ECPR(体外循環式心肺蘇生)徹底解説|適応、導入判断、主要試験、導入後管理

体外循環式心肺蘇生 ECPR|PTD ZERO

PTD ZERO|集中治療管理

ECPRを、判断から理解する。

体外循環式心肺蘇生の適応・導入のタイミング・主要試験・導入後管理を、成人の救急診療を中心に整理する。

「除細動を繰り返してもVFが止まらない。いつECPRを考えるのか」「PEAは適応外なのか」「ECMOの血流が出たら、次に何をするのか」。ECPRを理解するには、カニューレを入れる技術だけでなく、回復可能な患者を見つけ、脳・臓器の灌流を途切れさせず、原因治療までつなぐ診療全体を考える必要がある。

本記事は、成人の非外傷性院外心停止を中心とする医療従事者向けのナラティブレビューである。院内心停止、肺塞栓、偶発性低体温、中毒、外傷性心停止は、一般的な院外心停止と区別して扱う。挿入手技の詳細はECMOの構造とカニュレーション完全解説、外傷後の呼吸・循環不全は重症外傷とECMOも参照してほしい。

1.ECPRとは何か:循環を作り、原因治療の時間を確保する

ECPR(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation:体外循環式心肺蘇生)は、通常の心肺蘇生で持続的な自己心拍再開(ROSC)が得られない患者に、蘇生の一環として体外循環を導入することである。成人では通常、静脈から脱血し、人工肺を通した血液を動脈へ戻すVA-ECMOを用いる。体循環とガス交換を支え、冠動脈再灌流、復温、中毒からの回復などにつなぐ。[1]

状況 主に補う機能 ECPRとの関係
心停止中のVA-ECMO 体循環+ガス交換 通常のECPR。自己心拍が戻らなくても回路による灌流は成立し得る。
持続的ROSC後の心原性ショックに対するVA-ECMO 不足する心拍出+ガス交換 一般にはショックへの循環補助として扱う。心停止中導入のECPRと分けて成績を読む。
心拍出が保たれた重症呼吸不全に対するVV-ECMO ガス交換 心拍出を直接代替しない。無脈性心停止に対する循環再建にはならない。

日本で使われるPCPS(経皮的心肺補助)という呼び方は、経皮的に導入するVAの体外循環補助を指すことが多い。一方、ECPRは心肺蘇生のために体外循環を使うという臨床状況を表す。機械の名称と、何のために使うかを分けると混乱しにくい。[1][9]

2.誰に考えるか:患者側の条件と、実施する側の条件

中心となる問いは、「体外循環を早く確立できれば、治療可能な原因を取り除き、本人に意味のある回復につなげられるか」である。目撃、迅速なCPR、初期波形、基礎疾患、原因、導入可能時間を組み合わせる。AHA 2025は、全施設に共通する一つの最適な選択基準は確立していないと整理している。[4]

評価する点 候補として考えやすい条件 数字・所見を使う際の注意
心停止の目撃とCPR 目撃があり、直ちに質の高いCPRが始まった ELSOの選択基準例はno-flow <5分。推定誤差も確認する。
初期波形 VF/無脈性VT、または可逆的原因を伴う選択されたPEA VFなら自動的に適応とはならず、PEAなら自動的に除外ともならない。
循環確立までの時間 搬送・準備・挿入を含め、短時間で有効なECMO血流を得られる 来院時点だけでなく、これから必要な時間を見積もる。
回復可能性 冠動脈閉塞、肺塞栓、低体温、心毒性物質など、治療・回復の経路がある それぞれに固有の原因治療が必要で、選択基準も同一ではない。
発症前の状態・治療意思 本人の治療目標と整合し、回復を大きく制限する不可逆病態がない ELSOの年齢<70歳は例示。年齢だけで決めず、フレイル・併存疾患・価値観を評価する。
蘇生中の情報 一時的ROSC、反復VF、体動などのsigns of life、灌流を示す所見 ETCO₂、乳酸、pHの単一値を万能な適応判定にしない。

この表はELSO 2021、ERC 2025、AHA 2025を統合した編集上の整理であり、施設で承認された適応表そのものではない。[1][2][4]

見送る理由は、性質を分けて考える

本人の明確な治療拒否や蘇生を行わない方針、回復不能な終末期病態、不可逆的な脳障害が既に明らかな場合には、ECPRは治療目標と整合しにくい。一方、長い無灌流、重い併存疾患、持続する非ショック適応波形は主として利益が小さくなる可能性を示す情報である。「年齢が一つ超えた」「乳酸が一つ高い」だけで同じ種類の絶対禁忌に分類しない。[1][2][9]

制御不能な出血、急性大動脈解離、重症大動脈弁逆流、アクセス血管の損傷などは、末梢VA-ECMOそのものが病態を悪化させる、または安全な導入を妨げる問題として評価する。別の外科的治療・補助法が必要な場合もあり、単純な適応チェック表では判断しきれない。[9]

3.いつ動くか:no-flow、low-flow、「60分」を混同しない

連続した心停止では、no-flowは心停止からCPR開始まで、low-flowはCPR開始から有効な循環再建までを指す。ただし、研究によって心停止・通報・CPR開始のどこを起点にするか、一時的ROSCをどう扱うかが異なる。「low-flow 60分」という語だけでは同じ時間を比較できない。[1][2]

狭い画面では、図を左右にスクロールして確認できます。

ECPRの3つの時間 途中にROSCがない心停止の時間概念図。no-flowは心停止からCPR開始まで、low-flowはCPR開始から有効なECMO flow確立まで、total arrest-to-flowは心停止から有効flowまで。ELSO 2021が示す60分以内はflow確立までの目標で、超過だけで一律除外する基準ではない。区間の長さは実時間に比例せず、研究によりlow-flowの起点は異なる。 PTD ZERO / ECPR 01 ECPRの3つの時間 心停止から、有効な体外循環が成立するまで 心停止 CPR開始 有効flow確立 No-flow 循環のない時間 心停止 → CPR開始 Low-flow CPRで灌流をつなぐ時間 CPR開始 → flow確立 Total arrest-to-flow 心停止から有効なECMO flow確立まで 60分以内 ELSOが示す、flow確立までの目標 60分超だけを理由に、一律には除外しない 区間の長さは時間に比例しません。途中のROSCがない心停止を単純化しています。 研究によりlow-flowの起点は異なります。出典:ELSO ECPR 2021
図1.ECPRで区別すべき時間。no-flow、low-flow、心停止から有効なECMO flow確立までの全体を分けて考える。区間長は実時間に比例しない。

ELSO 2021の目標は、心停止発症から60分以内に十分なECMO血流を確立することである。穿刺開始やカニューレ挿入完了が終点ではない。ERC 2025は、CPR開始からECPRまでを理想的には45~60分以内と表現しており、起点の違いを意識して読む必要がある。[1][2]

チーム起動と、実際に挿入する判断を分ける

通常蘇生を長く続けた末に初めて人員・回路を集めると、候補と判断した時点からさらに時間がかかる。ERC 2025は、難治性を早期に認識する例として連続3回の除細動不成功、非ショック適応波形では蘇生10分を挙げ、候補評価・チーム起動につなげている。これは、その時点で全例にカニューレを入れる規則ではない。通常蘇生を続けながら、候補の見極めと準備を並行する。[2]

60分は、生物学的に利益が突然ゼロになる境界ではない。しかし「超えても助かる例がある」ことを理由に遅延を許容する数字でもない。特に偶発性低体温、途中のROSC、灌流が保たれた徴候などは通常体温の連続心停止と分けて検討する。[1][13]

4.本当に効くのか:主要3試験は同じ結論ではない

ECPRの評価で重要なのは、生存退院、神経学的転帰良好な生存、評価する日数を分けることである。CPC(Cerebral Performance Category)1~2は、概ね良好~中等度の障害で日常生活の自立が可能な範囲を指すが、認知機能や復職の詳細まで保証する尺度ではない。以下の3試験は、いずれも主に選別された成人の非外傷性院外心停止を対象としている。[5][6][7]

表は横にスクロールできます。結果は左がECPR/侵襲的戦略群、右が通常治療群。

試験 対象・デザイン 主要評価項目 結果 解釈
ARREST
2020年
米国単施設。18~75歳、難治性VF、3回の除細動後もROSCなし。病院到着時に割付。30例割付、主要評価29例。 生存退院 6/14(43%)対1/15(7%)
絶対差36.2ポイント、95%信用区間3.7~59.2。優越の事後確率98.61%。
事前規定の有効性基準で早期中止。大きな利益を示したが、少数例・熟練単施設での結果。
Prague OHCA
2022年
チェコ単施設。目撃あり、推定心原性。非ショック適応波形も含む。現場で割付。256例解析。 180日後CPC 1~2での生存 39/124(31.5%)対29/132(22.0%)
OR 1.63(95% CI 0.93~2.85)、p=0.09。
主要評価に有意差なし。機械CPR・搬送・必要時ECPR・侵襲的治療を組み合わせた戦略の比較。
INCEPTION
2023年
オランダ10施設。18~70歳、目撃・バイスタンダーCPRあり、初期心室性不整脈、15分のALS後も難治性。主に病院到着前に割付。134例の試験集団。 30日後CPC 1~2での生存 14/70(20%)対10/62(16%)
OR 1.4(95% CI 0.5~3.5)、p=0.52。
有意な改善を示さなかった。信頼区間が広く、同等性を証明した試験ではない。

出典:ARREST[5]、Prague OHCA[6]、INCEPTION[7]。ARRESTの区間はBayesianの信用区間で、他の試験の信頼区間とは異なる。ARRESTは介入群1例が研究から離脱。Pragueは264例の無作為化後に8例を除外し256例を解析。INCEPTIONは160例の無作為化後に不適格26例を除外し70対64例となり、通常群2例の主要評価欠測により上表の分母は62例。

PEAはなぜECPRの適応外になりやすいのか――そして例外は?

