落、吐血)か循環不安定があれば、不安定な気道の確保のほかは手術室への移動を遅らせず、活動性出血には移動中にタンポナーデを試みるとした[3]。ただし、ハードサインがないことは損傷の否定にならない。2026年の単施設研究では、重大な損傷に対するハードサインの感度は55.4%だった[4]。
  2. 安定例はzoneではなく所見で振り分ける。2施設の前向き研究(453件)では、所見のない41.7%を観察して見逃しはなく、ソフトサインの225件に行ったCTAは、臨床的に重要な損傷に対して感度100%、特異度97.5%だった(損傷があったのは22人で、信頼区間の記載はない)[5]。金属片などのアーチファクトで判定できなければ、カテーテル血管造影と内視鏡で評価する[1]。
  3. CTAが陰性でも、食道の評価を終えないことがある。7研究の系統的レビューでは、嚥下造影または手術で診断された食道損傷26件のうち5件(19%)を、CTAが初回に見逃していた[6]。経路が食道に近い、周囲に気体がある、嚥下時痛や吐血があるなど疑いが残れば、内視鏡や食道造影を加える[3][1]。EAST 2008は、修復が24時間を超えて遅れると合併症が増えるとして、速やかな精査を求めた[7]。
  4. 気道は経口挿管できることが多いが、外科的気道を同時に準備する。レベルI外傷センター1施設の救急外来で気道確保を要した58例の後ろ向き研究では、救急医が最初に行った迅速導入気管挿管(RSI)が39例全例で成功した(著者らがRSIを勧めた対象は気道確保に習熟した医師)[8]。総説は、可能なら外科医がすぐ介入できる手術室で確保し、外科的気道確保への閾値を低く保つよう勧めている[1]。
  5. zone分類は捨てずに、使い道を変える。損傷が確認された298例では外創と内部損傷のzoneが一致しない例が23.5%(判定不能17.4%)あり[9]、銃創の内部損傷119件では45%が外創の高さと一致しなかった[10]。zoneは検査の要否を決める道具というより、CTAの撮影範囲と手術の展開を考える目印として残る(WTA 2013もzoneごとに撮影範囲と展開を分けている)[3]。

対象と扱わない範囲

対象:成人の頸部穿通性外傷(刺創・銃創)のうち、広頸筋を越える創[3][1]。初療での振り分け、気道と一時止血、画像・内視鏡による評価、手術または観察への引き継ぎまでを扱う。

扱わない範囲:

1.最初の分岐:ハードサインと循環

CLINICAL SIGNS · 2026 AAST–WSES

頸部外傷のハードサイン/ソフトサイン

血管損傷の臨床所見を分類。徴候の強さと循環・気道の安定性を併せて判断する。

HARD SIGNS (危険徴候)

  • 活動性の出血
  • 拡大する血腫
  • 損傷部位の血管雑音・スリル
  • 蘇生に反応しないショック
  • 大量の喀血・吐血
  • 創からの気泡漏出
  • 進行する脳卒中症状
  • 大量の皮下気腫

迅速な気道・止血対応と緊急介入を検討

SOFT SIGNS (疑いを示す所見)

  • 静脈性のにじむ出血
  • 拡大しない血腫
  • 嗄声(dysphonia)
  • 嚥下障害(dysphagia)
  • 少量の喀血
  • 皮下気腫(大量ではないもの)

安定例ではCTAなどの追加評価が中心

出典:Kobayashi et al., J Trauma Acute Care Surg 2026, Table 2 [42]をもとに独自に日本語整理。「嗄声=必ずhard sign」ではない。ただし進行性気道閉塞や呼吸不全などは分類にかかわらず緊急対応する。分類は文献によって異なる。

WTA 2013は、広頸筋を越えた頸部穿通性外傷に対してWTAが推奨する管理アルゴリズムである。ハードサインまたは循環不安定のある患者は、不安定な気道の確保(経口挿管に失敗すれば外科的気道)のほかは遅らせずに速やかに手術室へ向かい、活動性出血には移動中にタンポナーデを試みるとした[3]。ハードサインの定義は文献で少しずつ異なり、WTAは神経脱落を含め、後述の前向き研究は雑音・振戦と喀血を含めている[3][5]。ソフトサインには、小さく拡大しない血腫、出血や低血圧の病歴、静脈性のにじむ出血、脈拍・収縮期血圧の差、嗄声、嚥下時痛、嚥下障害、軽い皮下気腫、少量の吐血・喀血、直接損傷を示す局所の神経症状が挙げられる[1]。

ハードサインがあれば損傷の可能性は高い。前向き研究では、ハードサインのあった8.6%のうち89.7%に臨床的に重要な損傷があった[5]。一方、8年間の後ろ向き研究では、ハードサインで手術室へ向かった82例のうち治療的な探索だったのは59例(72%)で、残る23例は治療を要する損傷のない探索(陰性探索)だった[11]。

反対に、ハードサインがないことで損傷を否定することはできない。310例の単施設後ろ向きコホート(2013〜2025年)では、重大な損傷(確定した血管または気道消化管の損傷)が92例(29.7%)にあり、ハードサインの感度は55.4%(95%CI 44.7〜65.8%)、特異度は88.1%(同83.0〜92.1%)だった。重大な損傷は、所見なしで97例中5例、ソフトサインのみで136例中36例、ハードサインありで77例中51例にみられた[4]。著者らは、単施設で内部検証だけの探索的な結果であり、実践に用いる前に外部検証が必要としている。

ハードサインがあっても、循環の安定した患者にCTAを先に行った報告もある。レベルI外傷センター1施設で成人のzone II穿通性外傷を対象とした4年間の後ろ向き研究では、183例のうちハードサインのある安定例23例に緊急探索の代わりにCTAを行い、CTAの感度は83%、特異度は100%だった。陰性探索は0件(WTAの手順どおりなら18件)で、見逃しはCTAを用いた方法で1件、WTAの手順どおりなら0件(p=0.323)だった。この1件はCTA陰性の後に血腫が拡大した偽陰性である[12]。例数が少なく、有意差がないことは見逃しが増えないことの証明ではない。総説も、ハードサインのある患者は原則として直ちに探索し、初期蘇生で循環が正常化した患者に限って、手術計画のためにCTAを考慮し得るとしている[1]。

刺さったままの刃物などは、抜いた瞬間に圧迫が解けて出血し得る。止血の準備が整った手術室で抜去し、初療室で創を指や器具で深く探らない(本稿の見解)。

2.気道:経口挿管できることが多いが、外科的気道を同時に準備する

レベルI外傷センター1施設で1993〜1996年に救急外来で評価された頸部穿通性外傷748例のうち、82例(11%)が直ちに気道確保を要した。院外での心停止・挿管例を除く58例で、救急医が最初の方法として行ったスキサメトニウムによるRSIは39例全例で成功し、昏睡の5例は筋弛緩なしで経口挿管、2例は緊急気管切開を受けた。耳鼻咽喉科医による最初のファイバー挿管は12例中3例で失敗し、3例ともRSIで挿管できた。最終的に47例(81%)が経口挿管で、全例成功した[8]。

ただし単施設の後ろ向き研究で、方法は無作為に割り付けられていない。著者らも、RSIを最初の方法として考慮すべきとした対象を、気道確保に習熟した医師に限っている[8]。別の施設の11年間19例では、覚醒下挿管とRSIが8例ずつ、3例は挿管されず、方法は症例ごとに異なった[13]。方法の選び方について、2つの総説は次のように整理している。

