CASE 32|ベルの症例検討

ベルの症例検討CASE 32

臨床監修前 · 文献症例の検討用

判断 1 / 2 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
肝静脈・下大静脈など、流出側の損傷も考える

選択についての振り返り(編集)

流入遮断で止まらないという反応が手掛かりです。原著では後に下大静脈損傷を確認しました。

この判断時点の患者情報を確認する

20歳男性。上腹部刺創後、開腹しても肝周囲からの出血が続いた。

肝の創に対しPringle法を行ったが、出血は十分に制御できなかった。

この判断時点の補足

創から大量出血し、超音波でMorrison窩と脾周囲に多量の液体。創圧迫と輸液への反応はわずかで、救急室で開腹した。初期血圧・乳酸の具体値は本文にない。

開腹で肝左葉表面の創から激しく持続する出血を確認。Pringle法でも出血量が減らなかった。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 2 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
Pringle法を行ったので、肝周囲の血管損傷は除外する

選択についての振り返り(編集)

この操作が全ての出血経路を遮断するわけではありません。効果の限界を踏まえます。

この判断時点の患者情報を確認する

20歳男性。上腹部刺創後、開腹しても肝周囲からの出血が続いた。

肝の創に対しPringle法を行ったが、出血は十分に制御できなかった。

この判断時点の補足

創から大量出血し、超音波でMorrison窩と脾周囲に多量の液体。創圧迫と輸液への反応はわずかで、救急室で開腹した。初期血圧・乳酸の具体値は本文にない。

開腹で肝左葉表面の創から激しく持続する出血を確認。Pringle法でも出血量が減らなかった。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 2 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
出血が続くことだけで凝固障害と決める

選択についての振り返り(編集)

凝固の評価も必要ですが、制御されていない血管損傷を除外できません。

この判断時点の患者情報を確認する

20歳男性。上腹部刺創後、開腹しても肝周囲からの出血が続いた。

肝の創に対しPringle法を行ったが、出血は十分に制御できなかった。

この判断時点の補足

創から大量出血し、超音波でMorrison窩と脾周囲に多量の液体。創圧迫と輸液への反応はわずかで、救急室で開腹した。初期血圧・乳酸の具体値は本文にない。

開腹で肝左葉表面の創から激しく持続する出血を確認。Pringle法でも出血量が減らなかった。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の次の経過へ →選び直す

判断 1 / 2

流入を遮断しても止まらない

原著の経過

肝の創に対しPringle法を行ったが、出血は十分に制御できなかった。

ここまでの情報を確認する

20歳男性。上腹部刺創後、開腹しても肝周囲からの出血が続いた。

判断に使う補足情報

創から大量出血し、超音波でMorrison窩と脾周囲に多量の液体。創圧迫と輸液への反応はわずかで、救急室で開腹した。初期血圧・乳酸の具体値は本文にない。

開腹で肝左葉表面の創から激しく持続する出血を確認。Pringle法でも出血量が減らなかった。

出血源をどう考え直しますか。

今の判断に近いものを選んでください。

A|肝静脈・下大静脈など、流出側の損傷も考えるB|Pringle法を行ったので、肝周囲の血管損傷は除外するC|出血が続くことだけで凝固障害と決める

判断 2 / 2 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
止血できていたので、パックを外すだけでよい

選択についての振り返り(編集)

圧迫を解除すると再出血する可能性があります。再出血時に制御できる準備が必要です。

この判断時点の患者情報を確認する

20歳男性。上腹部刺創後、開腹しても肝周囲からの出血が続いた。

肝の創に対しPringle法を行ったが、出血は十分に制御できなかった。

損傷への到達とパッキングで止血し、段階的治療とした。後日にパック除去を予定した。

判断 1 時点の補足

創から大量出血し、超音波でMorrison窩と脾周囲に多量の液体。創圧迫と輸液への反応はわずかで、救急室で開腹した。初期血圧・乳酸の具体値は本文にない。

開腹で肝左葉表面の創から激しく持続する出血を確認。Pringle法でも出血量が減らなかった。

この判断時点の補足

初回は用手圧迫・パッキングでも不十分で、血管露出のため肝左葉を切除した。深部裂創から出血が続いたが、切除後のパッキングで一時止血を得た。

大量輸血に伴う凝固障害・生理学的不安定性から手術を終了。術後は再出血徴候がなくバイタルが安定したが、下大静脈損傷の疑いは残っている。いまはパックを抜く前の準備段階。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 2 / 2 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
大量出血への備えと、血管を制御する方法を共有する