結論からいうと、「PEAだからECPRは禁忌」という説明は正しくない。PEA(pulseless electrical activity:無脈性電気活動)は、心電図に組織化した電気活動があるのに有効な拍出がない状態をいう。冠動脈閉塞、重症肺塞栓、著明な心機能障害だけでなく、出血性ショック、心タンポナーデ、緊張性気胸、低酸素血症、重篤な脳病変など幅広い原因が含まれる。PEAは原因の診断名ではなく、最終的に観察された循環状態なのである。[1][20]

ショック適応波形と比較してPEAでECPRの神経学的転帰が低くなりやすいのは、蘇生開始時の虚血時間や原因疾患の不均一性、適応選択の難しさが背景にあると考えられる。しかし、この集団間の予後差は「PEA患者にはECPRの治療効果がない」ことの証明ではない。2021年ELSO成人ECPRの選択例にもVF/pVTと並んでPEAが含まれる。[1][8]

SAVE-J IIのPEA二次解析:473例、転帰良好8.2%

Ijuinらの研究(Journal of Critical Care 2025;85:154917、DOI: 10.1016/j.jcrc.2024.154917)では、SAVE-J II登録から初期波形PEAでECPRを施行した473例を解析した。退院時の神経学的転帰良好(CPC 1–2)は8.2%、生存退院は16.9%。原因別の神経学的転帰良好率は急性冠症候群9.7%、肺塞栓19.3%だった一方、急性大動脈疾患・原発性脳疾患を原因とする例では生存退院例が1例も認められなかった(したがって神経学的転帰良好例もいない)。原因別の値は症例数が限られるため、単独で絶対的な適応基準にはならない。[20]

良好な転帰と関連したのは、asystoleへの移行がないこと、蘇生中の生命徴候(signs of life)、瞳孔径、一過性ROSCなどであった。瞳孔径5 mm未満などの所見は補助情報として意味を持つが、単一所見からECPR可否を決める根拠にはならない。なお、この研究はECPR施行者だけの後ろ向き解析であり、PEAにECPRを行うこと自体の利益を対照群との比較で証明したものではない。[20]

PEAのECPR判断:原因によって優先する治療は変わる

推定原因 ECPRの役割/限界 先行・並行させる治療
急性冠症候群 循環を橋渡しし、冠血行再建へつなげる可能性 適応に応じた緊急冠動脈造影・PCI
高リスク肺塞栓 閉塞性ショックを一時的に支える可能性 再灌流治療(線溶/血栓除去等)と出血リスク判断
心タンポナーデ/緊張性気胸 原因解除なしでは根本治療にならず、静脈脱血も制約されうる 心嚢ドレナージ・外科的解除/胸腔減圧
出血性ショック/大動脈破裂 循環量不足・持続出血の是正はできず、抗凝固も問題 止血・輸血・損傷制御を最優先
原発性脳疾患/長時間無灌流 重度不可逆性脳障害では利益が乏しい可能性 原因・時間・神経学的救命可能性を慎重に評価

PEAで早期にECPRを考える典型像は、心停止が目撃され、直ちにCPRが開始され、no-flowが短く、可逆的な原因が強く疑われ、短時間で有効なVA-ECMO血流が確立できる患者である。一方、原因解除がすぐ可能な閉塞性病態にはまず原因治療を行う。PEAだから一律に見送るのでも、PEAなら何でもECMOを回すのでもない。[1][2][20]

2026年ELSO登録解析:波形の「変化」も重要

Robら(Resuscitation 2026)は、ELSO登録5489例のうち完全データのある3382例を解析し、初期VFに比べて初期PEAは生存退院の調整オッズが低いことを報告した(OR 0.59、95% CI 0.48–0.71)。導入時asystoleも予後不良と関連し、初期波形と導入時波形の両方が予後情報を持った。ただし、これもECPR実施集団の観察研究であり「初期PEAにはECPRを行わない」という因果的結論にはならない。[25]

Kasugaiら(CCM 2025):ECPRの成績を左右するのは病院の「速さ」か

KasugaiらのCritical Care Medicine 2025(DOI: 10.1097/CCM.0000000000006808)は、日本救急医学会JAAM-OHCAレジストリから53施設・ECPR施行2136例を解析した。注目点は患者個人の時間ではなく、各施設のdoor-to-ECPR timeの中央値で施設を分類したことだ。施設群の代表的な中央値は迅速群24分、遅延群32分。30日生存率は未調整で迅速群27%、遅延群20%であり、傾向スコア重み付け後も迅速群で良好だった。抄録では調整OR 1.36(95% CI 1.21–1.53)と報告されている。神経学的転帰も迅速群で良好だった。[21]

この研究が示す重要な実践的含意は、「腕のよい穿刺者を増やす」だけでなく、救急隊からの事前連絡、ECMOチーム起動、物品準備、担当配置、判断手順を施設単位で改善するという視点である。door-to-ECPRを症例検討・訓練の質指標として用いることには意味がある。[21]

ただし、24分が魔法の治療閾値、32分以上なら無益という結果ではない。観察研究であり、設備・人員・患者選択・症例数などの残余交絡が残る。さらに原著は抄録と結果本文の一部で調整ORの数値が一致しないため、ここでは抄録の30日生存ORを明示した。因果効果としての厳密な解釈は避ける。[21]

SAVE-J(2014):日本のECPR研究の原点

本邦のSAVE-J研究(Sakamotoら、Resuscitation 2014)は、初期心電図がVF/VTの成人院外心停止に対する前向き観察研究である。ECPRを中心に、低体温療法・IABP等を含む治療パッケージと、ECPRを行わない施設での通常の蘇生治療を比較した。1か月後のCPC 1–2は12.3%(32/260)対1.5%(3/194)、6か月後は11.2%(29/260)対2.6%(5/194)だった(intention-to-treat解析)。[19]

日本からの重要な先駆的研究である一方、ランダム化比較試験ではなく、施設・症例選択・治療パッケージが異なる。したがって、この差をECMO単独の純粋な因果効果と解釈することはできない。また、SAVE-JはVF/VTを対象とし、前述したPEAの検討(473例)はSAVE-J IIの別解析である。

43%・31.5%・20%を、そのまま施設の優劣にしない

ARRESTの43%は生存退院であり、他の2試験の主要評価とは異なる。Pragueでは侵襲的戦略群全員がECPRを受けたわけではなく、ECLS実施は82/124例だった。したがって31.5%を「ECMOにつないだ患者の神経学的良好生存率」と説明すると、分母を取り違える。[5][6]

INCEPTIONでも、ECPRに割り付けられた70例のうち52例で手技を開始し、46例でカニュレーションと循環確立に成功した。未導入の中にはROSCが得られた患者もおり、すべてが手技失敗という意味ではない。[7]

患者選択、割付時点、対照群の蘇生、搬送、導入時間、原因治療、集中治療が異なることは、結果の不一致を考える手掛かりになる。ただし、「INCEPTIONが陰性なのは導入が遅かったから」と因果関係を確定することはできない。導入速度を無作為化して比較した試験ではないからである。

4A.DSEDとECPR:難治性VFで何を先にするか

除細動を3回以上行ってもVF/無脈性VTが続くとき、DSED(double sequential external defibrillation:二重連続体外除細動)とECPRは同じ「救済治療」の議論に登場する。しかし作用点は異なる。DSEDは電気的に不整脈を終息させる戦略、ECPRは自己循環が戻らない間の臓器灌流を確保し、原因治療へ橋渡しする戦略である。DSEDの実施がECPR適応の必要条件ではなく、DSEDを先に完遂しなければECPRチームを呼べないわけでもない。[22][23]