  • 可能なら、外科医がすぐ介入できる手術室の最適な条件で確実な気道を確保する。気道を維持できない患者でも、多くは経口挿管できる。外科的気道確保への閾値は低く保つ[1]。
  • 創から気管損傷が見え、患者が覚醒していれば、座位にして吸引し、速やかに手術室へ運ぶ。管理された環境で、チューブが損傷部を越えるのを直接見ながら挿管できることがある[1]。
  • 自発呼吸を残した覚醒下または鎮静下の挿管は、陽圧換気を避け、(十分に前酸素化されていれば)酸素飽和度が下がるまでの時間を稼ぎ、気道をよく観察できる。気管支ファイバーを使えば損傷部より先にチューブを進められる。損傷が大きい、または声門下にある場合は、外科的気道が最初の選択になり得る。気道の操作で血腫が動き、出血や浮腫が増えることもある[14]。

いずれも比較試験にもとづく推奨ではない。挿管を担う医師と外科的気道を担う医師を最初に決め、失敗したときの切り替えを共有しておく(本稿の解釈)。導入薬と循環の管理は外傷麻酔の実践:出血性ショックの導入から止血までをエビデンスで考えるを参照。

3.一時止血:圧迫とFoleyバルーンタンポナーデ

WTA 2013は、直接圧迫で活動性出血を抑えられなければ、バルーンカテーテルによるタンポナーデを試みることが有益な場合があるとした[3]。この方法の成績として、南アフリカ・ケープタウンの同じ病院から次の2つの報告がある。

  • 2006年:1年間に入院した頸部穿通性外傷220例のうち18例に用い、17例で止血できた。3例は血管造影で異常があり全例手術、13例は平均72時間(48〜96時間)で抜去でき、1例は抜去後に出血して緊急手術となった[15]。
  • 2020年:22か月間の628例のうち95例(15.2%)に用いた。90.5%が刺創で、81.1%は同院到着前に挿入されていた。CTAは92.6%に行われ、29例に34の動脈損傷があった。出血が続いたのは3例で止血成功率は97%、頸部探索は13例(13.7%)だった。主要な動脈損傷のない72例は48〜72時間で抜去し、2例が抜去時に出血した。28例(29.5%)に36件の合併症があり、頸部からの制御できない出血で1例が死亡した[16]。

著者らは、静脈損傷と軽い動脈損傷はこの方法で最終的に治療できるとした[16]。ただし他の方法と比べた研究ではなく、刺創が大半を占める一施設の成績である。バルーンは時間を稼ぐ手段で、抜去は再出血に対応できる場所と体制で行う(本稿の解釈)。

4.安定例:zoneではなく所見とCTAで振り分ける

頸部穿通性外傷:初療の意思決定フロー

循環・気道の安定性を第一に判断する。ZoneだけでCTAや手術適応を決めない。

頸部穿通創を疑う → Primary survey/出血制御/気道評価
↓
循環・気道が不安定か? 制御不能な出血、拡大血腫などがあるか?

YES | 不安定・切迫した危険

緊急気道確保・蘇生・止血を並行。CTのために手術/血管内治療への移行を遅らせない。

外科・麻酔・IVR/ハイブリッド対応を直ちに招集。創内を盲目的に鉗子で探らない。

NO | 初期蘇生で安定

soft signs、深い創・危険な創軌道、骨破綻などがあればCTAで血管と創路を評価。

hard signsが残る安定例は緊急の専門科判断が必要。直ちに介入を要さない選択例で治療計画用CTAを考慮。

↓
CTA後の分岐:主要血管損傷 → 血管外科・脳神経外科・IVRと外科/血管内治療を選択。気道・咽頭・食道損傷が疑われる → 内視鏡・食道造影などを追加。骨折が静脈洞に近接 → 必要に応じ骨条件CT/CTV。
重要:徴候がなく低リスクと判断された一部の患者では厳重観察も許容される。ただし、乳様突起付近の深い創などで創路が分からない場合に、所見が乏しいことのみで損傷を否定しない。
本図はWTA 2013、AAST–WSES 2026、ACR 2017の原則を基にしたPTD ZEROの独自作図。各施設の救急・手術・IVR体制に合わせて判断する。[3][42][46]

zoneに頼らず身体所見とCTAで評価する考え方は、2013年の総説が「No Zone」という枠組みとして示した[17]。中心となる前向き研究は次のとおりである[5]。

  • 対象と方法:レベルI外傷センター2施設(2009年1月〜2011年7月)の頸部穿通性外傷453件に構造化した身体診察を行い、ハードサインは探索、所見なしは観察、ソフトサインは多列検出器CTAとした。参照基準は、手術、臨床経過、実施された場合の血管造影・気管支鏡・食道造影・食道鏡を合わせたもの。
  • 結果:ハードサインは8.6%。所見なしの41.7%は観察され、見逃しはなかった(平均追跡2.6日)。残る225件(49.7%、刺創61.3%、銃創37.8%)にCTAを行い、22人に28の損傷(うち食道3、気管3)を認め、偽陽性は5人だった。陰性194件に遅れて見つかった損傷はなかった(平均追跡5.5日)。CTA群の外創は、複数のzoneにまたがるものが28.9%だった。
  • CTAの精度:臨床的に重要な損傷に対して感度100%、特異度97.5%。4人(1.8%)はアーチファクトで判定できず、うち1人は血管造影で椎骨動脈損傷が見つかった。

広頸筋を越えた成人337例の8年間の後ろ向き研究でも、ソフトサインの156例のうちCTAを行った121例の10%(12例)に所見があった一方、最初に探索した35例で治療的だったのは14例(40%)だった。無症状の99例ではCTAを行った79例の4%(3例)に所見があったが、治療的探索を要した例はなかった。著者らは、zoneにかかわらず身体所見でCTAか探索かを決めるべきと結論した[11]。

統合研究も同じ方向を示す。2000〜2017年の13研究(前向き5、後ろ向き8)の系統的レビューでは、CTAの感度は83〜100%、特異度は61〜100%、陰性的中率は90〜100%で、ソフトサインのある安定例での感度は89.5〜100%、ハードサインのある安定例では78.6〜90%だった[18]。9つのコホート研究の系統的レビューも、CTAは感度・特異度が高く陰性探索を減らすとした[19]。2つのレビューとも、抄録に研究を統合した推定値の記載はない。血管損傷に限ると、頸部外傷でCTAを血管造影などと比べた9研究・693例のメタ解析で、感度97%(95%CI 77〜100%)、特異度99%(同93〜100%)だった[20]。

限界と、反対方向の結果もある。

  • 陰性探索が減るとは限らない:オーストラリアの成人外傷センターの204例(2008〜2018年)では、CTAの利用が55%から94.1%に増え、手術は減る傾向だったが、陰性探索の明らかな減少はなかった[2]。
  • アーチファクト:金属片、歯科用アマルガム、整形外科の金属でCTAの評価は制限され、散弾銃の損傷ではとくに問題になる。判定できなければ、カテーテル血管造影と内視鏡で精査する[1]。
  • 所見のない患者:前向き研究の観察例に見逃しはなく[5]、総説は、得られている根拠は全体として救急外来からの帰宅を支持するとした[1]。一方、前述の310例のコホートでは、所見なしの97例中5例に重大な損傷があった[4]。CTAと食道造影を受けた無症状の91例を調べた南アフリカの研究では、31例(34%)に画像上の異常があったが、気道消化管損傷を疑った精査は18件中17件(94%)が陰性で、介入は顔面動脈の塞栓1例だけだった(著者らは、多くは介入を要する損傷ではなかったものの、CTAと食道造影はスクリーニングとして有用と結論した)[21]。前向き研究の観察は平均数日の追跡を伴っており、帰宅させる場合も再受診の条件を具体的に伝える(本稿の解釈)。

no-zoneの成績は、繰り返し診察できる人員、24時間撮影できるCTA、悪化したときにすぐ手術や内視鏡へ移れる体制を前提にしている(本稿の解釈)。

5.食道・咽頭:CTAが陰性でも評価を終えない条件

気道消化管の損傷は、身体所見でもCTAでも見落としやすい。WTA 2013は、身体所見は動脈損傷に対して感度が高い一方、気道消化管損傷に対する感度は低いとした[3]。CTAは損傷そのものを直接示さず、気管や食道の周囲の気体などの間接所見しか示さないことが多い[1]。CTAの精度は研究によって異なる。

