CASE 11|ベルの症例検討

ベルの症例検討CASE 11

臨床監修前 · 文献症例の検討用

判断 1 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
胸腔ドレーンで排液できたため、胸部の止血は達成したと考える

選択についての振り返り(編集)

ドレーンは胸腔内の血液を排出しますが、出血源が止まったことは保証しません。循環と排液を合わせ、止血への介入が必要かを判断します。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
蘇生を続けながら、外科的止血を急ぐ

選択についての振り返り(編集)

ショックと多量の胸腔内出血を合わせて捉える選択です。原著では救急室で左開胸して出血源を制御し、その後に手術室へ移りました。この症例の排液量だけを、全例共通の単独基準にはしません。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 3 · 振り返り

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選んだ判断
まず全身CTを終え、損傷の全体像がそろってから止血へ進む

選択についての振り返り(編集)

損傷の全体像は重要ですが、持続するショックでは画像検査が止血を遅らせないかが問題になります。検査へ移動できる循環状態かを判断する必要があります。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 3

胸腔ドレーン挿入後

原著の経過

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

ここまでの情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

この時点で、次に何を重視しますか。

今の判断に近いものを選んでください。

A|胸腔ドレーンで排液できたため、胸部の止血は達成したと考えるB|蘇生を続けながら、外科的止血を急ぐC|まず全身CTを終え、損傷の全体像がそろってから止血へ進む

判断 2 / 3 · 振り返り

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選んだ判断
正常域のROTEMだけでは、残る出血源を除外できない

選択についての振り返り(編集)

凝固の評価と、損傷血管から出血しているかの評価は別です。一時的に輸血へ反応しても、止めると悪化するなら、止血が達成できているかを再確認します。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

胸腹部の止血・臓器損傷への手術を行った。胸部はクラムシェル開胸へ拡大し、心膜も開窓して血餅を除去した。ICUで平均動脈圧が断続的に40 mmHgへ低下し、輸血で85 mmHgまで反応するが、輸血を止めると悪化する。胸腔・腹部から排液が続く。ROTEMでは凝固能が保たれた結果だった。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 2 / 3 · 振り返り

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選んだ判断
輸血で血圧が上がるため、止血はおおむね完了したと考える

選択についての振り返り(編集)

一時的な血圧の上昇だけでは、出血や他の循環障害の解決を示しません。反応の持続時間と、輸血を要する状態が続いていることを重く見ます。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

胸腹部の止血・臓器損傷への手術を行った。胸部はクラムシェル開胸へ拡大し、心膜も開窓して血餅を除去した。ICUで平均動脈圧が断続的に40 mmHgへ低下し、輸血で85 mmHgまで反応するが、輸血を止めると悪化する。胸腔・腹部から排液が続く。ROTEMでは凝固能が保たれた結果だった。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 2 / 3 · 振り返り

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選んだ判断
ROTEMが保たれているため、出血より鎮静薬の影響を優先する

選択についての振り返り(編集)

鎮静などの影響は検討できますが、排液が続く状況で出血を後景に置く根拠にはなりません。検査結果が、実際の経過を十分に説明しているかを確認します。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

胸腹部の止血・臓器損傷への手術を行った。胸部はクラムシェル開胸へ拡大し、心膜も開窓して血餅を除去した。ICUで平均動脈圧が断続的に40 mmHgへ低下し、輸血で85 mmHgまで反応するが、輸血を止めると悪化する。胸腔・腹部から排液が続く。ROTEMでは凝固能が保たれた結果だった。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 2 / 3

手術後も輸血が必要

原著の経過

胸腹部の止血・臓器損傷への手術を行った。胸部はクラムシェル開胸へ拡大し、心膜も開窓して血餅を除去した。ICUで平均動脈圧が断続的に40 mmHgへ低下し、輸血で85 mmHgまで反応するが、輸血を止めると悪化する。胸腔・腹部から排液が続く。ROTEMでは凝固能が保たれた結果だった。