選択についての振り返り(編集)

原著では除去時に再出血し、血管遮断下に下大静脈を修復しました。予定再手術でも備えが重要です。

この判断時点の患者情報を確認する

20歳男性。上腹部刺創後、開腹しても肝周囲からの出血が続いた。

肝の創に対しPringle法を行ったが、出血は十分に制御できなかった。

損傷への到達とパッキングで止血し、段階的治療とした。後日にパック除去を予定した。

判断 1 時点の補足

創から大量出血し、超音波でMorrison窩と脾周囲に多量の液体。創圧迫と輸液への反応はわずかで、救急室で開腹した。初期血圧・乳酸の具体値は本文にない。

開腹で肝左葉表面の創から激しく持続する出血を確認。Pringle法でも出血量が減らなかった。

この判断時点の補足

初回は用手圧迫・パッキングでも不十分で、血管露出のため肝左葉を切除した。深部裂創から出血が続いたが、切除後のパッキングで一時止血を得た。

大量輸血に伴う凝固障害・生理学的不安定性から手術を終了。術後は再出血徴候がなくバイタルが安定したが、下大静脈損傷の疑いは残っている。いまはパックを抜く前の準備段階。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 2 / 2 · 振り返り

選択を振り返る

選んだ判断
初回の操作で見えなかった部位は再評価しない

選択についての振り返り(編集)

初回は救命を優先して評価が限られた可能性があります。段階的手術で残る損傷を確認します。

この判断時点の患者情報を確認する

20歳男性。上腹部刺創後、開腹しても肝周囲からの出血が続いた。

肝の創に対しPringle法を行ったが、出血は十分に制御できなかった。

損傷への到達とパッキングで止血し、段階的治療とした。後日にパック除去を予定した。

判断 1 時点の補足

創から大量出血し、超音波でMorrison窩と脾周囲に多量の液体。創圧迫と輸液への反応はわずかで、救急室で開腹した。初期血圧・乳酸の具体値は本文にない。

開腹で肝左葉表面の創から激しく持続する出血を確認。Pringle法でも出血量が減らなかった。

この判断時点の補足

初回は用手圧迫・パッキングでも不十分で、血管露出のため肝左葉を切除した。深部裂創から出血が続いたが、切除後のパッキングで一時止血を得た。

大量輸血に伴う凝固障害・生理学的不安定性から手術を終了。術後は再出血徴候がなくバイタルが安定したが、下大静脈損傷の疑いは残っている。いまはパックを抜く前の準備段階。

ここから先は、選択による仮想の変化ではなく、原著に記載された経過を表示します。

実際の経過と解説へ →選び直す

判断 2 / 2

パッキングで一時的に制御

原著の経過

損傷への到達とパッキングで止血し、段階的治療とした。後日にパック除去を予定した。

ここまでの情報を確認する

20歳男性。上腹部刺創後、開腹しても肝周囲からの出血が続いた。

肝の創に対しPringle法を行ったが、出血は十分に制御できなかった。

判断 1 時点の補足

創から大量出血し、超音波でMorrison窩と脾周囲に多量の液体。創圧迫と輸液への反応はわずかで、救急室で開腹した。初期血圧・乳酸の具体値は本文にない。

開腹で肝左葉表面の創から激しく持続する出血を確認。Pringle法でも出血量が減らなかった。

判断に使う補足情報

初回は用手圧迫・パッキングでも不十分で、血管露出のため肝左葉を切除した。深部裂創から出血が続いたが、切除後のパッキングで一時止血を得た。

大量輸血に伴う凝固障害・生理学的不安定性から手術を終了。術後は再出血徴候がなくバイタルが安定したが、下大静脈損傷の疑いは残っている。いまはパックを抜く前の準備段階。