  • 系統的レビュー(2021年):2020年8月までの文献から、偏りのリスクが中等度〜高い7研究・877例(気道消化管損傷の有病率13.4%)を統合し、CTAの感度は92%(95%CI 85〜97%)、特異度は88%、陽性尤度比12.2(同4.6〜32)、陰性尤度比0.14(同0.05〜0.37)だった。嚥下造影または手術で診断された食道損傷26件のうち5件(19%、95%CI 8.1〜38.3%)は、CTAで初回に見逃されていた。著者らは、CTA単独では食道損傷を除外できず、疑いが残れば追加の検査を行うべきと結論した[6]。
  • 別の系統的レビュー(2020年):13研究のうち3研究が、CTAは血管損傷の検出では感度・特異度が高い一方、気道消化管損傷に対する特異度が低いと報告していた[18]。
  • 反対方向の結果:レベルI外傷センター1施設の242例(7〜86歳)では、CTAは気道消化管損傷に対して感度・陰性的中率とも100%で、食道損傷の同定には食道造影より上部消化管内視鏡のほうが有用とみられた[22]。3ページの報告で、抄録から損傷例の数は確認できない。

追加検査について、EAST 2008(zone IIが対象、1966〜2007年の文献)は、手術を要する食道穿孔の除外に食道造影と食道鏡のどちらを用いてもよいとし、修復が24時間を超えて遅れると合併症が増えるため精査は速やかに行うとした(Level 2)[7]。WTA 2013は、経路から気道消化管損傷が疑われれば、食道鏡または食道造影と気管支鏡で評価するとした[3]。総説は、近年のデータでは軟性食道鏡の感度が96〜100%、特異度が92〜100%に達すると要約し、水溶性造影剤による食道造影は食道損傷の15〜22%を見逃し得るとした(後者の根拠は外傷に限らない食道穿孔の研究)[1]。

遅れの害を示すデータは古い。米国34施設の後ろ向き研究(10.5年間、穿通性食道損傷405例)では、手術室に到達した346例のうち術前に検査を行った171例は、直接手術室へ向かった175例より手術までの時間が長く(平均13時間対1時間)、食道関連の合併症が多く(抄録の表記は合併症の件数で74件〔41%〕対32件〔19%〕、p=0.003)、外科系集中治療室の在室日数も長かった(平均11日対7日)。両群の死亡率には有意差がなかった。両群の年齢、ISS、来院時血圧、損傷部位(頸部か胸部か)にも有意差はなかった[23]。ただし群は無作為に分けられておらず、測定されていない違いが結果に影響した可能性は残る(本稿の解釈)。

実務では、CTAの結果に、経路と咽頭・食道との距離、周囲の気体、嚥下時痛・嚥下障害・吐血などの症状を並べて、内視鏡や造影を追加するか、しない理由を記録する(本稿の解釈)。

6.zone分類を今どう位置づけるか

図:Zone I–IIIを骨・軟骨の目印で区切る

高位=Zone III、下顎角〜輪状軟骨=Zone II、胸郭入口部=Zone I

頭蓋底/Skull base
ZONE III

頭蓋底〜下顎角。高位ICA・IJV、外頸動脈枝、耳下腺・顔面神経・頭蓋底近傍。

下顎角/Angle of mandible
ZONE II

下顎角〜輪状軟骨。頸動脈分岐、頸静脈、迷走神経、喉頭・咽頭。

輪状軟骨/Cricoid cartilage
ZONE I

輪状軟骨〜胸骨切痕・鎖骨。総頸動脈近位、鎖骨下血管、気管・食道、胸郭入口部。

胸骨切痕・鎖骨/Thoracic inlet
Zoneは外表上の高さの分類。深部創路は斜め・頭尾方向にも進むため、入口のZone=損傷血管のZoneとは限らない。診断適応を区画だけで決めない「no-zone approach」と両立する。[1][9]

頸部を前面の目印で3つに分けるzone分類は、Monsonら(1969年)とRoonとChristensen(1979年)の報告に由来し、zone Iは胸骨切痕から輪状軟骨まで、zone IIは輪状軟骨から下顎角まで、zone IIIは下顎角から頭蓋底までとされる[1][24][25]。全例探索を行っていたRoonらの報告は、高位・低位の頸部創で手術の展開を計画するために血管造影を用いた[25]。しかし、外創の高さは内部の損傷部位をよく予測しない。

  • 血管または気道消化管の損傷が確認された298例(1施設、2011〜2018年)では、内部損傷が外創と同じzoneにあったのは176例(59.1%)で、70例(23.5%)は一致せず、52例(17.4%)は判定できなかった[9]。
  • 南アフリカの1施設の頸部銃創239例(12年間)では、内部損傷119件の45%(53件)が外創の高さと一致しなかった[10]。
  • 頸部探索を要した55例の前向き研究(イエメン、2020〜2021年)では、22例(40.0%)の損傷が外創と別のzoneにあった[26]。
  • 146例の研究では、ハードサインのある患者で外創と内部損傷の位置の不一致が多かった[27]。総説は、両者が一致するのは60〜80%にとどまると要約している[1]。

それでもzoneが不要になったわけではない。WTA 2013は、症状も損傷の疑いもないzone IIは観察、zone Iは頸部と胸部のCTA、zone IIIは頸部と頭部のCTAと撮影範囲を分け、手術ではzone Iで胸骨正中切開(胸鎖乳突筋前縁切開への延長)や鎖骨上切開(鎖骨頭の切除を伴うことも)が、zone IIIで下顎の亜脱臼・脱臼・切除が必要になり得るとした[3]。EAST 2008はzone IIだけを対象とする指針である[7]。no-zoneは「検査の要否を創の高さで決めない」という意味で、zoneは撮影範囲と手術の展開を考える目印として残る(本稿の解釈)。

7.血管損傷の治療の方向(概略)

WTA 2013の記載を要約する[3]。

  • 総頸動脈・内頸動脈:探索で見つかった損傷は、術前の局所神経所見の有無にかかわらず、結紮より一次修復が望ましいというのが現在の合意である。
  • 頸静脈:多くは非手術で安全に管理できる。大量出血や探索で見つかった場合は、結紮しても影響は小さい。
  • 椎骨動脈:大きな報告の一つでは、約20%が不安定のため緊急手術(結紮や骨蝋による圧迫)を、33%超が塞栓を要した。より新しい報告では、多くが血管内治療で管理されている。
  • zone I・III:zone Iの動脈損傷にカバードステントを用いた成功例はあるが、症例報告と小規模な報告が中心である。到達しにくいzone IIIの動脈損傷は、犠牲にできる血管なら塞栓、開存が必要ならカバードステントで対処し得る。

循環が不安定なまま止血を優先する手術の組み立てはDamage Control Surgery:いつ手術を切り上げ、いつ再建するかを参照。

8.術者のための頸部外科解剖:血管・神経・気道・食道

「no-zone」は初期の手術適応を創の高さだけで決めないという診療戦略である。一方、手術室では損傷部位への安全なアクセス、近位・遠位コントロールの可否、頸部から胸郭入口部への連続性を判断するために、Zone解剖が不可欠である。DSTCの第6章、外傷外科手術スタンダードの頸部損傷、JETECの頸部外傷の記述を、解剖学的な構造を中心に整理した。 [JETEC] [DSTC] [手術スタンダード]