通常除細動・VC・DSEDの違い

戦略 パッド/実施方法 臨床的位置づけ
通常除細動 通常の前側方パッドで単回ショック 高品質CPR・適切な除細動を最優先
VC(vector change) パッドを前後方向へ変更し単一装置でショック ショックの電流経路を変更する方法
DSED 2組のパッド・2台の除細動器による短い間隔の連続ショック(同時放電ではない) 安全性・機器適合性・教育を要し、標準治療と確立したとはいえない

DOSE VF試験:生存退院は13.3%、21.7%、30.4%

カナダのDOSE VF試験(Cheskesら、NEJM 2022)は、通常の除細動を3回行った後もVFが持続・再出現する院外心停止405例を登録したクラスターランダム化クロスオーバー試験である。生存退院率は通常除細動13.3%、VC 21.7%、DSED 30.4%で、通常法に対する相対リスクはVC 1.71(95% CI 1.01–2.88)、DSED 2.21(95% CI 1.33–3.67)。神経学的転帰良好もDSED群で改善した。一方、施設・救急隊単位の割付で、救命現場の手技・導入率や実際に受けた治療とのずれがあり、他地域で同じ効果が再現するかは未確定である。[22]

ガイドラインは一枚岩ではない

ILCORの2023年勧告(2025 CoSTRに収載)は、3回以上ショック後もVF/pVTが続く成人でDSEDを弱い推奨・低い確実性、VCを弱い推奨・非常に低い確実性として「考慮してよい」とした。これに対しAHA 2025成人ALSは、3回以上のショック後のVCもDSEDも有用性は確立していない(Class 2b、Level B-R)と表記する。これを「国際的に全例DSEDを追加すべき」と読むのは誤りである。[23][24]

AHA 2025は、リズムチェック時に繰り返しVFが見えても、直前のショックが無効だった「持続VF」と、いったん終息後に再発したVFを区別できない点も指摘する。後者ではパッド配置だけでなく、不整脈再発の病態・原因治療が重要になる。[23]

PTD ZEROの実践整理(ガイドラインの逐語的なアルゴリズムではない)

  1. 難治性VF/pVT:質の高いCPR、適切な通電・パッド接触・可逆的原因への治療を継続。
  2. 除細動3回以上で候補評価:ECPRチームの起動を遅らせない。DSED/VCは施設の承認されたプロトコルと訓練がある場合に個別検討。
  3. 目撃、no-flow、low-flow、可逆的原因、神経学的救命可能性を踏まえ、ECPRを実施するか別途判断する。
  4. PEA/asystoleには除細動を行わない。DSEDはPEAへの治療法ではない。

DSEDは2台の除細動器と2組のパッドの適切な配置、装置の使用条件・施設手順の遵守が前提となる。除細動器を無断で組み合わせたり、CPR中断を延ばしたりしてはならない。とりわけECPRを準備する施設では、DSED試行によって有効なECMO血流確立が遅れることのない動線設計が必要である。[22][23]

5.日本の成績とガイドラインの読み方

SAVE-J II:日本でECPRを受けた集団の実態

SAVE-J IIは日本の36施設による後ろ向き登録研究であり、この原著では、2013~2018年にECPRを受けた推定心原性の成人院外心停止1,644例を解析した。生存退院は27.2%、退院時CPC 1~2は14.1%、ECPR中の合併症は32.7%だった。[8]

この研究には非ECPRの対照群がない。従って「ECPRで生存率が27.2%まで改善した」とは言えず、ECPRを選択され実施された集団の成績として読む。施設ごとの適応差、背景疾患、治療時代、転帰の時点も異なるため、海外RCTの数字と単純比較しない。

推奨は「選択例・実施可能な体制」が前提

資料 位置づけ
ERC 2025 ALS 通常蘇生で自己循環が戻らない選択例でECPRを考慮する弱い推奨。根拠の確実性は院外心停止で低い、院内心停止で非常に低い。
AHA 2023 Focused Update 訓練・設備が整った体制で、標準ACLSに抵抗する選択例へのECPRはreasonable(Class 2a、B-R)。この治療推奨は2023 Focused Updateに由来し、2025 Systems of Careでも参照されている。
AHA 2025 Systems of Care 選択基準の継続的見直し、経皮的カニュレーションへの熟練、地域での集約を重視。蘇生中の迅速搬送は厳選した成人院外心停止で考慮する(Class 2b、B-R)。
JRC公開のCoSTR 2024翻訳・見解 院外・院内ともに選択例への救助療法という位置づけ。地域の実情に合わせた搬送・実施施設の機能分担と訓練を重視。

出典:[2][3][4][18]。AHAの推奨クラスとGRADEの確実性は異なる評価体系であり、単純な強弱の順位に置き換えない。

JRC蘇生ガイドライン2025の書籍最終版は、2026年7月13日に発刊済みである。本稿では刊行情報を確認したが、書籍のECPR該当本文は未照合のため、上表の日本語推奨は公開済みのCoSTR 2024資料として示した。国内の実装ではJRC最終版、地域メディカルコントロール、施設の承認手順を照合する。海外指針の数値を、日本での機器使用条件や保険算定条件にそのまま読み替えることはできない。[17][18]

5A.プレホスピタルECPR:病院に運ぶ前に、現場で回すべきか

プレホスピタルECPRは、ECMOチームが心停止の現場(路上・自宅・駅など)に出動し、搬送前にVA-ECMOを導入する戦略である。院内ECPRで最大の遅れになりやすいのは、蘇生しながらの搬送時間である。Prague OHCAでも、ECLS導入までの時間は中央値61分だった。現場でカニュレーションできれば、この搬送時間をlow-flowから差し引けるという発想である。[6][36]

現場導入のエビデンス:プログラムごとに設計が異なる

報告 方式・デザイン 主な結果
パリSAMU(Lamhaut 2017) 現場に出動するECMOチームによる病院前導入を含む戦略。前後比較・傾向スコア解析、156例 後期のCPC 1–2生存29%対前期8%。low-flowは約20分短縮。病院前で導入したこと自体は独立した予後因子ではなかった[34]
パリ地域登録(Bougouin 2020) 院外心停止13,191例中ECPR 525例の登録研究 ECPR群の生存8%対通常CPR群9%で差なし。ECPR群内では病院前導入が生存と関連(OR 2.9、95% CI 1.5–5.9)[35]
ロンドン Sub30(Singer 2025) HEMSの現場チームが倒れてから30分以内の血流確立を目指した単群の実現可能性研究 現場導入5例。倒れてから血流確立まで平均47分(37–59分)で、30分以内は0/5。生存退院2/5、いずれも神経学的転帰は良好でなかった[37]
レーゲンスブルク(Lunz 2026) 単施設の前向き観察研究。現場でVA-ECMOを開始した213例 CPR開始からECMOまで中央値45分。生存退院34.7%(74/213)、生存者の89.2%がCPC 1–2。対照群なし[39]
メルボルン CHEER3(Richardson 2023) 単群の実現可能性研究。病院前ECPR 10例 通報からECMOまで中央値50分。CPC 1–2生存4/10[40]
ミネソタ(Bartos 2020) 現場導入ではなく、移動ECMOチームが地域病院の救急外来で導入する方式 導入58例でCPC 1–2生存25/58(43%)。初期VF/VTに限定[38]

パリSAMUは、病院前ECPRの代表的なプログラムである。後期には導入判断とチーム出動を早め、患者選択も厳しくした。その結果、CPC 1–2での生存は8%から29%に改善した。ただし、多変量解析では「病院前で導入したこと」そのものは独立した予後因子ではなかった。改善は、早い判断・早い出動・厳しい選択を組み合わせた戦略全体によるものと読むのが妥当である。[34]

ロンドンのSub30は、「倒れてから30分以内に血流を作る」という目標を掲げた。しかし、HEMSの現場チームでも5例すべてで30分を超えた。現場ECPRは、カニュレーションの技術だけでは時間を縮めきれない。通報から出動判断、現場到着、適応確認までの時間が律速になる。[37]

院内ECPRと比べて生存は改善するのか

Lerouxらのメタ解析(2025年、8コホート・305例)では、病院前ECPRのCPC 1–2での生存は25%(95% CI 17–35%)、平均low-flowは59分だった。院内ECPRと比べると、low-flowは約30分短い一方、生存に有意差はなかった(RR 1.23、95% CI 0.35–4.38)。low-flowが長いほど転帰が悪い関連も示された。いずれも観察研究の統合であり、信頼区間は広い。「病院前のほうが優れている」とも「差がない」とも結論できない段階である。[41]

病院前と院内のECPRを無作為化で比べた唯一の試験は、パリのAPACAR2(NCT02527031)である。登録上は完了しているが、目標症例数に届かないまま終了しており、2026年10月時点で結果は公表されていない。オランダのON-SCENE(NCT04620070)は、HEMS(医師同乗のヘリ救急)拠点による病院前ECPRを段階的に導入するstepped-wedge研究である。2025年7月に登録を終え、結果は未公表である。[42][43]

