CASE 21|ベルの症例検討

ベルの症例検討CASE 21

臨床監修前 · 文献症例の検討用

判断 1 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
遊離ガスも筋性防御もないため、重大な腹部損傷の可能性は低いと決める

選択についての振り返り(編集)

どちらの所見がないことも、腸管・腸間膜損傷を十分に除外する根拠にはなりません。所見がそろうのを待つのではなく、循環と腹部所見の変化を追う必要があります。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
液体貯留と圧痛を残る手掛かりとして、循環・経時変化と統合する

選択についての振り返り(編集)

腹腔内液体は注意すべき所見ですが、それだけで全例の開腹を決めるものではありません。循環状態と診察の変化を含めて評価します。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
液体貯留だけを根拠に、循環や診察にかかわらず開腹と決める

選択についての振り返り(編集)

介入が必要な状況を見逃さないことは重要です。ただし液体貯留という一所見だけで判断せず、循環・腹膜刺激症状・画像全体を組み合わせます。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 3

初期の診察とCT

原著の経過

心拍120/分、血圧120/90 mmHg、呼吸数23/分、GCS 15。肋骨骨折、右気胸、両側血胸、open-book型骨盤骨折を認めた。両側胸腔ドレナージと骨盤バインダーを施行。腹部にはびまん性圧痛があるが筋性防御はなく、CTでは腹腔内液体貯留を認めるが遊離ガスはない。

原著は初回血圧120/90 mmHgを示す一方で「循環不安定」と記載しています。単回の値から、経過全体が安定していたとは扱いません。
ここまでの情報を確認する

43歳男性。シートベルトを着用していないトラック横転事故から4時間後に搬入された。胸部・腹部の鈍的外傷と骨盤骨折を認めた。

腹部所見をどう受け止めますか。

今の判断に近いものを選んでください。

A|遊離ガスも筋性防御もないため、重大な腹部損傷の可能性は低いと決めるB|液体貯留と圧痛を残る手掛かりとして、循環・経時変化と統合するC|液体貯留だけを根拠に、循環や診察にかかわらず開腹と決める

判断 2 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
骨盤への処置後も改善しないため、腹部を含めて残る原因と介入を再検討する

選択についての振り返り(編集)

既知の骨盤損傷と、その処置だけで循環を説明できるかを見直す視点です。腹部の液体貯留と圧痛という未解決の情報も、再び重く見る必要があります。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 2 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
重い骨盤骨折があるため、循環不安定の原因は骨盤に限定する

選択についての振り返り(編集)

骨盤損傷は重大ですが、併存する出血や臓器損傷を除外するものではありません。処置への反応が乏しいことを、原因を見直す情報として扱います。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 2 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
遊離ガスが現れるまで腹部への介入を保留する

選択についての振り返り(編集)

遊離ガスが現れることを必須条件にすると、出血や腸管血流障害への対応が遅れる可能性があります。持続する循環不安定を含む全体像から判断します。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 2 / 3

骨盤への処置後

原著の経過

鎮痛しながら反復して診察した。受傷6時間後、手術室で骨盤創外固定を行った。しかし固定後も循環不安定が持続した。原著には、この段階の血圧の具体値は記載されていない。

ここまでの情報を確認する

43歳男性。シートベルトを着用していないトラック横転事故から4時間後に搬入された。胸部・腹部の鈍的外傷と骨盤骨折を認めた。

心拍120/分、血圧120/90 mmHg、呼吸数23/分、GCS 15。肋骨骨折、右気胸、両側血胸、open-book型骨盤骨折を認めた。両側胸腔ドレナージと骨盤バインダーを施行。腹部にはびまん性圧痛があるが筋性防御はなく、CTでは腹腔内液体貯留を認めるが遊離ガスはない。

初期の判断をどう更新しますか。

今の判断に近いものを選んでください。

A|骨盤への処置後も改善しないため、腹部を含めて残る原因と介入を再検討するB|重い骨盤骨折があるため、循環不安定の原因は骨盤に限定するC|遊離ガスが現れるまで腹部への介入を保留する

判断 3 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
消化管内容の漏出や明らかな穿孔だけに注目する

選択についての振り返り(編集)