領域解剖学的境界主な危険構造とアクセスの問題
Zone I胸骨切痕・鎖骨付近〜輪状軟骨下縁総頸動脈近位、鎖骨下動静脈、腕頭血管、気管、食道、甲状腺、肺尖・胸膜、胸管(主に左)。鎖骨・胸骨に遮られ、胸骨正中切開・鎖骨上切開等の拡大が必要となり得る。
Zone II輪状軟骨下縁〜下顎角総頸動脈分岐部、内外頸動脈、内頸静脈、迷走神経、喉頭、咽頭、頸部食道。胸鎖乳突筋前縁切開が基本的な展開。
Zone III下顎角〜頭蓋底高位内頸動脈、内頸静脈上部、外頸動脈枝、舌下・顔面・副神経、耳下腺深葉、茎状突起周囲。下顎・頭蓋底のため遠位血管の外科的確保が難しい。

重要なのは外創と深部の損傷を同じZoneと決めつけないこと。創の方向、刃物の深さ、銃創であれば弾道・破片、隣接する胸部・顔面・頭蓋底まで考える。安定例ではCTAの撮影範囲を頭蓋底から胸郭入口部まで十分に設定し、必要に応じ頭部・胸部へ拡張する。頸部だけの狭いスキャンで深部の経路を断定しない。[3][9]

8-1.神経学的所見から損傷部位を推定する

所見想定する障害部位見逃しやすい点
嗄声・発声障害迷走神経、反回神経、喉頭・声帯そのもの声帯損傷、浮腫、内頸動脈周囲の神経損傷を鑑別。嗄声だけで動脈損傷の有無は決められない。
嚥下障害・咽頭反射異常迷走神経、舌咽神経、咽頭・食道神経損傷と気道消化管損傷が併存し得る。
舌突出時の偏位舌下神経(XII)頸動脈分岐部上方・顎二腹筋後腹付近の損傷を考える。
肩挙上不能・肩甲帯の不安定副神経(XI)胸鎖乳突筋後縁から後頸三角を走る部分が特に問題。
顔面筋の麻痺顔面神経(VII)茎乳突孔・耳下腺内の走行を意識し、耳介後方・乳様突起下方の創で確認。
縮瞳・眼瞼下垂など頸部交感神経幹、内頸動脈周囲Horner徴候。内頸動脈解離の存在も鑑別。
上肢麻痺・感覚障害腕神経叢、頸髄鎖骨上・後頸三角への損傷や脊椎損傷を併せて評価。
横隔膜運動低下横隔神経(C3–C5)前斜角筋前面を下行する。胸郭入口部に近い刺創で問題となる。

神経所見は損傷構造の手掛かりであり、それ単独で血管・食道の損傷を除外する道具ではない。初回所見を記録し、鎮静・気管挿管・手術前後で比較する。JETEC p.132の神経所見表を臨床に使用しやすい形に再構成した。 [JETEC]

8-2.下顎角後方・乳様突起の創:Zone IIIの局所解剖

耳介後方から乳様突起先端、下顎角後方にかけては、皮膚・皮下組織の深部に胸鎖乳突筋の乳様突起付着部、乳様突起骨膜がある。前下方には耳下腺尾部・顎二腹筋後腹、より深く内頸動脈・内頸静脈の上部、茎状突起周囲の神経が存在する。顔面神経は茎乳突孔から出た後に耳下腺内を走行するため、耳介後下方の深い損傷で考慮する。表在〜中層には後耳介動脈、後頭動脈、外頸静脈などがあり得る。

乳様突起の骨露出のみから内頸動脈損傷は断定できない。一方、創が前内側へ向かえば高位内頸動静脈・下位脳神経・耳下腺領域、後内側へ向かえば椎骨動脈V3や頭蓋頸椎移行部を含む深部損傷を検討する。骨露出は局所の損傷深度を示すが、正確な創路と血管の位置関係は画像と所見から評価する。後耳介・後頭の動脈と、頭蓋底近傍の大血管を区別することが重要である。

ZONE III · MASTOID TIP TO POSTERIOR MANDIBULAR ANGLE

図:乳様突起先端〜下顎角後方の立体解剖

骨性ランドマークと損傷方向からリスクを読む。正確な創路は身体所見と画像で評価する。

解剖学的ランドマーク

乳様突起先端

SCMの付着部。内側の乳突切痕から顎二腹筋後腹が起始。

茎乳突孔

乳様突起と茎状突起の間。顔面神経本幹が頭蓋外へ出る。

下顎角・耳下腺下極

耳下腺の深層には下顎後静脈・外頸動脈がある。

C1横突起・後弓

後内側深部では椎骨動脈V3が環椎を回り込む。

皮膚側から見た損傷領域(模式図)

① 表層・乳様突起表面

後耳介動脈・後頭動脈の枝
皮膚/皮下組織・骨膜
胸鎖乳突筋付着部

② 前下方〜前内側の深部

顔面神経本幹(茎乳突孔)
顎二腹筋後腹・耳下腺
外頸動脈と分枝/高位ICA・IJVはさらに深い

③ 骨内・後内側の深部

乳突導出静脈・S状静脈洞
C1後弓周囲の椎骨動脈V3
乳突蜂巣・側頭骨の骨折/穿通
重要な位置関係:顔面神経は茎乳突孔から出て前方の耳下腺へ向かう。高位ICA・IJVは乳様突起の表面直下ではなく、前内側深部に位置する。V3も乳様突起の直下を表層走行するわけではなく、より後内側の環椎周囲にある。これらは単純な一直線の「層」ではない。
独自作成の教育用模式図。実際の個体差・創路・骨折形態は再現していない。解剖学的参考文献:Basma et al. 2019 [43]、顔面神経解剖 [44]、乳様部の軟部組織解剖 [45]。

8-3.露出している骨と創の軌道でリスクを分ける

「耳介の後ろで骨が見えた」という情報だけでは、乳様突起先端の骨皮質が軟部組織欠損により露出したのか、骨自体が破綻して乳突蜂巣・頭蓋底へ達したのかは区別できない。前者では周辺の表在血管・顔面神経・筋の損傷評価が中心で、後者では側頭骨内の構造、乳突導出静脈、S状静脈洞などが加わる。乳突導出静脈は頭蓋内のS状静脈洞と頭蓋外静脈系の交通路となり得るが、乳様突起先端のすぐ深部が常にS状静脈洞という意味ではない。[47]

創の方向/深達度優先して確認する構造追加評価の着眼点
耳介後部・乳様突起表面後耳介動静脈、後頭動脈の枝、SCM付着部活動性出血、血腫、骨皮質の連続性
乳様突起先端から前下方・耳下腺方向茎乳突孔近傍の顔面神経本幹、耳下腺、ECAとその枝、下顎後静脈閉眼・前額筋・口角の左右差、唾液漏、ECA枝の造影異常
前内側の頭蓋底方向高位ICA、IJV上部、舌下・迷走・舌咽・副神経、内頸静脈球頭頸部CTA、脳神経症状、頭蓋底骨条件
後内側・C1後弓方向椎骨動脈V3、頭蓋頸椎移行部、後頭下筋群椎骨動脈を含むCTA、C1骨折・後方循環症状
乳様骨の内部に穿通/骨折線が頭蓋側へ進展乳突導出静脈、S状静脈洞、顔面神経管、内頸静脈球など側頭骨薄切CT・骨条件、静脈洞近傍ならCTVを検討

神経診察:VII(前額筋、閉眼、口角)、IX・X(発声、嚥下、軟口蓋運動)、XI(肩挙上)、XII(舌突出)を処置前に確認する。顔面神経障害はCTAで直接否定できず、臨床所見と耳鼻咽喉科/形成外科での評価が重要である。頸部後方深部であればV3損傷と後方循環症状も念頭に置く。