日本での位置づけ

日本では、救急外来やカテ室でECPRを導入する体制が中心である。本稿で確認した範囲では、現場でカニュレーションを行う前向きコホートの報告は見つからなかった。関連する国内データとして、SAVE-J IIの二次解析がある。ECPR施行例では、病院前に医師が関与した群で30日生存が高かった(29.6%対22.7%)。一方、CPC 1–2には有意差がなかった(14.5%対11.0%)。これは医師の病院前関与の解析であり、現場でのECMO導入を評価したものではない。[44]

ILCOR(JRCの日本語版を含む)、ERC、AHAの現行指針は、選択された患者へのECPRを、実施可能な体制を前提に考慮するとしている。本稿で確認した範囲では、病院前ECPRに特化した推奨は示されていない。[2][4][18]

6.導入の流れ:蘇生を続けながら準備を進める

現場では、蘇生リーダー、胸骨圧迫・気道・薬剤担当、カニュレーション担当、回路担当、原因治療担当の役割を明確にする。ECPR準備のために通常蘇生を弱めず、搬送や画像確認による中断も最小限にする。以下はチームで共有する工程の概略であり、穿刺・拡張の実操作は訓練とデバイスごとの手順を要する。[1][4]

狭い画面では、図を左右にスクロールして確認できます。

蘇生とECMO準備を並行する 高品質CPR、適応に沿う除細動・換気・薬剤・可逆的原因への処置を継続しながら、別チームが起動、患者選択、血管エコーと回路準備、カニュレーションと画像確認を進める。両工程は有効なECMO flowと臓器灌流の確立に合流し、原因治療と集中治療を継続する。実際の分担と手順は施設プロトコルに従い、持続的ROSCが得られた場合は方針を再評価する。 PTD ZERO / ECPR 02 蘇生とECMO準備を並行する 患者選択・回路準備・穿刺を、チームで同時に進める 通常の蘇生 ECPRの準備 高品質CPR を継続 適応に沿う除細動 換気・薬剤 可逆的原因への処置 中断を最小限に 1 チーム起動 2 患者選択 3 血管エコー・回路準備 4 カニュレーション・画像確認 有効なECMO flow確立 流量と臓器灌流を確認 原因治療 + 集中治療 接続しただけでは完了ではありません。持続的ROSCが得られた場合は方針を再評価。 概念図:ELSO ECPR 2021を基に作成。実際の分担・手順は施設プロトコルによります。
図2.通常の蘇生とECPR準備の並行実施。有効な流量と臓器灌流の成立を確認し、原因治療と集中治療を継続する。
  1. 候補評価と起動:目撃・CPR開始時刻、波形、原因、治療意思、出血リスク、ECMO血流確立の見込みを共有する。途中でROSCが持続すれば、ECPRの必要性を再評価する。
  2. 回路と血管を同時に準備:回路のプライミング、ガス供給、電源、接続先を確認。超音波で総大腿動脈・静脈、分岐、径、血栓、損傷を評価する。
  3. 穿刺とガイドワイヤーの確認:リアルタイム超音波下で穿刺し、血管エコー、心エコー/TEE、必要に応じ透視で、ワイヤーが意図した血管系にあることを確認してから拡張する。無拍動・低酸素下では血液の色だけに頼らない。
  4. 留置、接続、脱気:静脈脱血と動脈送血を取り違えず、製品に応じた位置を確認する。回路接続時の空気混入、ライン屈曲、固定不良を点検する。
  5. 有効な流量・灌流を確認して移行:実測流量、動脈圧、脱血状態、画像所見を評価し、十分な循環が成立したことをチームで共有して胸骨圧迫から移行する。挿入できた事実だけでは圧迫終了の条件にならない。

ELSOの実務文書には成人初期流量3~4 L/minなどの目安があるが、体格、Hb、血管抵抗、自己心拍出、脱血状態で必要な流量は変わる。固定した回転数や「3 L/min」という数字だけで循環が十分と判定しない。[1][9]

狭い画面では、図を左右にスクロールして確認できます。

末梢VA-ECMOの血流 解剖学的位置を示さない血液の行き先の機能図。大腿静脈のカニューレを右房付近まで進めて脱血し、ポンプ、人工肺を通して大腿動脈へ送血する。主送血は大動脈へ頭側の逆行性血流を生み、全身の臓器灌流を支える。DPCは人工肺通過後の送血側から分岐し、送血側と同じ側の浅大腿動脈に接続して足側へ順行性に灌流する。自己心機能の回復に肺機能が追いつかないと、左室からの低酸素血が上半身へ届くことがあり、右橈骨動脈血ガスで監視する。 PTD ZERO / ECPR 03 末梢VA-ECMOの血流 血液の行き先を示す機能図(体内の位置関係は示さない) 大腿静脈 脱血カニューレ 先端:右房付近 ポンプ 人工肺 O2供給・CO2除去 大腿動脈 送血カニューレ 送血側から分岐 DPC 同側の浅大腿動脈 小さな灌流用カニューレ 大動脈 頭側へ 逆行性に送る 同じ側の下肢 足側へ順行性に送る 全身の臓器 脱血側 酸素化後の送血側 主送血 大腿動脈から大動脈へ 循環とガス交換を支える DPC 同側下肢の血流を補う 留置後も下肢虚血を監視 自己心拍出が戻っても、肺が悪いとき 心機能の回復に肺機能が追いつかないと、 左室からの低酸素血が上半身へ届くことがある。 右橈骨動脈血ガスで確認する。 出典:ELSO ECPR 2021・VA-ECMO 2021・神経管理2024。DPC:distal perfusion cannula。
図3.末梢VA-ECMOの血流と下肢灌流。DPCは酸素化後の送血側から同側の浅大腿動脈へ分岐する。解剖学的位置関係を示さない機能図。

代表的な末梢VAは大腿静脈脱血・大腿動脈送血である。静脈カニューレを下大静脈・右房方向へ進め、動脈側は大腿動脈から大動脈方向へ逆行性に送血する。左右、径、先端・側孔の配置は血管条件と製品で決める。開胸中や心臓手術後の再開胸ではセントラル導入が選ばれることもあるが、通常の院外心停止に一律に開胸下導入を選ぶわけではない。[1][9]

DPC(distal perfusion catheter:遠位灌流カテーテル)は、酸素化された送血側から分岐し、動脈カニューレ側の浅大腿動脈などへ足側に灌流する。導入時から計画し、初期血流確立・緊急原因治療を妨げず可能な限り早く対応する。設置後もDPCの閉塞や下肢虚血は起こり得る。[1][9]

7.ECMOを開始した後は、何を治療するのか

ECMOは循環を支えるが、冠動脈閉塞や肺動脈血栓そのものを除去しない。原因仮説を更新し、心電図、心エコー、冠動脈造影、必要なCTなどを使い分ける。検査の順番は、原因の可能性、循環安定性、出血・大動脈病変の疑い、実施場所で変わる。[1][10]

原因・病態 ECPRが確保するもの 並行して必要な治療・判断
急性冠動脈閉塞・難治性VF 再灌流までの全身灌流 冠動脈評価・適応に応じたPCI、電解質や不整脈への対応。
肺塞栓による心停止 右心・肺循環が破綻した状態での体循環支持 出血リスクを踏まえた抗凝固と再灌流戦略。血栓溶解・カテーテル治療・外科治療を個別に検討。
偶発性低体温心停止 灌流と復温 低体温専用の評価・復温戦略。HOPEなども用い、通常体温の時間基準を機械的に当てはめない。
可逆的な心毒性中毒 毒性の軽減・心機能回復までの循環 原因物質に応じた解毒・特異的治療。ECMO自体に十分な薬物除去能力があると考えない。

出典:[1][10][13][14]。中毒での知見は主に難治性心原性ショック・心停止などであり、心機能が保たれた血管拡張性ショック等へ同じ利益を仮定しない。

8.導入直後の管理:血圧・酸素・CO₂・体温を整える

次の数値はAHA 2025の主にROSC後を対象とした一般的な心停止後管理からの参考であり、ECPR患者だけを対象に最適値が証明されたものではない。ECPRでは回路・自己心・自己肺の組み合わせを踏まえて調整する。[10]