穿孔の確認は重要ですが、それだけでは血流障害を見落とし得ます。腸間膜の損傷と腸管の色調・血流・生存性も評価対象になります。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 3 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
目立つ外傷部位の近くのみを確認する

選択についての振り返り(編集)

一部の観察だけでは、離れた部位の損傷や広い範囲の血流障害を把握できません。原著ではTreitz靱帯から回盲弁まで小腸を観察しました。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 3 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
腸管全体と腸間膜を確認し、損傷範囲と血流・生存性を評価する

選択についての振り返り(編集)

穿孔の有無に加えて、腸間膜と腸管の血流を確認する視点です。原著ではこの観察で、広い範囲の虚血を伴う損傷が明らかになりました。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 3 / 3

開腹して確認する

原著の経過

循環不安定が続くため、正中切開で緊急開腹した。腹腔内には血性液体があった。ここから損傷範囲を確認する。

ここまでの情報を確認する

43歳男性。シートベルトを着用していないトラック横転事故から4時間後に搬入された。胸部・腹部の鈍的外傷と骨盤骨折を認めた。

心拍120/分、血圧120/90 mmHg、呼吸数23/分、GCS 15。肋骨骨折、右気胸、両側血胸、open-book型骨盤骨折を認めた。両側胸腔ドレナージと骨盤バインダーを施行。腹部にはびまん性圧痛があるが筋性防御はなく、CTでは腹腔内液体貯留を認めるが遊離ガスはない。

鎮痛しながら反復して診察した。受傷6時間後、手術室で骨盤創外固定を行った。しかし固定後も循環不安定が持続した。原著には、この段階の血圧の具体値は記載されていない。

腸管を観察するとき、何を確認しますか。

今の判断に近いものを選んでください。

A|消化管内容の漏出や明らかな穿孔だけに注目するB|目立つ外傷部位の近くのみを確認するC|腸管全体と腸間膜を確認し、損傷範囲と血流・生存性を評価する

3つの判断を振り返る

診断・実際の経過

大きな腸間膜断裂と約2 mの小腸虚血

小腸をTreitz靱帯から回盲弁まで観察し、腸間膜断裂と約2 mの虚血小腸を確認した。虚血部を切除し、側々吻合を行った。術後合併症なく30日後に退院し、1年後も症状・合併症はなかった。

持ち帰るポイント

  • 遊離ガスがないことだけで、腸管・腸間膜損傷を除外しない。
  • 既知の骨盤骨折と、処置への反応を分けて考える。
  • 原著で一期的吻合が成功したことを、すべての患者への推奨に置き換えない。

原著の治療・転帰と、編集した判断の解説を区別しています。別の選択でどのような転帰になったかは、この症例からは分かりません。

原著を読む ↗

補足根拠:WSES腸管損傷ガイドライン(2022)

詳しい症例解説・図版・出典を開く

← ベルの症例検討 一覧

BELL’S CASE CONFERENCE / CASE 21

A big mesenteric rupture after blunt abdominal trauma: A case report and literature review

Stefanou CK, Stefanou SK, Tepelenis K, Flindris S, Tsiantis T, Spyrou S. International journal of surgery case reports. 2019;61:56-59.

原著を読む ↗ | DOI

骨盤骨折に隠れた腸間膜断裂と広範小腸虚血

原著の症例経過を日本語で詳しく紹介しています。Discussion・Conclusionは要点を整理し、症例で行われた治療と一般的な推奨を区別して解説します。

Case presentation|症例紹介

初期評価と骨盤への対応

43歳男性。シートベルトを着用していないトラック横転事故の4時間後に到着した。腹部鈍的外傷、肋骨骨折、右気胸、両側血胸、open-book型骨盤骨折を認めた。心拍120/分、血圧120/90 mmHg、呼吸数23/分、GCS 15で、原著では循環不安定と記述されている。

両側胸腔ドレーンから右100 mL、左200 mLを排液し、骨盤バインダーを装着した。肥満体型の腹部に創や打撲痕はなく、びまん性圧痛はあったが筋性防御はなかった。血液検査はおおむね正常とされ、Hbは12.5と報告された。腹部CTで腹腔内液体貯留があったが、遊離ガスはなかった。鎮痛しながら反復して診察した。