手術・IVRの考え方:Zone IIIの高位ICAでは下顎角・茎状突起・頭蓋底が遠位側コントロールを妨げる。頭蓋底近傍を創内から盲目的に追跡せず、血管外科・脳神経外科・耳鼻咽喉科・IVRと早期に連携する。血管内治療の適否は血管の種類、損傷形態、感染・汚染、抗血栓療法の可否などを個別に判断する。[42][43]

9.Neck exploration:頸動脈へのアクセスと安全な血流コントロール

血腫が強い患者ほど、創をそのまま延長して盲目的に鉗子で止血しようとすると神経・血管損傷を増やす。気道確保・輸血・麻酔・血管外科/IVRバックアップを同時に整え、出血している場所そのものに触れる前に、可能な限り正常な血管部位で血流を制御できる展開を作ることを優先する。これはDSTCおよび外傷外科手術スタンダードに一貫する手術原則である。 [DSTC] [手術スタンダード]

9-1.胸鎖乳突筋前縁切開と頸動脈鞘

  • 患者体位:頸椎の不安定性が否定できなければ過伸展を避ける。否定できた例では頸部の展開に必要な範囲で頭位を調整。広い消毒・ドレーピングは胸郭入口部への切開延長も見越す。
  • 基本切開:胸鎖乳突筋の前縁に沿って縦走する展開を用いることが多い。頭側の損傷か、胸骨柄・鎖骨下側へ延長が必要かによって切開を設計する。
  • 層の理解:広頸筋下、胸鎖乳突筋前縁、頸動脈鞘の順に主要な解剖を確認。内頸静脈は一般に動脈の外側、迷走神経は鞘内で後方に位置するが、外傷では解剖学的位置関係が崩れる。
  • 神経:頸動脈分岐部より上方では舌下神経、迷走神経、上喉頭神経などの損傷に注意。高位での剥離には顎二腹筋後腹・茎状突起周囲の知識が必要。

9-2.近位・遠位コントロールが難しい部位

部位展開に影響する構造選択肢・留意点
Zone Iの総頸動脈起始部、鎖骨下・腕頭血管胸骨柄、鎖骨、肺尖・胸膜、腕頭静脈、胸管頸部切開だけでは近位遮断できないことがあり、胸骨正中切開、鎖骨上・胸鎖関節側への延長、血管内の近位制御などを事前に検討。
Zone IIの頸動脈分岐部内外頸動脈、内頸静脈、舌下神経、迷走神経損傷血管を同定し、正常な部位で血流制御してから直接修復・再建を考える。
Zone IIIの高位内頸動脈下顎骨、顎二腹筋後腹、茎状突起・頭蓋底、舌下神経通常の頸部展開では遠位側確保が困難。顎下領域の拡大展開、顎の一時的な位置調整、血管内アプローチなど、専門チームで適応を吟味。

現場の判断において重要なのは切開をどこまで延ばせば血流を制御できるかである。高位内頸動脈を無理に追いかける操作は、頸部神経と頭蓋底での血管損傷を増悪させ得る。Zone IIIでは血管内治療が有用なことがあるが、血管の温存・抗血栓療法の可否・デバイス到達性を勘案し、全例ステントとしない。 [JETEC] [DSTC] [手術スタンダード]

10.血管損傷の修復:頸動脈、内頸静脈、椎骨動脈を分けて考える

10-1.総頸動脈・内頸動脈:脳血流を残す方針が原則

外科的制御が可能な損傷では、血腫の一括開放前の血流確保、血栓・内膜損傷の評価、血流再開後の通過性確認が重要。修復選択肢として側壁縫合、端々吻合、自家静脈・人工血管による間置再建、重度出血時のtemporary intravascular shuntがある。損傷長、内膜の健全性、汚染、血行再建後の張力、術中脳灌流状態を考慮する。総頸・内頸動脈の安易な結紮を標準的手段として扱わない。外頸動脈またはその枝の出血に対する結紮判断とは区別する。[3] [JETEC] [DSTC] [手術スタンダード]

一時シャントは、血行遮断時間を短くしたい場合やdamage control状況など、限られた条件での選択肢である。塞栓、解離、内膜損傷、シャント逸脱が問題となり得る。血栓除去カテーテル、バルーン、一時シャントの使用法・サイズは血管径と解剖に合わせて専門術者が判断する。旧教科書に見られる固定量の全身ヘパリン(例:5,000〜10,000単位)は、出血性ショック・頭蓋内損傷を伴う患者全員に一律投与する指示として掲載しない。局所ヘパリン生食を含む抗凝固の要否は症例別に判断する。 [DSTC] [手術スタンダード]

10-2.内頸静脈とZone Iの大静脈

静脈性出血は圧迫・結紮で制御可能なことが多い。片側内頸静脈の結紮は状況により許容されるが、対側の開存、頭蓋内静脈還流、両側損傷の有無を把握する。頸部基部では鎖骨下静脈・腕頭静脈などへ連続し、単純な頸部創の拡大では十分にコントロールできないことがある。深部創への盲目的な止血鉗子操作を避ける。 [JETEC] [DSTC]

10-3.椎骨動脈:V1〜V4で到達経路が違う

椎骨動脈部位走行の要点治療計画上の問題
V1(前孔部)鎖骨下動脈起始〜通常C6横突孔入口鎖骨下・胸郭入口部損傷の合併と近位コントロール
V2(孔部)横突孔内を上行(通常C6〜C2)骨に囲まれ外科的展開が困難。骨折との関連が強い
V3(環椎部)C2横突孔を出てC1・後頭骨へ回り込む乳様突起後内側・後頸部・頭蓋頸椎移行部で創路の評価
V4(頭蓋内)硬膜内〜脳底動脈合流部脳神経外科・神経血管内治療領域を含む

椎骨動脈損傷は、強い側頸部・後頸部出血だけでなく深部の仮性動脈瘤・動静脈瘻として見つかることがある。安定例ではCTAを基本に、必要ならDSAで確定・治療計画を立てる。血管内塞栓・血管温存のためのステント等は、損傷部位、優位側、対側椎骨動脈および後方循環の側副路、頭蓋内への波及を踏まえて選択する。単に骨面からの出血と判断し、創内へ器具を深く進めることは危険である。 [JETEC] [DSTC] [手術スタンダード]

11.喉頭・気管損傷:気道確保と形態・機能の温存

嗄声、喘鳴、呼吸困難、増悪する皮下気腫、頸部前面の骨格異常、喀血は喉頭・気管損傷を疑う。症状が軽くても浮腫や血腫の進展で遅れて閉塞することがある。気道不安定なら画像を待たず、術者と麻酔科医が外科的気道を含む救済方法を用意する。輪状甲状靱帯切開を行う際にも、喉頭そのものの断裂・輪状軟骨損傷との位置関係を考える。負傷部より末梢に安全にチューブを置けるかが重要となる。 [JETEC] [DSTC] [手術スタンダード]

11-1.Schaefer–Fuhrman喉頭損傷分類(実用的な整理)

Group概略管理の方向
I軽微な内腔血腫・粘膜裂傷、明らかな骨折なし安定気道下で内視鏡評価・厳重観察
IIより強い浮腫・血腫、非転位骨折、軽度粘膜損傷反復評価と観察を基本に、気道確保の必要性を個別判断
III粘膜損傷大、軟骨露出・転位骨折、声帯運動障害など外科的整復・修復の適応を積極的に評価
IV前交連を含む喉頭構築の高度破壊・不安定骨折安全な気道を確保し、専門的な再建を検討
V喉頭と気管の完全離断気道救命を最優先し、緊急の専門外科的修復

JETECは重度喉頭損傷での構造再建やステント等を扱う。ただし実際の術式は喉頭軟骨・前交連・声帯粘膜・反回神経の損傷に依存し、Groupだけで処置を一律に固定しない。近年の文献にも症例・施設間の大きな差があり、耳鼻咽喉科と外傷外科の共同判断が必要である。 [JETEC] [喉頭外傷]