項目 一般的な目標・考え方 ECPRで追加して見る点
血圧 MAP 65 mmHg以上を確保し、低血圧を避ける。 流量、末梢灌流、尿量、乳酸推移、左室後負荷。昇圧薬による血圧上昇だけで十分な流れを保証しない。
酸素 信頼できる測定が可能になったら、SpO₂ 90~98%/PaO₂ 60~105 mmHgを目安に調整する。 右橈骨動脈血液ガス、人工肺出口、肺機能。低拍動ではSpO₂が得にくく、単一部位だけでは不十分。
CO₂ 通常はPaCO₂ 35~45 mmHgを目安にする。 sweep gasで急変し得る。導入直後は血ガスを繰り返し、過度の低PaCO₂や大きな急低下を避けつつ調整。
体温 ROSC後も口頭指示に反応しない成人に計画的管理。32~37.5℃の目標を選び、少なくとも36時間の管理が合理的。 全例33℃ではない。出血、循環、脳障害等を考慮し、復温後も発熱を見逃さない。

AHA 2025[10]、ELSO神経管理2024[11]。通常体温患者の心停止後管理と、偶発性低体温心停止の復温は別の文脈である。

血流量とsweep gas流量も別である。血流が不足しているのにガスだけ増やしても、酸素を臓器へ届ける流れは回復しない。逆にsweepを大きく変更するとPaCO₂は急速に動き得る。急変を避ける実務上の注意は必要だが、「一定速度を超えてPaCO₂を下げると必ず脳障害が起こる」というECPR固有の確定した閾値はない。[9][11]

より詳しい管理:ECMO導入時の急激なCO₂低下、脳NIRSとICH、下肢NIRS・DPC、hemolysisとハプトグロビンの具体的な監視・対応は、ECMOの構造とカニュレーション:導入後モニタリング編で詳説する。

8A.ECPR後の体温管理:低体温療法から「発熱予防」へのエビデンス史

2002年のHACA・Bernardで注目された「33℃への冷却」は、TTM(2013)・HYPERION(2019)・TTM2(2021)によって再検討され、現在は計画的な体温管理と発熱予防を基本とし、33℃を一律には求めない方向に変化した。ただし、各試験で心停止波形、評価時点、対照群の体温管理は異なり、単純に「5試験中3試験が陽性」などと多数決してはならない。[26][27][28][29][30]

2026年10月時点の要点
発熱を予防する:≤37.5℃

ILCOR 2024/ERC–ESICM 2025:昏睡が続く心停止後患者で36〜72時間の発熱予防を提案。

AHA 2025:32〜37.5℃の範囲で計画的体温管理、少なくとも36時間。これらは同じ文章ではなく、36〜72時間は33℃冷却を続ける期間ではない。[10][32][33]

エビデンス・タイムライン:何が「33℃全例」の考えを変えたか

2002
HACA / Bernard
初期の小規模RCTで低体温療法が有望
33℃前後
2013
TTM
33℃と36℃で優劣を示せず
発熱を両群で管理
2019
HYPERION
非ショック波形で33℃群の神経転帰良好が増加
結果は脆弱
2021
TTM2
33℃は積極的発熱管理より死亡率を改善せず
大規模RCT
2024–25
ILCOR / AHA / ERC
発熱予防と計画的温度管理が中心
≤37.5℃

主要5試験の比較:対象・介入・評価項目までそろえて読む

表はスマートフォンで左右にスクロールできます。結果は左が低体温群。

試験 集団 温度戦略 主要評価と結果 読み方
HACA(2002) 275例(OHCA・初期VF) 32〜34℃・24時間 vs 通常管理 6か月CPC 1–2:55% vs 39% 低体温群が良好。初期VFの選択例。
Bernard(2002) 77例(OHCA・VF) 33℃・12時間 vs 通常管理 退院時良好転帰:49% vs 26% 低体温群が良好。退院先に基づく転帰でCPCとは異なる。
TTM(2013) 939例(OHCA・推定心原性) 33℃ vs 36℃・各24時間 追跡期間中の死亡:50% vs 48% 有意差なし。対照の36℃群も発熱を制御。
HYPERION(2019) 581解析例(OHCA+IHCA、非ショック波形) 33℃・24時間 vs 37℃ 90日CPC 1–2:10.2% vs 5.7% 主要評価はp=0.04。死亡率差なし。
TTM2(2021) 1,861割付例(OHCA・推定心原性/不明) 33℃ vs 発熱時介入(≥37.8℃) 6か月死亡:50% vs 48% 有意差なし。重篤な不整脈24% vs 17%。

HACAは6か月のCPC(Cerebral Performance Category)1–2、Bernardは退院先を含む良好転帰、TTMとTTM2は主に死亡、HYPERIONは90日CPC 1–2を主要評価としている。同じ列に数字を並べても評価項目は統一されていない。HACAの分母は神経学的転帰評価可能例136/137、TTM2の主評価は1,850例(割付1,861例)であり、割付数と解析分母も区別する。[26][27][28][29][30]

HYPERIONは非ショック適応波形に33℃が有効だったのか?

HYPERIONはPEA・心静止(asystole)の心停止後昏睡患者を対象に、33℃24時間と37℃管理を比較した。90日神経学的転帰良好は29/284(10.2%)対17/297(5.7%)、絶対差4.5ポイント(95% CI 0.1–8.9、p=0.04)だった。これは重要な陽性試験だが、良好転帰イベントが少なく、結果の頑健性に限界がある。加えて90日死亡率には有意差がなかった。[29]

その後の個別患者データメタ解析(Tacconeら、JAMA Neurology 2024)では、HYPERIONとTTM2に含まれる初期非ショック波形のOHCA 912例を統合。3か月死亡は33℃群80.1% vs 正常体温管理82.1%で有意差なし(p=0.63)、不良機能転帰にも有意差がなかった。この解析はHYPERION単独の陽性結果を否定し切るものではないが、「PEAなら必ず33℃」を支持する根拠にはならない。なおHYPERIONは院内心停止も含むが、この統合解析はOHCAのみを対象としている。[31]

2024 CoSTRと2025ガイドライン:温度と期間は何を推奨する?

指針 温度目標 推奨期間・強さ
ILCOR CoSTR 2024 発熱予防 ≤37.5℃ 発熱予防36〜72時間(good practice statement)。温度推奨は弱い推奨、低い確実性。
ERC–ESICM 2025 発熱予防 ≤37.5℃ 36〜72時間の発熱予防。ILCORの文言を採用。
AHA 2025 計画的に32〜37.5℃ 少なくとも36時間(Class 2a、B-R)。計画的温度管理自体はClass 1、B-R。

ILCORは「発熱を避けること」を中核に置き、AHAはより幅広い温度範囲の計画的管理を許容している。どちらも全患者33℃に冷却することを必須とはしていない。低体温療法32〜34℃が有利な患者群が存在するかについては未解決であり、神経学的重症度だけを用いて一律に33℃を選ぶ十分な根拠はない。[10][32][33]

ECPR患者にどう適用する?:一般の心停止後ケアとの違い

上記の主要5試験はECPR専用の比較試験ではない。とくにTTM2はROSC前にECMOを導入した患者を対象から除外した。ECPRは無灌流・低灌流時間が長く、VA-ECMO回路による急速な血液再灌流、抗凝固、出血・血栓リスク、鎮静、体温調整装置などを伴うため、33℃対発熱予防の最適な選択をRCTから直接断定することはできない。あくまで心停止後管理指針を基盤にした個別化が必要である。[10][30][33]

  1. 誰に:ECMO血流確立後も昏睡が続く患者で、低灌流・脳障害リスクや心停止原因を踏まえて計画的温度管理を検討。持続的ROSC後を対象とする指針からの外挿であることを認識する。
  2. 目標:発熱予防(≤37.5℃)を基本に施設プロトコルに従う。33℃を検討する場合は根拠の不確実性と、凝固障害・活動性出血・不整脈・感染などの不利益を併せて評価する。
  3. どこで測る:食道・膀胱・血液温などを使い、可能ならフィードバック制御機器で中枢温を連続測定する。低尿量時の膀胱温の遅延や、ECMO回路表示温と脳・中枢温の差を考慮し、測定部位を記録する。
  4. 何時間:温度管理は少なくとも36時間、昏睡持続例の発熱予防は36〜72時間を参考とする。33℃冷却を36〜72時間続けるという意味ではない。
  5. 復温:自発的低体温例は安易な急速復温を避ける。AHA 2025は0.5℃/時より速い復温を避けることを考慮可能としている。電解質・血糖・血行動態・不整脈を経時観察する。
  6. 例外:偶発性重症低体温による心停止に対するECMO復温は別の病態であり、本章の「心停止後の発熱予防」の数字をそのまま適用しない。

温度管理は脳保護の一部であり、脳低酸素・低灌流、けいれん、PaCO₂急変、ICHなどの併存問題も同時に評価する。詳細はECMO管理中の脳NIRS・CO₂ drop・下肢NIRS・溶血モニタリングも参照。

研究の限界:各試験は対象波形、OHCA/IHCA、介入期間、対照群の発熱管理、主要評価項目、評価期間が異なる。本稿の模式タイムラインと表は原著に基づく独自編集であり、講演スライドをそのまま転載したものではない。ECPRに対する特定温度目標の有効性は未確立である。