再手術に向けて何を準備しますか。

今の判断に近いものを選んでください。

A|止血できていたので、パックを外すだけでよいB|大量出血への備えと、血管を制御する方法を共有するC|初回の操作で見えなかった部位は再評価しない

2つの判断を振り返る

診断・実際の経過

肝刺創に合併した下大静脈損傷

段階的手術で下大静脈の損傷を修復。軽い胆汁漏はあったが、術後35日で退院した。

持ち帰るポイント

  • 止血操作の効果から、出血経路を考え直す。
  • 一時的止血を解除する場面こそ準備を整える。

原著の治療・転帰と、編集した判断の解説を区別しています。別の選択でどのような転帰になったかは、この症例からは分かりません。

原著を読む ↗

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BELL’S CASE CONFERENCE / CASE 32

Case report: direct suture repair of inferior vena cava to rescue a stab patient with hepatic and caval injury through left hepatectomy and total vascular exclusion

Hirooka R, et al. Surgical Case Reports. 2021;7:55.

原著を読む ↗ | DOI

Pringleで止まらない出血:DCSから肝血流完全遮断下のIVC修復へ

症例部分は、原著のCase presentationをほぼ全体にわたり日本語で紹介し、時系列に沿って見出しを加えています。Discussion・Conclusionは要点を整理し、関連する根拠を添えました。

Case presentation|症例紹介

受傷・初療:圧迫と輸液への反応はわずか

既往のない20歳男性が心窩部を刺され、創部から大量出血した。腹部超音波ではMorrison窩と脾周囲に多量の液体貯留を認めた。創部の用手圧迫と積極的な輸液を同時に行ったが、循環動態の改善はわずかであり、救急室で直ちに緊急開腹した。

初回手術:出血源への到達と一時止血

腹部正中切開で開腹すると、腹腔内に大量の血腫があり、肝左葉表面の刺創から持続的に激しく出血していた。肝全体を展開するため皮切を逆L字に延長した。肝十二指腸間膜を遮断するPringle手技でも出血は減らず、肝静脈または下大静脈(IVC)を巻き込む深い損傷が疑われた。

用手圧迫もガーゼパッキングも奏効しなかったため、損傷血管を露出する目的で肝左葉切除を行った。左肝静脈を結紮・切離し、左側肝門板をステープラーで処理して切除を完了した。しかし裂創は切離面よりさらに深部まで達し、出血が続いた。肝実質の縫合を試みても十分な止血には至らなかった。

その後のガーゼパッキングでようやく一時止血を得た。著者らは、末梢側の左肝静脈の止血が得られ、出血点に近い位置で圧迫できるようになったためと考察している。大量輸血下の凝固障害と生理学的不安定性を考慮し、この時点でダメージコントロール手術を終了した。

初回手術は97分、出血量は約2,000 g。赤血球28単位、新鮮凍結血漿32単位、血小板濃厚液30単位が投与された。切除した肝左葉では、刺創が肝表面から切離面へ貫通していた。

再手術まで:止血できた時間を準備に使う

初回手術後の経過は良好で、腹腔内再出血の徴候はなく、バイタルサインも安定した。深部からの大量出血からIVC損傷が疑われたため、再手術に備え、外科医、麻酔科医、輸血の体制を整えた。

3日目の再手術:後壁を先に縫合する

初回手術後3日目に手術室でsecond-look surgeryを行った。開創時には目立つ出血はなかったが、肝切離面のガーゼを除去すると大量出血が再現した。術中超音波で肝後面IVCの前方に液体の存在を認め、IVC損傷と血腫が示唆された。

肝血流完全遮断(total vascular exclusion:TVE)を計画し、左腎静脈より頭側で肝下部IVCをテーピングするとともに、肝上部IVCを露出した。TVE下で観察すると、裂創は肝後面IVCの前壁から後壁まで貫通していた。

まずIVC後壁の裂創を縫合し、続いて前壁を肝実質とともに縫合した。最後に肝実質の裂創を閉鎖し、TVE解除後も止血できていることを確認した。TVE時間は27分、手術時間161分、出血量3,721 g。赤血球22単位、新鮮凍結血漿4単位を投与した。