11-2.頸部気管裂傷・断裂

小規模で組織損傷の少ない裂傷は一次縫合の対象となり得るが、大きな断裂では気道維持、損傷部の同定、健常な組織への修復、気密性の確認を優先する。気管チューブが裂傷の位置にかかるとリークや組織損傷を悪化させるため、チューブ先端・カフ位置を気管支鏡等で確認する。気道と食道の近接する合併損傷では、修復部間の筋弁介在と適切なドレナージを検討する。術後には気管狭窄、瘻孔、感染、声門下の瘢痕を追跡する。 [JETEC] [DSTC] [手術スタンダード]

12.咽頭・頸部食道損傷:小さな損傷でも診断遅延させない

嚥下時痛や違和感が軽くても損傷を除外できない。CTAで創路が咽頭・食道に近接する、深頸部の気体・液体貯留、縦隔気腫、血液や唾液の漏出を認める場合は、水溶性造影による食道造影、内視鏡などを追加する。CTAの単独陰性では食道損傷を完全に否定できない。システマティックレビューでは確認された食道損傷26件中5件(19%)がCTA初回で見逃されていた。[6]

診断・治療に際しては、損傷部を完全に把握し、壊死・汚染組織の評価、可能なら一次修復、頸部間隙の十分なドレナージを考える。頸部食道のアプローチには左胸鎖乳突筋前縁からの展開がしばしば用いられるが、創の位置や頸動脈損傷の合併によって進入側を変更する。反回神経、甲状腺、下甲状腺動脈、気管膜様部、胸管に注意し、気管との同時損傷では修復部の接触・瘻孔形成を防ぐ工夫が重要となる。 [JETEC] [DSTC] [手術スタンダード] [WTA 食道]

JETECには小さな非汚染性の咽頭損傷で保存的治療を考慮する記述があるが、穿孔径だけで保存治療を決定しない。食道の全層損傷、進展する深頸部感染、縦隔炎、汚染の程度、診断までの経過時間、十分なドレナージが得られるかによって方針が変わる。EASTの2008年指針は24時間を超える治療遅延と合併症増加を指摘する。 [JETEC][7]

13.術後管理:最初の24時間だけでは終わらない

観察項目意図と対応の方向
気道・頸部血腫呼吸音、喘鳴、嗄声、皮下気腫、創の緊満・出血、カフリーク、酸素化を連続評価。出血による気道閉塞は迅速な再介入を要する。
脳循環瞳孔・左右差・片麻痺・意識変化。鎮静によるマスキングを意識し、必要ならCTA等で吻合部・損傷血管を再評価。
神経機能声帯運動、嚥下、舌運動、肩挙上、顔面運動を術前と比較。必要に応じ喉頭ファイバー・嚥下機能評価。
食道・咽頭発熱、頸部痛、流涎、唾液瘻、ドレーン排液、深頸部膿瘍・縦隔炎。経口摂取再開は損傷・修復状況に合わせる。
気管・喉頭気管狭窄、喉頭瘢痕、瘻孔、声帯麻痺。抜管は「術後○時間で必ず」ではなく、浮腫・再出血・再挿管困難の評価後に決める。
血管内治療後虚血・塞栓、再出血、デバイス閉塞。抗血栓療法と画像フォローは損傷部位・併存損傷に合わせる。

頸部血管損傷後の脳梗塞は早期だけでなく遅発することがある。また、喉頭・気管損傷は急性期を乗り越えても狭窄や嗄声を残し得る。術後のフォローを「止血成功」だけで終わらせず、脳神経・気道・嚥下機能の再評価まで計画する。 [JETEC] [手術スタンダード]

14.JETEC掲載のBCVI:穿通性頸部損傷とは診断も治療も分ける

JETEC p.133にはDenver/Memphisのスクリーニング基準、p.138にはDenverの損傷Grade I〜Vが掲載されている。これらは鈍的頸部血管損傷(BCVI:blunt cerebrovascular injury)の診断・病変分類であり、穿通性頸部損傷のZone分類と混同しない。頸椎骨折、頭蓋底骨折、高エネルギー顔面外傷、原因不明の神経脱落・Horner徴候などは、BCVI検索を考える所見・危険因子となる。詳細は別記事「鈍的頸部血管損傷(BCVI)」にまとめる。 [JETEC]

Denver Grade形態の基本注意点
I内膜不整、25%未満の狭窄軽微な病変でも脳梗塞リスクを考える。
II25%以上の狭窄を伴う解離・壁内血腫、内膜フラップ、管腔内血栓など進展・血栓塞栓に注意。
III仮性動脈瘤増大・症候性病変は追加治療を検討する。
IV閉塞梗塞の発症、側副血行、再開通のリスクを総合評価。
V血管離断・血管外漏出活動性出血と虚血の双方に対応する。

治療では新旧の資料を分けて読む。EAST 2020はBCVIが確認された患者への抗血栓療法を推奨し、Grade II・IIIへのステントの一律追加を推奨していない。旧来の「Gradeに応じ全例ステント」「全例一定期間のワルファリン」といった図式は更新が必要である。2018年のベストプラクティスでは、安全になり次第の抗血栓療法と、約7日および3か月でのCTA再評価を提案している。ただし出血合併症・頭蓋内出血や血管病変の推移によって開始・薬剤・期間は個別判断となる。 [EAST 2020] [BCVI best practice]

教科書を比較して、掲載時に誤解を避けたい点

教科書・論点本文での扱い
DSTC・JETECのZone別評価Zoneは主に手術展開・撮影範囲の目印。安定例の診断は現在のno-zone/CTA方針に整合させる。
気管挿管時の筋弛緩薬全患者で禁止とはしない。完全閉塞リスク、自発呼吸維持、気道損傷の位置、術者技能と救済気道で方針が変わる。
緊急輪状甲状靱帯切開後の定型的気管切開古い「必ず48時間以内に転換」などの固定ルールとしては記述しない。損傷形態・感染・予定手術と安全性で決める。
頸動脈修復時の全身ヘパリン一律の固定投与量を推奨せず、出血リスク・脳外傷・修復方法を含めて検討。
血管結紮と血管内治療ICA再建が可能なら温存を優先。Zone III・椎骨動脈でのIVRは有力な選択肢だが、損傷血管・側副循環等の評価が必要。
JETEC p.133/138のBCVI穿通性外傷の手術適応へ直結させず、2020年EASTなどの新しい診療指針も参照。

教科書の参照範囲:DSTC 第6章「頸部」p.81–89、外傷外科手術スタンダード 第2章 A「頸部損傷」p.44–49、JETEC「頸部外傷」p.130–141。写真で確認できた章の範囲を用い、図の転載や教科書本文の再掲はしていない。以上の解説・表は独自に再構成したもので、個々の施術の適応と技術を代替しない。 [JETEC] [DSTC] [手術スタンダード]