9.VA-ECMO特有の3つの落とし穴

① 左室が膨らむ:大動脈弁は開いているか

末梢VAの逆行性送血は大動脈圧を上げ、左室が血液を送り出す際の後負荷を増やし得る。左室収縮が著しく低下していると、大動脈弁が開かず、左室拡張、肺水腫、心腔内うっ滞につながる。動脈圧が保たれていても、心臓が適切に減圧されているとは限らない。[9]

脈圧、心エコーでの大動脈弁開放、左室径、肺うっ血を追う。問題があれば回路流量、血管抵抗、前負荷、自己心駆出を見直し、必要に応じIABP、経皮的補助デバイス、外科的ventなどを検討する。全例へ同じアンローディングを追加する規則にはしない。

詳しい適応と方法:VA-ECMO流量が左室後負荷・PCWPに与える影響、AV閉鎖・LVOT VTI<10 cm・脈圧<15 mmHg・PCWP>18 mmHgなどの参考所見、IABP/Impella/経中隔LA vent/外科的ventの使い分け、RCT(EVOLVE-ECMO・EARLY-UNLOAD)と2025年PAPO-Flowの結果は、「ECMOの構造とカニュレーション:LV unloading編」で解説する。数値は診療上の参考であり、単独の絶対的介入閾値ではない。

② 上半身だけ低酸素になる:人工肺出口が良好でも安心できない

肺障害が残ったまま自己心拍出が回復すると、酸素化の不十分な血液が左室から出て上半身に流れ、大腿側からの十分に酸素化されたECMO血と異なる領域を灌流することがある。これがdifferential hypoxemia(上下半身の酸素化差、いわゆるHarlequin/north–south syndrome)である。[9]

右橈骨動脈血液ガスと右手の酸素化を重視し、人工肺出口・大腿動脈のPaO₂だけで上半身を評価しない。ただし右手の値が良くても、冠動脈を含む全領域の酸素化まで保証できるわけではない。自己肺の改善と回路・カニュレーション構成の再評価を組み合わせる。

③ 下肢が虚血になる:DPCがあっても観察を続ける

太い動脈カニューレは同側下肢への血流を妨げる。皮膚色・温度、ドプラ血流、必要に応じNIRSなどで左右差を追い、DPCの屈曲・閉塞も点検する。昏睡・鎮静中は疼痛を訴えられないため、症状の申告を待つ観察では遅れる。[9]

10.抗凝固と出血:一律のヘパリン量で済ませない

ECPRでは、回路血栓を防ぐ必要性と、穿刺部・後腹膜・胸腹部・頭蓋内の出血リスクが競合する。通常は未分画ヘパリン等を用いるが、開始時期・強度は、活動性出血、胸骨圧迫関連損傷、凝固障害、併用する抗血小板薬や再灌流治療で調整する。ACT、aPTT、抗Xa活性等を施設手順に沿って解釈し、出血・血栓所見と合わせる。[12]

大きな出血では抗凝固を一時的に保留・中断することがある。その間も回路の血栓、人工肺の圧較差・ガス交換、溶血を監視し、再開の可否を繰り返し判断する。無抗凝固管理が可能な症例があることと、無抗凝固なら安全であることは別である。[12]

流量低下・脱血不良も「循環血液量が足りない」と即断せず、ライン屈曲、位置異常、タンポナーデ、進行する出血などを確認する。輸液だけを反復していると原因治療を遅らせ、肺うっ血を悪化させ得る。[9]

11.神経予後:導入時の瞳孔や乳酸だけで結論を出さない

ECPR後の意識障害は、低酸素性虚血性脳障害だけでなく、鎮静・筋弛緩、低体温、代謝異常、脳梗塞・頭蓋内出血にも影響される。診察、瞳孔、EEG、SSEP、画像、バイオマーカーを組み合わせ、時間を追って評価する。早期画像で治療すべき出血や梗塞を探すことと、不可逆的な機能予後を確定することも分ける。[11]

AHA 2025は、昏睡が続く患者の神経予後を総合する時点について、正常体温への復温と鎮静薬中止後から少なくとも72時間を経て、交絡を小さくしたうえで判断することが合理的としている。「心停止後72時間になれば、その場で確定できる」という意味ではない。薬物の残存や臓器不全により、さらに待つ必要がある。[10]

ECMOでは溶血によりNSEが高くなることがあり、通常の心停止患者で用いられる閾値をそのまま当てはめにくい。NSE高値、散瞳、乳酸高値など、一つの指標だけで治療を打ち切る判断をしない。家族には早い段階から、今分かっていること、評価を妨げるもの、次に判断できる時点を説明する。[10][11]

ECMOからの離脱も、自己心が動いたという一点では決めない。原因の是正、心機能・肺機能、灌流、昇圧薬、臓器障害を確認し、管理下の流量低減試験等で補助を減らせるか判断する。心機能が回復しない場合は、回復までの継続、長期補助への移行可能性、本人の治療目標を多職種で再評価する。[9]

12.外傷性心停止にECPRを使うのか

外傷サイトとして最も重要なのは、「外傷患者に起きた心停止」と「外傷そのものを原因とする心停止」を分けることである。心筋梗塞による心停止から交通事故に至った患者と、骨盤出血で循環血液量を失った患者では、ECMOが解決できる問題が違う。

失血・緊張性気胸・タンポナーデは、原因を解除する

高度の失血では静脈還流が不足し、ECMOで十分な血流を確保できないことがある。体外循環自体に失った血液を補う作用はなく、送血圧の上昇によって未制御の出血を増やすおそれもある。酸素化の確保、止血、血液製剤による循環血液量回復、緊張性気胸や心タンポナーデの解除を、原因に応じて優先・並行する。胸骨圧迫やECPR準備がこれらを遅らせてはならない。[14]

止血後に残る可逆的な重症心機能障害、低体温、特定の選択例ではVA-ECMO/ECPRを検討し得る。2025年のCSECLS外傷ECMO指針も選択された外傷性心停止へのVA-ECMOを提案するが、根拠の確実性は非常に低い。したがって「外傷はすべて禁忌」とも、「難治性外傷心停止ならECPR」とも言えない。[15]

2026年のELSO登録解析をどう読むか

Erblichらの研究では、ECPRを受けた外傷患者134例のうち、実際に外傷が心停止原因だったのは24例で、生存退院は7/24例(29.2%)だった。残る110例は外傷を有する患者に生じた内因性心停止であり、この両者を混ぜて「外傷性心停止のECPR成績」としてはいけない。[16]

外傷性24例にも出血、呼吸不全、タンポナーデなどが含まれ、対照のない少数の選択症例である。この数字から、出血性心停止にECPRを追加すれば29%助かる、と予測することはできない。現在の臨床的な重心は、原因解除を優先したうえで、体外循環が役立つ病態と実施体制があるかを個別に検討することにある。研究の確認範囲は著者所属機関掲載の原著抄録であり、詳細なサブグループの神経学的成績は本稿に転記していない。

13.施設で運用するために必要なこと

ECPRは、熟練した一人がカニューレを入れられるだけでは完成しない。AHA 2025が地域での集約と選択基準の継続的見直しを重視するのは、候補患者の発見、搬送、手技、原因治療、集中治療をつなぐ必要があるからである。[4]

  • 搬送前:救急隊・メディカルコントロールと候補条件、連絡時点、搬送先を共有する。すべての心停止を蘇生中搬送へ変更するものではない。
  • 導入時:蘇生リーダー、熟練した挿入担当、回路管理、看護、画像、緊急の血管修復体制を確保する。
  • 導入後:循環器・心臓血管外科・救急・集中治療・必要な原因治療へ切れ目なくつなぐ。ICUの受け入れ能力も含めて計画する。
  • 振り返り:心停止・CPR開始・起動・病着・穿刺・有効flowの時刻、合併症、生存、CPC等の転帰を記録する。挿入した件数だけで成功を評価しない。

院内心停止では目撃・CPR開始が早い利点がある一方、背景病態と可逆性が院外心停止とは異なる。ERC 2025が評価した文献には、成人院内心停止に対するECPRの有効性を比較した無作為化試験はない。院外心停止の研究値を、そのまま院内の説明に使わない。[2]

救命後には認知、運動、心理、社会復帰への支援も必要になる。退院やCPCだけで本人が望む回復を評価し尽くせない。導入時の説明でも、循環を確立できる可能性、脳・臓器の不確実性、出血や血管合併症、治療目標を見直す過程を共有する。[10][11]