ここまでの情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

輸血への反応と凝固検査を、どう解釈しますか。

今の判断に近いものを選んでください。

A|正常域のROTEMだけでは、残る出血源を除外できないB|輸血で血圧が上がるため、止血はおおむね完了したと考えるC|ROTEMが保たれているため、出血より鎮静薬の影響を優先する

判断 3 / 3 · 振り返り

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選んだ判断
心膜開窓済みなので、心臓周囲の圧迫は除外する

選択についての振り返り(編集)

過去の開窓は、現在も十分な排液が保たれている証拠にはなりません。再出血や凝血塊を含め、現在のエコーと循環状態を優先して考え直します。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

胸腹部の止血・臓器損傷への手術を行った。胸部はクラムシェル開胸へ拡大し、心膜も開窓して血餅を除去した。ICUで平均動脈圧が断続的に40 mmHgへ低下し、輸血で85 mmHgまで反応するが、輸血を止めると悪化する。胸腔・腹部から排液が続く。ROTEMでは凝固能が保たれた結果だった。

輸血依存と排液が続き、脈圧が次第に狭くなった。ベッドサイド心エコーでは、心周囲の液体貯留と右室虚脱を認めた。心膜の開窓はすでに行われている。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 3 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
輸血を続け、次回の予定手術まで経過を見る

選択についての振り返り(編集)

輸血は循環を支えても、心臓への圧迫や出血源そのものを解決しません。現在の循環障害に対し、再介入を待てるかを判断する必要があります。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

胸腹部の止血・臓器損傷への手術を行った。胸部はクラムシェル開胸へ拡大し、心膜も開窓して血餅を除去した。ICUで平均動脈圧が断続的に40 mmHgへ低下し、輸血で85 mmHgまで反応するが、輸血を止めると悪化する。胸腔・腹部から排液が続く。ROTEMでは凝固能が保たれた結果だった。

輸血依存と排液が続き、脈圧が次第に狭くなった。ベッドサイド心エコーでは、心周囲の液体貯留と右室虚脱を認めた。心膜の開窓はすでに行われている。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 3 / 3 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
再貯留・凝血塊による圧迫を疑い、再開胸による評価・解除を急ぐ

選択についての振り返り(編集)

処置歴で可能性を打ち消さず、現在の所見から再介入を考える選択です。原著ではベッドサイド再開胸で出血源と血餅を確認し、止血と圧迫の解除を行いました。

この判断時点の患者情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

胸腹部の止血・臓器損傷への手術を行った。胸部はクラムシェル開胸へ拡大し、心膜も開窓して血餅を除去した。ICUで平均動脈圧が断続的に40 mmHgへ低下し、輸血で85 mmHgまで反応するが、輸血を止めると悪化する。胸腔・腹部から排液が続く。ROTEMでは凝固能が保たれた結果だった。

輸血依存と排液が続き、脈圧が次第に狭くなった。ベッドサイド心エコーでは、心周囲の液体貯留と右室虚脱を認めた。心膜の開窓はすでに行われている。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 3 / 3

脈圧が狭くなる

原著の経過

輸血依存と排液が続き、脈圧が次第に狭くなった。ベッドサイド心エコーでは、心周囲の液体貯留と右室虚脱を認めた。心膜の開窓はすでに行われている。

ここまでの情報を確認する

19歳男性。多数の銃創を受け、無反応の状態で搬入された。来院時の血圧は80/50 mmHg、心拍120/分。喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%だった。

大量輸血を開始し、意識障害と顎・頸部の銃創に対して挿管した。両側呼吸音が減弱しており、胸腔ドレーンを挿入すると左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。胸腹部には多数の穿通創がある。