根拠の比較表

表はスマートフォンでは横にスクロールして読む。

出典(年)デザイン対象比較・評価主な結果限界と診療への意味
EAST/Tisherman(2008)[7]指針(1966〜2007年の文献)zone IIの穿通性外傷選択的管理と全例探索、CTA、食道の評価選択的管理と全例探索の診断精度は同等(Level 1)。利用できればCTAを初回検査に(Level 2)。食道造影か食道鏡(Level 2)zone IIのみ。改訂作業中の一覧に頸部なし[28]
WTA/Sperry(2013)[3]学会の推奨アルゴリズム広頸筋を越える創所見とzoneによる手順ハードサイン・不安定は手術室へ。zoneでCTAの範囲を分ける2013年の手順で、その後の食道の見逃しの報告などは含まない
Inaba(2012)[5]2施設前向き453件所見による振り分けとCTAの精度所見なし41.7%を観察し見逃しなし。CTA感度100%・特異度97.5%信頼区間の記載なし。損傷は22人。追跡は平均数日
Ibraheem(2018)[11]後ろ向き(8年)成人337例所見別のCTAと探索ハードサインの探索の72%が治療的。無症状のCTAの陽性は4%で治療的探索なし後ろ向き。CTAの施行は選択的
Schroll(2015)[12]単施設後ろ向き成人のzone II穿通性外傷で、ハードサインのある安定例23例探索の代わりにCTA(WTAの手順と比較)感度83%・特異度100%。陰性探索0件(WTAなら18件)。見逃しはCTA 1件、WTA 0件(p=0.323)少数。見逃しが増えない証明ではない
Londoño Barrientos(2026)[4]単施設後ろ向き310例ハードサインの診断精度感度55.4%(95%CI 44.7〜65.8)、特異度88.1%(同83.0〜92.1)。所見なしでも97例中5例に重大な損傷探索的。外部検証が必要
Ibraheem(2020)[18]系統的レビュー(13研究)安定例CTAの精度感度83〜100%、特異度61〜100%、陰性的中率90〜100%抄録に統合値なし。2017年までの文献
Morales-Uribe(2016)[20]メタ解析(9研究)頸部外傷693例血管損傷に対するCTA感度97%(95%CI 77〜100)、特異度99%(同93〜100)血管損傷のみ。感度の異質性あり(I²=65.7%)
Paladino(2021)[6]系統的レビュー(7研究)877例気道消化管損傷に対するCTA感度92%(95%CI 85〜97)、特異度88%。食道損傷26件中5件を初回に見逃し偏りのリスクが中等度〜高い
Adra(2023)[22]単施設(3ページの報告)242例(7〜86歳)気道消化管損傷に対するCTA感度・陰性的中率100%小児を含む。損傷例の数は抄録で不明
Asensio(2001)[23]34施設後ろ向き穿通性食道損傷405例術前検査あり対なし手術まで13時間対1時間。食道関連合併症41%対19%。死亡率に有意差なし無作為化でない。頸部と胸部を含む。古い
Chandrananth(2024)[2]単施設後ろ向き204例CTA利用の推移CTA 55%→94.1%。陰性探索の明らかな減少なしno-zoneの導入だけでは陰性探索が減らない場合がある
Madsen(2020)[9]単施設後ろ向き損傷の確認された298例外創と内部損傷のzone不一致23.5%、判定不能17.4%損傷例だけを解析
Yeung(2025)[10]単施設後ろ向き頸部銃創239例同上内部損傷の45%が不一致銃創のみ
Scriba(2020)[16]前向き登録の後ろ向き解析Foleyを用いた95例バルーンタンポナーデ止血成功97%。合併症29.5%。抜去時の出血は72例中2例比較群なし。刺創が中心の1施設
Mandavia(2000)[8]単施設後ろ向き気道確保を要した58例最初の気道確保法RSIは39例全例成功。ファイバー挿管は12例中3例が失敗方法の選択に偏り。古い
Krynauw(2026)[21]単施設後ろ向き無症状91例CTAと食道造影34%に画像上の異常。介入は1例資源の限られた地域の1施設
Yoshitake(2026)[29]国内単施設後ろ向き自傷による銃創以外の頸部穿通性外傷47例手術の要否に関わる所見手術18例。手術群でショック指数1.0以上とハードサインが多い(p<0.01)少数。診断手順が標準化されていない

評価時点について:Inabaの追跡は平均2.6日(所見なし)と平均5.5日(CTA陰性)で、退院後の長期の見逃しは評価していない。ほかの研究の多くは、抄録に追跡期間の記載がない。表の数値は各研究の観察期間内の結果として読む。右端の列は、原著が挙げた限界と本稿の解釈を合わせたものである。

日本で実施するとき

国内の患者像と研究

  • 全国データ:日本外傷データバンク(JTDB)の2009年1月〜2018年3月の登録313,643例のうち、救急車などで搬送された穿通性外傷は7,132例で、刺創が76〜82%を占め、院内死亡率は4.0%から1.7%へ低下した[30]。頸部に限った全国データは今回見つからず未確認である。
  • 自傷が多い:国内の救命救急センター1施設の3年間の入院1,321例では、穿通性外傷は65例(5%)、銃創は1例で、原因は自傷が最も多かった(38%)[31]。頸部刺創6例の報告では、全例が自殺企図または突発的な自傷で、全例に精神疾患があった[32]。
  • 国内の頸部の研究:大阪の1施設で、自傷による銃創以外の頸部穿通性外傷47例(2007〜2024年。他部位の重い損傷で手術を要した例などは除外)を調べた研究では、18例が手術を受けた。手術群は来院時の収縮期血圧が低く、ショック指数1.0以上とハードサインの割合が高かった(いずれもp<0.01)。zone IIIの損傷とISS 16以上の例はなく、造影CTの血管外漏出の有無に群間差はなかった。著者らは、ショック指数1.0以上とハードサインは手術の必要性の指標として信頼できるとした一方、単施設の少数例で、診断の評価が標準化されていない点などを限界に挙げた[29]。

海外のno-zoneの研究は銃創を多く含む(Inabaの研究ではCTA群の37.8%)[5]。刺創が中心で自傷の多い国内に、その成績がそのまま当てはまるかは検証されていない(本稿の解釈)。自傷の患者では、精神科への相談と退院後の安全の確保も治療計画に含める[32][29]。

国内の指針と損傷分類

  • JATEC:外傷初期診療ガイドライン改訂第6版の公開された改訂概要には、頸部や穿通性外傷の記載は見当たらなかった。気道については、確実な気道確保のアルゴリズムを簡素化し、経口挿管ができない気道緊急では外科的気道確保までに声門上器具を使う機会を設け、輪状甲状靱帯穿刺後のジェット換気は縦隔気腫などの圧損傷が少なくないため推奨しないとした[33]。この一般的な手順を、喉頭・気管の損傷を伴う頸部穿通性外傷にどう当てはめるかは、本文を取得できず未確認である。
  • JETEC:『改訂第3版 外傷専門診療ガイドラインJETEC』(2023年6月)の「頸部外傷」p.130–141を提供されたページ写真で確認した。神経所見、no-zone/CTA、Denver/Memphis、Schaefer–Fuhrman、頸動脈・椎骨動脈、喉頭気管、頸部食道、血管修復の章を、本稿8〜14節で解説する。原本全体の通読や再版確認とは異なる[34]。
  • 日本外傷学会臓器損傷分類2008:頸部の独立した分類はない。気管・気管支損傷分類の対象は胸骨切痕部から葉気管支まで、消化管損傷分類は食道を含み部位は食道癌取扱い規約に準じて記す。大血管損傷分類の記載方法には総頸動脈(CC)、内頸静脈(IJV)、鎖骨下動脈(SA)などが挙がる[35]。内頸動脈と椎骨動脈の略号は、今回確認した範囲では見当たらなかった。海外の研究と比べるには、zoneに加えて、損傷した構造と創の経路を文章で記録しておくとよい(本稿の解釈)。
  • 海外の指針の改訂状況:EASTの頸部穿通性外傷の指針は2008年版で、2026年9月23日に確認した改訂作業中の一覧にも頸部の項目はなかった[28]。

施設で決めておきたいこと

以下は本文の根拠から導いた編集上の整理で、検証された手順ではない。夜間・休日を含め、国内の施設で内視鏡やIVRをどれだけの時間で始められるかを示す全国データは確認できておらず、未確認である。