14.よくある誤解と、持ち帰る判断

誤解 どう考えるか
「CPRを60分やってからECMOを考える」 候補評価・起動は早く行い、心停止から有効flowまでの時間を短くする。
「PEAは全例適応外」 原因、目撃、CPR、時間、回復可能性を評価する。肺塞栓・低体温等は別の文脈を持つ。
「ARRESTで43%なので、ECPRの救命率は43%」 高度に選択された単施設試験の生存退院率。集団・体制・評価項目で変わる。
「ECMOが回り、MAPが出れば蘇生成功」 原因治療、脳、左室、上半身酸素化、下肢、出血を別々に再評価する。
「ECPRを見送る=通常蘇生も中止する」 ECPR適応と、通常蘇生の継続・終了は別の判断である。

上表は本文と文献[1][2][5][9][13]に基づく教育上の整理。

ECPRを考えるときは、「回復可能な原因は何か」「有効な血流をいつ確立できるか」「その後の原因治療と集中治療を担えるか」をセットで問う。蘇生を続けながら早く準備し、挿入の判断は情報を更新して行う。体外循環が成立してからも、治療の成否は変わり続ける。

参考文献・確認範囲

本文中の番号と以下の文献を対応させた。図は文献を基にした本記事オリジナルの機能・工程図で、既存のガイドライン図や機器の解剖図の転載ではない。

  1. Richardson ASC, et al. Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation in Adults. Interim Guideline Consensus Statement From the Extracorporeal Life Support Organization. ASAIO J. 2021;67:221–228. doi:10.1097/MAT.0000000000001344.
    定義、患者選択例、導入時刻、カニュレーションの実務。ELSO公式本文を確認。
  2. Soar J, et al. European Resuscitation Council Guidelines 2025 Adult Advanced Life Support. Resuscitation. 2025;215 Suppl 1:110769. doi:10.1016/j.resuscitation.2025.110769.
    現行の推奨、早期起動、時間・選択基準、成人IHCAの根拠。原著本文を確認。
  3. Perman SM, et al. 2023 American Heart Association Focused Update on Adult Advanced Cardiovascular Life Support. Circulation. 2024;149:e254–e273. doi:10.1161/CIR.0000000000001194.
    選択例へのECPR:Class 2a/B-R。推奨と2025公式本文での引用を確認。
  4. Dezfulian C, et al. Part 4: Systems of Care: 2025 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care. Circulation. 2025;152(16 Suppl 2). 公式本文. doi:10.1161/CIR.0000000000001378.
    地域体制、訓練、患者選択と蘇生中搬送。公式本文を確認。
  5. Yannopoulos D, et al. Advanced reperfusion strategies for patients with out-of-hospital cardiac arrest and refractory ventricular fibrillation (ARREST): a phase 2, single centre, open-label, randomised controlled trial. Lancet. 2020;396:1807–1816. doi:10.1016/S0140-6736(20)32338-2.
    主要評価、生存退院の分母、Bayesian解析、早期中止。原著本文を確認。
  6. Belohlavek J, et al. Effect of Intra-arrest Transport, Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation, and Immediate Invasive Assessment and Treatment on Functional Neurologic Outcome in Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2022;327:737–747. doi:10.1001/jama.2022.1025.
    主要180日評価、戦略全体の比較、割付と実施例の違い。原著本文を確認。
  7. Suverein MM, et al. Early Extracorporeal CPR for Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest. N Engl J Med. 2023;388:299–309. doi:10.1056/NEJMoa2204511.
    主要30日評価、通常群の欠測、導入状況。原著本文を確認。
  8. Inoue A, et al. Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation in adult patients with out-of-hospital cardiac arrest: a retrospective large cohort multicenter study in Japan. Crit Care. 2022;26:129. doi:10.1186/s13054-022-03998-y.
    SAVE-J IIの日本の登録研究。原著本文・抄録を確認。
  9. Lorusso R, et al. ELSO Interim Guidelines for Venoarterial Extracorporeal Membrane Oxygenation in Adult Cardiac Patients. ASAIO J. 2021;67:827–844. doi:10.1097/MAT.0000000000001510.
    回路、左室、酸素化差、下肢灌流、離脱。ELSO公式本文を確認。
  10. Hirsch KG, et al. Part 11: Post–Cardiac Arrest Care. 2025 AHA Guidelines for CPR and ECC. 公式本文. doi:10.1161/CIR.0000000000001375.
    血圧・酸素・CO₂・体温、神経予後、回復支援。公式本文を確認。ECPR専用の目標値ではない。
  11. Cho SM, et al. Neurological monitoring and management for adult extracorporeal membrane oxygenation patients: Extracorporeal Life Support Organization consensus guidelines. Crit Care. 2024;28:296. doi:10.1186/s13054-024-05082-z.
    ECMO固有の神経評価、PaCO₂管理、NSEと溶血。本文を確認。2024年10月の訂正はASAIO Journalとの共同掲載の明示であり、臨床推奨の変更ではない。
  12. McMichael ABV, et al. 2021 ELSO Adult and Pediatric Anticoagulation Guidelines. ASAIO J. 2022;68:303–310. doi:10.1097/MAT.0000000000001652.
    抗凝固と出血・血栓の両面評価。ELSO公式本文を確認。
  13. Cao D, et al. Part 10: Adult and Pediatric Special Circumstances of Resuscitation. 2025 AHA Guidelines for CPR and ECC. 公式本文. doi:10.1161/CIR.0000000000001380.
    肺塞栓、偶発性低体温、中毒。公式本文を確認。
  14. Lott C, et al. European Resuscitation Council Guidelines 2025 Special Circumstances in Resuscitation. Resuscitation. 2025;215 Suppl 1:110753. doi:10.1016/j.resuscitation.2025.110753.
    外傷性心停止の原因解除、低体温。ERC公式本文を確認。
  15. Wang H, et al. Use of extracorporeal membrane oxygenation in adult trauma patients with refractory acute cardiopulmonary failure: guideline from the Chinese society of extracorporeal life support 2025. Crit Care. 2025;29:334. doi:10.1186/s13054-025-05504-6.
    選択された外傷性心停止・心原性ショックのVA-ECMO。本文を確認。
  16. Erblich R, et al. Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation in trauma patients: An analysis of the ELSO registry. Resuscitation. 2026;218:110884. doi:10.1016/j.resuscitation.2025.110884.
    外傷患者134例と、外傷が直接原因の心停止24例の区別。著者所属機関掲載の原著抄録のみ確認、本文・補足は未取得。
  17. 日本蘇生協議会.JRC蘇生ガイドライン2025.公式案内・序言.
    書籍最終版の刊行状況を確認。ECPR該当章の書籍本文は未照合。
  18. 日本蘇生協議会.CoSTR 2024翻訳・見解:心停止に対する体外循環を用いた心肺蘇生(ECPR).公式PDF.
    日本語の公開推奨と地域体制に関する見解。全文を確認。JRC2025書籍最終本文とは区別。
  19. Sakamoto T, et al. Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation versus conventional cardiopulmonary resuscitation in adults with out-of-hospital cardiac arrest: a prospective observational study. Resuscitation. 2014;85:762–768. doi:10.1016/j.resuscitation.2014.01.031.
    SAVE-J研究。初期VF/VTを対象とした前向き観察研究であり、非ランダム化・介入パッケージの比較である。
  20. Ijuin S, et al. Analysis of factors associated with favorable neurological outcomes in patients with initial PEA who underwent ECPR: a secondary analysis of the SAVE-J II study. J Crit Care. 2025;85:154917. doi:10.1016/j.jcrc.2024.154917.
    初期PEA 473例の後ろ向き解析。CPC 1–2は8.2%、生存退院16.9%。原因別の成績と関連因子を確認。
  21. Kasugai D, et al. The Impact of Hospital-Level Median Door-to-Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation Time on the Prognosis of Patients With Refractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest. Crit Care Med. 2025;53:e2025–e2032. doi:10.1097/CCM.0000000000006808.
    JAAM-OHCA登録2136例・53施設。door-to-ECPR中央値と転帰。抄録・結果本文の効果量表示に軽微な不一致がある。
  22. Cheskes S, et al. Defibrillation Strategies for Refractory Ventricular Fibrillation. N Engl J Med. 2022;387:1947–1956. doi:10.1056/NEJMoa2207304.
    DOSE VF試験。405例、通常除細動・vector change・DSEDを比較。
  23. Wigginton JG, et al. Part 9: Adult Advanced Life Support: 2025 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care. Circulation. 2025;152:S538–S577. doi:10.1161/CIR.0000000000001376.
    2025 AHAによるVC/DSEDの評価:各Class 2b、Level B-Rで有用性未確立。
  24. Drennan IR, et al. Advanced Life Support: 2025 International Liaison Committee on Resuscitation Consensus on Science With Treatment Recommendations. Circulation. 2025;152(16 Suppl 1). doi:10.1161/CIR.0000000000001360.
    ILCORに収載されたDSED/VCの弱い推奨と、そのエビデンスの確実性。
  25. Rob D, et al. Impact of rhythm changes during CPR on ECPR outcomes: an ELSO Registry study. Resuscitation. 2026;219:110951. doi:10.1016/j.resuscitation.2025.110951.
    初期波形・カニュレーション時波形・心肺蘇生時間の予後関連を検討した2026年の登録解析。
  26. Hypothermia after Cardiac Arrest Study Group. Mild Therapeutic Hypothermia to Improve the Neurologic Outcome after Cardiac Arrest. N Engl J Med. 2002;346:549–556. doi:10.1056/NEJMoa012689.HACA:初期VF、32–34℃・24時間、6か月CPC 1–2を比較。
  27. Bernard SA, et al. Treatment of Comatose Survivors of Out-of-Hospital Cardiac Arrest with Induced Hypothermia. N Engl J Med. 2002;346:557–563. doi:10.1056/NEJMoa003289.Bernard:77例、33℃・12時間、退院時良好転帰は退院先を含む評価。
  28. Nielsen N, et al. Targeted Temperature Management at 33°C versus 36°C after Cardiac Arrest. N Engl J Med. 2013;369:2197–2206. doi:10.1056/NEJMoa1310519.TTM:939例。33℃と36℃はともに管理目標を設定した介入群。
  29. Lascarrou JB, et al. Targeted Temperature Management for Cardiac Arrest with Nonshockable Rhythm. N Engl J Med. 2019;381:2327–2337. doi:10.1056/NEJMoa1906661.HYPERION:PEA/asystoleのOHCA+IHCA、90日CPC 1–2を比較。
  30. Dankiewicz J, et al. Hypothermia versus Normothermia after Out-of-Hospital Cardiac Arrest. N Engl J Med. 2021;384:2283–2294. doi:10.1056/NEJMoa2100591.TTM2:33℃ vs ≥37.8℃で発熱介入。6か月死亡率と不整脈。
  31. Taccone FS, et al. Hypothermia vs Normothermia in Patients With Cardiac Arrest and Nonshockable Rhythm: A Meta-Analysis. JAMA Neurol. 2024;81:126–133. doi:10.1001/jamaneurol.2023.4820.HYPERION+TTM2のOHCA初期非ショック適応波形912例の個別患者データ統合。
  32. Greif R, et al. 2024 International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science With Treatment Recommendations. Circulation. 2024;150:e580–e687. doi:10.1161/CIR.0000000000001288.ILCOR CoSTR 2024:≤37.5℃の発熱予防、36–72時間のgood practice statement。
  33. Nolan JP, et al. European Resuscitation Council and European Society of Intensive Care Medicine Guidelines 2025 Post-Resuscitation Care. Resuscitation. 2025;215 Suppl 1:110809. doi:10.1016/j.resuscitation.2025.110809.ERC–ESICM 2025:≤37.5℃、36–72時間。ECPRのみを対象とした試験ではない。
  34. Lamhaut L, et al. A Pre-Hospital Extracorporeal Cardio Pulmonary Resuscitation (ECPR) strategy for treatment of refractory out hospital cardiac arrest: An observational study and propensity analysis. Resuscitation. 2017;117:109–117. doi:10.1016/j.resuscitation.2017.04.014.パリSAMU。前後比較156例、CPC 1–2生存29%対8%。病院前導入自体は独立予後因子ではない。
  35. Bougouin W, et al. Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation in out-of-hospital cardiac arrest: a registry study. Eur Heart J. 2020;41:1961–1971. doi:10.1093/eurheartj/ehz753.パリ地域登録13,191例、ECPR 525例。ECPR群内で病院前導入がOR 2.9。
  36. Singer B, et al. Pre-hospital extra-corporeal cardiopulmonary resuscitation. Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2018;26:21. doi:10.1186/s13049-018-0489-y.病院前ECPRの文献レビュー(当時の報告88例、生存13例)。
  37. Singer B, et al. Sub30: Feasibility study of a pre-hospital extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) in patients with refractory out-of-hospital cardiac arrest in London, United Kingdom. Resuscitation. 2025;207:110455. doi:10.1016/j.resuscitation.2024.110455.現場導入5例、倒れてから血流まで平均47分、30分以内0/5。生存者の神経学的転帰は抄録と本文で記載が異なるため、良好でなかった点のみ記載。
  38. Bartos JA, et al. The Minnesota mobile extracorporeal cardiopulmonary resuscitation consortium for treatment of out-of-hospital refractory ventricular fibrillation: Program description, performance, and outcomes. EClinicalMedicine. 2020;29–30:100632. doi:10.1016/j.eclinm.2020.100632.移動チームが救急外来で導入。CPC 1–2生存25/58。抄録の導入率「97%」は58/63(92%)と一致しないため割合は記載せず。
  39. Lunz D, et al. Prehospital initiation of extracorporeal life support for refractory out-of-hospital cardiac arrest – results of a prospective observational study. Crit Care. 2026;30:163. doi:10.1186/s13054-026-05958-2.レーゲンスブルク。現場導入213例、生存退院34.7%。単施設・対照群なし。
  40. Richardson SAC, et al. Pre-hospital ECPR in an Australian metropolitan setting: a single-arm feasibility assessment – The CPR, pre-hospital ECPR and early reperfusion (CHEER3) study. Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2023;31:100. doi:10.1186/s13049-023-01163-0.メルボルン。病院前ECPR 10例、CPC 1–2生存4/10。
  41. Leroux L, et al. Impact of prehospital extracorporeal cardiopulmonary resuscitation for out-of-hospital cardiac arrest on survival with good neurological function: a systematic review and meta-analysis. Resusc Plus. 2025;24:100974. doi:10.1016/j.resplu.2025.100974.8コホート305例。CPC 1–2生存25%、院内ECPRとの比較RR 1.23(0.35–4.38)、low-flow約30分短縮。
  42. APACAR2: A Comparative Study Between a Pre-hospital and an In-hospital Circulatory Support Strategy (ECMO) in Refractory Cardiac Arrest. ClinicalTrials.gov NCT02527031.病院前対院内ECPRの無作為化試験。登録上は完了、実登録65例。2026年10月時点で結果未公表。
  43. ON-SCENE: a national multi centre pre-hospital ECPR stepped wedge study. ClinicalTrials.gov NCT04620070.オランダのHEMS拠点による非無作為化stepped-wedge研究。2025年7月登録終了、結果未公表。
  44. Nagashima F, et al. Effect of prehospital physician presence on out-of-hospital cardiac arrest patients undergoing extracorporeal cardiopulmonary resuscitation: a secondary analysis of the SAVE-J II study. Resusc Plus. 2025;21:100859.SAVE-J II二次解析。病院前の医師関与と転帰。現場でのECMO導入の解析ではない。掲載誌・巻・論文番号は確認済み、題名とDOIは原著で要再確認。