胸腹部の止血・臓器損傷への手術を行った。胸部はクラムシェル開胸へ拡大し、心膜も開窓して血餅を除去した。ICUで平均動脈圧が断続的に40 mmHgへ低下し、輸血で85 mmHgまで反応するが、輸血を止めると悪化する。胸腔・腹部から排液が続く。ROTEMでは凝固能が保たれた結果だった。

処置歴と現在の所見が食い違うとき、どう判断しますか。

今の判断に近いものを選んでください。

A|心膜開窓済みなので、心臓周囲の圧迫は除外するB|輸血を続け、次回の予定手術まで経過を見るC|再貯留・凝血塊による圧迫を疑い、再開胸による評価・解除を急ぐ

3つの判断を振り返る

診断・実際の経過

心膜開窓後に再発した心タンポナーデと持続する胸腔内出血

再開胸で左内胸動脈の拍動性出血と、心周囲を含む大量の血餅を認めた。結紮、開窓の拡大、血餅除去で一時的に循環は安定したが、約12時間後に再度心停止し、最終的には死亡した。病理で肝組織による肺動脈塞栓も見つかったが、その寄与は著者らの考察であり、単独の死因と確定されたものではない。

持ち帰るポイント

  • 処置済みという履歴を、現在の病態を除外する根拠にしない。
  • 輸血への一時的な反応と、止血の達成を分けて評価する。
  • 生理学的な改善と最終的な生存を混同しない。

原著の治療・転帰と、編集した判断の解説を区別しています。別の選択でどのような転帰になったかは、この症例からは分かりません。

原著を読む ↗

補足根拠:WSES-AAST胸部外傷ガイドライン(2025)

詳しい症例解説・図版・出典を開く

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BELL’S CASE CONFERENCE / CASE 11

Resuscitative Thoracotomy for Multiple Gunshot Wounds With Cardiac Tamponade Despite Pericardial Window

Kostick N, Gray S, Huynh D. Cureus. 2020;12:e11907.

原著を読む ↗ | DOI

多数銃創:心膜開窓後にも再発した心タンポナーデ

原著の症例経過を日本語で詳しく紹介しています。Discussion・Conclusionは要点を整理し、症例で行われた治療と一般的な推奨を区別して解説します。

Case presentation|症例紹介

来院時と初期の胸部止血

19歳男性。多数の銃創による出血性ショックでLevel II外傷施設に搬送された。救急隊は生理食塩液を投与しながら迅速搬送した。病歴の聴取は困難だった。来院時は無反応で、血圧80/50 mmHg、心拍120/分、喉頭気道デバイス下でSpO₂ 92%。観察できた範囲で31か所の銃創があったが、危険な状態のため背部の十分な診察はできなかった。

胸腹部の多発穿通性損傷を受け、循環・気道・呼吸の順で初期対応を進めた。大量輸血を起動し、未交差適合試験血2単位を急速投与。顎・頸部にも銃創があり、意識障害のため迅速導入挿管した。両側呼吸音減弱に対して胸腔ドレーンを挿入すると、左から1 L超、右から500 mLの血液が排出された。

救急室で左開胸し、内胸動脈、肋間動脈、肺動脈枝の結紮とパッキングで止血した。さらに未交差適合試験全血2単位を投与し、手術室へ移動できる状態となった。

腹部DCSとクラムシェルへの拡大

開腹で大量出血と便による汚染、肝・結腸・小腸・脾・左腸骨動脈損傷を認めた。結腸半切除、小腸切除、脾摘、腸骨動脈修復を実施し、右上肢骨折には副子を装着した。

手術中も左ドレーンから1 Lを超える出血があり、左開胸を両側クラムシェル開胸に拡大した。内胸動脈結紮、パッキング、右肺中葉切除を追加。心膜を大きく開窓し、血餅を除去して再タンポナーデの予防を図った。胸部を一時閉鎖し、腹部はAbtheraによる陰圧閉鎖とした。この手術で赤血球16単位、血小板11単位、FFP 8単位を投与し、カルシウムを補充した。ROTEMなどで蘇生を調整し、医師が付き添ってICUへ移動した。