  • ハードサインや循環不安定のときに、誰が手術室を準備し、誰が気道(経口挿管と外科的気道)を担当するか。
  • CTAを24時間撮影できるか。読影の依頼に創の位置、経路、症状、異物を書くか。アーチファクトで判定できないときの代わりの検査(カテーテル血管造影、内視鏡)。
  • 夜間・休日に軟性食道鏡、食道造影、喉頭・気管支の観察を誰が行えるか。行えない場合の転院基準。
  • zone I・IIIの血管損傷で、胸部外科・血管外科・IVRへいつ連絡するか。
  • Foleyカテーテルによる創内のタンポナーデは、膀胱留置用カテーテル本来の使い方とは異なる(本稿の解釈。個々の製品の添付文書は未確認)。挿入の時刻と場所、抜去する場所と担当者を記録する。

まだ分からないこと

  • ハードサインのある安定例にCTAを先に行う安全性。根拠は小規模な後ろ向き研究と探索的なコホートに限られる[12][4]。
  • 所見のない患者の観察期間と画像の要否。見逃しのなかった前向き研究[5]、所見なしでも重大な損傷があったコホート[4]、無症状例の画像異常の多くが介入不要だった研究[21]がある。
  • CTA陰性後に食道の追加検査を行う基準。見逃しを示した系統的レビュー[6]と、陰性的中率100%とした研究[22]があり、どの所見で追加するかを検証した基準は見当たらない。
  • 国内の実態。頸部穿通性外傷に限った全国データ、JATEC本文中の該当箇所、夜間の内視鏡・IVR体制の全国的実態は未確認である。JETEC「頸部外傷」p.130–141については2026年10月20日に提供写真で確認した。

文献

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医学的内容の最終確認日・確認範囲

文献ごとの確認範囲を開く(最終著者確認日:2026年10月20日)

医学的内容の最終著者確認日:2026年10月20日。旧稿の文献照合日:2026年9月23日。今回の追加確認:同年10月20日にDSTC p.81–89・外傷外科手術スタンダード p.44–49・JETEC p.130–141の提供写真と、EAST 2020・BCVI Best Practice 2018の主要推奨を確認した。PubMedとPMCには接続できず、Europe PMCと一部の出版社ページも接続の制限で取得できなかったため、書誌と抄録はOpenAlex、出版社、学会・機関の公開資料で確認した。OpenAlex(文献データベース)の抄録は公開されている抄録の単語データから復元したもので、重要な数値は単語の位置をたどって照合した。検索記録は編集部で保管している。EASTとWTAの頸部穿通性外傷の指針の新しい版と、主要研究の訂正・撤回は、確認時点で見つからなかった(Inaba 2012とPaladino 2021はOpenAlexで撤回の記録なし)。初回改訂稿の数値・用量・適用条件は2026年9月24日に著者(医師)が確認し、今回の追加・統合後の本文は2026年10月20日に著者の確認を受けている。

  • 全文を確認:[1] Siletz 2024(早期公開版の公開PDF)、[3] WTA 2013(学会公開PDF)、[7] EAST 2008(学会公開PDF)、[14] Jain 2016(機関公開PDF)、[29] Yoshitake 2026(出版社公開本文)。
  • 抄録のみ確認:[2] [4] [5] [6] [8] [10] [11] [12] [13] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [25] [26] [27] [30] [31] [32]。本文中の数値は抄録にある範囲に限った。[9]は出版社ページで抄録とzoneの定義を確認した。[6]の特異度の信頼区間は、単語データから復元した抄録では判読が確定できなかったため記載しなかった。
  • 書誌のみ確認:[24](抄録を取得できず。zone分類の由来と境界の記載は[1]による)。
  • 教科書・公式情報を確認:[28] EAST公式ページ、[33] 日本外傷診療研究機構の改訂概要PDF、[34] JETECの書誌・今回提供されたp.130–141の写真、[35] 学会公開PDF、[36] DSTC p.81–89の写真、[37] 外傷外科手術スタンダード p.44–49の写真、[38] EAST 2020の学会公開ガイドライン、[39] BCVI Best Practice 2018の公開本文。[40][41]は文献情報・対応する公開資料に基づく解説。
  • 未取得:JATEC改訂第6版とハードサイン例の選択的精査を扱ったFiliberto 2024(Injury)とCT食道造影を扱った2024年の研究(Am J Surg)の抄録、Desjardins 2001・Prichayudh 2015・Madsen 2016の抄録、WTAの食道損傷アルゴリズム(Biffl 2015)の本文。

更新履歴

更新履歴を開く(全6件・最新:2026年10月21日)
  • 2026年10月21日(図説追記・公開、著者確認待ち):AAST–WSES 2026に準拠したhard/soft signsの比較、CTA/緊急介入フロー、Zone I–IIIの図、乳様突起〜下顎角後方の解剖と創路別のリスク評価を図表として追加。Basma 2019、Joseph 2015、Hongo 2019などの解剖学的文献および乳突導出静脈研究、ACRを追加した。教科書の画像は転載せず独自図にした。追記部分は著者による医学的最終確認待ち。
  • 2026年10月20日(著者確認・統合改訂公開):DSTC p.81–89、外傷外科手術スタンダード p.44–49、JETEC p.130–141を読込。第8〜14節に手術解剖・神経所見・乳様突起周辺・頸動脈修復・椎骨動脈・喉頭/気管・咽頭/食道・術後管理・BCVIを追加。2020年EASTのBCVI方針を照合し、古い記載の適用制限を明示。追加・統合内容を著者(医師)が確認し、既存の公開記事へ反映した。
  • 2026年9月26日(表記):確認範囲の記載を読者向けの表現に改め、関連記事と分野の一覧へのリンクを加えた(医学的内容は変えていない)。
  • 2026年9月24日(著者確認):著者(医師)が数値・用量・適用条件を含む医学的内容を確認した。確認日の表記を更新した。
  • 2026年9月23日(改訂):原著照合にもとづき全面改訂。冒頭の要点5項目と、対象と扱わない範囲(成人に限定し、BCVIと小児を除外)を新設。前向き研究(Inaba 2012)の例数・所見別の結果・CTAの感度と特異度、2018年以降のno-zone研究と系統的レビュー、気道消化管損傷に対するCTAの精度と食道損傷の見逃し(Paladino 2021)とその反対方向の結果、食道の精査の遅れと合併症(Asensio 2001)、ハードサインの診断精度(2026年)、気道確保(Mandavia 2000ほか)、Foleyバルーンタンポナーデの成績、zoneと内部損傷の不一致、血管損傷の治療の方向、根拠の比較表、国内の疫学と研究、JATEC・JETEC・臓器損傷分類2008の確認結果、文献ごとの確認範囲を追加した。初版で引用したWSES 2019の食道救急指針は、外傷性食道損傷の独立した項目と初版の記載内容を確認できなかったため、Biffl 1997は今回抄録を確認できず、より新しい研究で置き換えたため、いずれも削除した。初版は教育講演4「頸部穿通性外傷手術」の提供資料を構成の出発点としていたが(初版に学会名・演者・開催日の記載はない)、本改訂では講演の構成と表現を用いず、原著と指針で確認した内容として書き直した。理由:文献が古く、CTAの感度や食道損傷の見逃しなどの具体的な数値、国内の体制、比較表、確認範囲の記載が不足していたため。
  • 2026年9月20日(初回公開):教育講演の提供資料を出発点とした解説として公開(EAST 2008、WTA 2013、WSES 2019、Biffl 1997の4文献、文献確認日は2026年9月19日)。

本記事は医療従事者への教育および一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者に対する診断・治療を代替するものではありません。実際の診療では、各施設のプロトコルおよび最新の診療ガイドラインをご確認ください。
利益相反:本記事に関連して開示すべき利益相反はありません。

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この記事を書いた人

外科医・救急科専門医。外傷外科、Acute Care Surgery、救急・集中治療領域の診療と研究に従事しています。外傷性凝固障害、出血性ショック、止血蘇生、大量輸血、腹部外傷を中心に、臨床で使えるエビデンスを解説します。

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