固定後も続く循環不安定から開腹へ

受傷6時間後に手術室で骨盤創外固定を行ったが、不安定な循環が続き、正中切開で緊急開腹した。腹腔内に血性液体を認め、Treitz靱帯から回盲弁まで小腸を観察すると、大きな腸間膜断裂と約2 mの小腸虚血があった。

虚血小腸を切除し、回盲弁から6 cmの位置でステープラーによる側々吻合を行った。温生理食塩液で洗浄し、Douglas窩にJackson-Prattドレーンを留置してICUへ移した。

回復

術後合併症はなく、第7病日にドレーンを抜去、30日後に自宅退院した。1年後の追跡でも症状・合併症はなかった。

Figures|原著の図版

日本語の図説明を掲載しています。「原図を開く」を押すと実際の画像が表示されます。

Figure 1 — Open-book型の骨盤骨折。

原図を開く ↗ 原著の図説明

Stefanou CK, Stefanou SK, Tepelenis K, Flindris S, Tsiantis T, Spyrou S., Figure 1. CC BY 4.0。図は原著のまま。説明文を日本語化。

Figure 2 — 両側血胸と右気胸。

原図を開く ↗ 原著の図説明

Stefanou CK, Stefanou SK, Tepelenis K, Flindris S, Tsiantis T, Spyrou S., Figure 2. CC BY 4.0。図は原著のまま。説明文を日本語化。

Figure 3 — 腹部CT。

原図を開く ↗ 原著の図説明

Stefanou CK, Stefanou SK, Tepelenis K, Flindris S, Tsiantis T, Spyrou S., Figure 3. CC BY 4.0。図は原著のまま。説明文を日本語化。

Figure 4 — 術中に確認された大きな腸間膜断裂。

原図を開く ↗ 原著の図説明

Stefanou CK, Stefanou SK, Tepelenis K, Flindris S, Tsiantis T, Spyrou S., Figure 4. CC BY 4.0。図は原著のまま。説明文を日本語化。

Discussion|論文の解説と根拠

骨盤損傷が見つかっても、腹部の出血・虚血源を除外できません。本例では創外固定後も循環が改善せず、開腹で腸間膜損傷を確認しました。遊離ガスがないことは、腸間膜血流障害を否定しません。[1]

原著の「圧痛なら早く開腹」という結論は、現行の条件付き判断として読み直します。WSES 2022では、画像所見だけでなく、循環、腹膜刺激症状、経時変化を統合します。不安定例の介入を遅らせず、安定例でも不確かなCT所見があれば反復診察・必要な再画像評価を行います。[2]

Conclusion|この症例から持ち帰ること

既知の骨盤骨折だけにショックを帰属させない。腸間膜損傷は遊離ガスを伴わず、時間とともに腸管虚血として現れ得る。

References|出典・利用条件

  1. A big mesenteric rupture after blunt abdominal trauma: A case report and literature review — 原著
  2. Smyth L, et al. WSES guidelines on blunt and penetrating bowel injury. 2022.

原著の利用条件:CC BY 4.0。原著を出典として症例部分の日本語化、見出し追加、構成変更、Discussion・Conclusionの要約と補足を行いました。転載可能な原図の内容は改変していません。個別に転載許諾が必要な第三者の図は原著へのリンクのみです。原著者が本ページを監修・推奨していることを意味しません。

症例で実際に行われた治療と、一般的な診療上の推奨を区別して紹介しています。一症例の転帰は、治療法の優劣を証明するものではありません。

編集:外傷外科医ベル / 公開・資料確認:2026年10月11日

← 症例一覧へ戻る ・ ベルの勉強部屋

もう一度考える別の症例を選ぶ →

文献症例 · 3つの判断点 · 入力不要

その時点の情報で、考える。

43歳男性。シートベルトを着用していないトラック横転事故から4時間後に搬入された。胸部・腹部の鈍的外傷と骨盤骨折を認めた。

選ぶ → 判断を振り返る → 次の情報へ。
診断名・原著タイトルは最後に確認できます。

CASE 21 を始める →

選択に応じた解説を表示します。患者の経過は原著どおりに進みます。自動採点・回答の保存はありません。

復習する(診断名を表示)