ICUでの再評価とベッドサイド再開胸

次の1時間、平均動脈圧は断続的に40 mmHgまで低下し、輸血には85 mmHgまで反応した。右ドレーン300 mL、左500 mLの排液が続いたが、患者はうなずきで質問に答え、GCS 11Tだった。酸素化はSpO₂ 80%へ悪化し、気管支鏡で吸引・洗浄すると90%超へ戻った。赤血球9単位、血小板6単位、FFP 6単位を追加した。

それでも輸血を止めると循環が悪化し、ROTEMは凝固能が保たれた結果を示した。さらに左胸腔から1 L、右400 mL、腹部陰圧装置から300 mLの排液があり、脈圧が狭くなっていた。心エコーで心周囲液体貯留と右室虚脱を認め、既に心膜開窓を行っていてもタンポナーデが疑われた。

ケタミン、フェンタニル、ミダゾラムによる鎮静下にベッドサイドで再開胸した。左内胸動脈からの拍動性出血と、心周囲を含む胸腔内の多量の血餅を認めた。動脈を結紮し、心膜の開窓を拡大して血餅を除去すると循環が安定した。追加の胸腔・心膜ドレーンを留置した。

一時安定後の転帰

その後約12時間は人工呼吸と適宜輸血で比較的安定したが、再び心停止した。胸腹部を再開放すると、凝血性血胸、心膜内血液貯留、虚血腸管を認めた。重度低酸素性脳障害を来し、積極的蘇生にもかかわらず死亡した。病理では肝組織による肺動脈塞栓が見つかり、著者らは心停止やDICに関与した可能性を述べている。

Figures|原著の図版

日本語の図説明を掲載しています。「原図を開く」を押すと実際の画像が表示されます。

Figure 1 — 銃創の分布を示す模式図。赤い印がそれぞれの創の位置を表す。

原図を開く ↗ 原著の図説明

Kostick N, Gray S, Huynh D., Figure 1. CC BY(原著表示)。図は原著のまま。説明文を日本語化。

Figure 2 — クラムシェル開胸の切開範囲を示す模式図。

原図を開く ↗ 原著の図説明

Kostick N, Gray S, Huynh D., Figure 2. CC BY(原著表示)。図は原著のまま。説明文を日本語化。

Discussion|論文の解説と根拠

既に行った処置に安心して再評価を止めないことが主題です。開窓後も、再出血や凝血塊で心臓が圧迫され得ます。脈圧の縮小、輸血依存、心エコーでの右室虚脱が再介入の根拠になりました。[1]

凝固検査が正常でも、外科的出血は除外できません。本例では拍動性の内胸動脈出血が残っていました。開胸の効果、一時的な生理学的改善、最終的な生存は分けて評価します。胸部外傷のガイドラインも、循環・呼吸と画像を統合した迅速な再評価を重視しています。[1,2]

Conclusion|この症例から持ち帰ること

「心膜開窓済み」という履歴は、現在のタンポナーデを否定しない。持続出血と閉塞性ショックの両方を再確認する。

References|出典・利用条件

  1. Resuscitative Thoracotomy for Multiple Gunshot Wounds With Cardiac Tamponade Despite Pericardial Window — 原著
  2. Coccolini F, et al. Thoracic trauma WSES-AAST guidelines. 2025.

原著の利用条件:CC BY(原著表示)。原著を出典として症例部分の日本語化、見出し追加、構成変更、Discussion・Conclusionの要約と補足を行いました。転載可能な原図の内容は改変していません。個別に転載許諾が必要な第三者の図は原著へのリンクのみです。原著者が本ページを監修・推奨していることを意味しません。

症例で実際に行われた治療と、一般的な診療上の推奨を区別して紹介しています。一症例の転帰は、治療法の優劣を証明するものではありません。

編集:外傷外科医ベル / 公開・資料確認:2026年10月11日

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