検索・編集方法

最終確認日:2026年10月9日。AHA・ERC・ELSO・JRCの公式資料、PubMedと原著掲載ページを中心に、ECPR、extracorporeal CPR、ARREST、Prague OHCA、INCEPTION、SAVE-J II、traumatic cardiac arrest、2025/2026 guidelines等で検索し、主要試験・現行指針・関連する新規原著を照合した。網羅的な系統的レビューではない。原著本文確認は全補足資料の確認を意味しない。数値を伴う試験結果と、ガイドラインの推奨・専門家コンセンサス・編集上の解釈を区別した。

更新履歴

2026年10月9日:主要RCT(ARREST・Prague OHCA・INCEPTION)の分母・評価項目、SAVE-J(2014)とSAVE-J II、初期PEA 473例(J Crit Care 2025)、Kasugaiらの施設別door-to-ECPR時間(CCM 2025)、DOSE VFとDSED/VCに対するAHA・ILCORの評価、2026年ELSOリズム変化解析、JRC2025刊行状況および外傷ECPR登録解析を照合・追記。同日、心停止後体温管理を増補:HACA・Bernard・TTM・HYPERION・TTM2の主要5試験を評価項目別に比較し、ILCOR 2024・ERC–ESICM 2025・AHA 2025、HYPERION+TTM2の個別患者データメタ解析を追記。文献33編。記事は公開中(今回の体温管理追記部分は著者最終確認待ち)。

2026年10月9日:5A章「プレホスピタルECPR」を追加。パリSAMU(Lamhaut 2017)、パリ地域登録(Bougouin 2020)、ロンドンSub30、レーゲンスブルク、CHEER3、ミネソタ移動チーム、Lerouxらのメタ解析、APACAR2・ON-SCENEの登録状況、SAVE-J IIの病院前医師関与解析を照合。文献は計44編。追加部分は著者最終確認待ち。

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この記事を書いた人

外科医・救急科専門医。外傷外科、Acute Care Surgery、救急・集中治療領域の診療と研究に従事しています。外傷性凝固障害、出血性ショック、止血蘇生、大量輸血、腹部外傷を中心に、臨床で使えるエビデンスを解説します。

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