術後・転帰

軽度の胆汁漏を生じたが、保存的に軽快した。術後35日目に退院し、退院後のリハビリを経て復職した。

Figures|原著の図版

図と日本語の説明を掲載しています。「原図を開く」から原著の画像も確認できます。

初回DCSの所見。a:肝左葉表面の刺創。b:左葉切除後も切離面の深部に続く裂創から出血。c:肝実質縫合とパッキングによる一時止血の模式図。d:切除標本の貫通創。LHV:左肝静脈。
Figure 1 — 初回DCSの所見。a:肝左葉表面の刺創。b:左葉切除後も切離面の深部に続く裂創から出血。c:肝実質縫合とパッキングによる一時止血の模式図。d:切除標本の貫通創。LHV:左肝静脈。

原図を開く ↗ 原著の図説明

Hirooka R, et al., 2021, Figure 1. CC BY 4.0。図は原著のまま。説明文を日本語化。

確定的修復の手順。a:術中超音波でIVC前方に液体腔を確認。b:肝十二指腸間膜と主要静脈のテーピング。c:前・後壁を貫通する肝後面IVC裂創。d:後壁の縫合。e:前壁を肝実質とともに縫合。f:肝実質を閉鎖し止血。HDL:肝十二指腸間膜、LRV:左腎静脈。
Figure 2 — 確定的修復の手順。a:術中超音波でIVC前方に液体腔を確認。b:肝十二指腸間膜と主要静脈のテーピング。c:前・後壁を貫通する肝後面IVC裂創。d:後壁の縫合。e:前壁を肝実質とともに縫合。f:肝実質を閉鎖し止血。HDL:肝十二指腸間膜、LRV:左腎静脈。

原図を開く ↗ 原著の図説明

Hirooka R, et al., 2021, Figure 2. CC BY 4.0。図は原著のまま。説明文を日本語化。

Discussion|論文の解説と根拠

Pringle無効という情報から、次の出血源を考える。本症例は流入遮断で出血が減らず、肝静脈・肝後面IVC損傷を疑った。WSES肝損傷ガイドラインでも、Pringle後に肝後面から出血が続く場合はこれらの損傷を疑うとし、異常肝動脈などの可能性も挙げる。[1,2]

一時止血と確定的修復を分けた点が重要。この症例では左葉切除後のパッキングで時間を確保し、準備した再手術でTVE下に修復した。WSESは重い静脈損傷に対する一時的な方法としてパッキングを位置付け、循環不安定な大量出血患者では完全血流遮断に耐えにくいと指摘する。[1,2]

左葉切除・TVEを全例の手順としない。同じ肝後面IVC損傷でも、循環が安定し血腫が限局したCASE 33とは条件が違う。損傷機転、流出血の持続、タンポナーデ、手術・血管外科の支援体制が、介入の必要性と方法を変える。[1,3]

Conclusion|この症例から持ち帰ること

Pringleで止まらない出血の位置を見極め、一時止血が得られた段階で生理学的回復と専門チームの準備へ切り替える。再手術ではIVC後壁・前壁の順に修復したという、段階的治療の具体例。

References|出典・利用条件

  1. Hirooka R, et al.. Case report: direct suture repair of inferior vena cava to rescue a stab patient with hepatic and caval injury through left hepatectomy and total vascular exclusion. Hirooka R, et al. Surgical Case Reports. 2021;7:55.
  2. Coccolini F, et al. Liver trauma: WSES 2020 guidelines. World J Emerg Surg. 2020;15:24.
  3. Pinto F, et al. Non-operative Management of an Isolated Blunt Traumatic Retrohepatic Inferior Vena Cava Injury. Cureus. 2023;15:e36746.

原著の利用条件:CC BY 4.0。原著を出典として症例部分の日本語化、見出し追加、構成変更、Discussion・Conclusionの要約と補足を行いました。転載可能な原図の内容は改変していません。個別に転載許諾が必要な第三者の図は原著へのリンクのみです。原著者が本ページを監修・推奨していることを意味しません。

症例で実際に行われた治療と、一般的な診療上の推奨を区別して紹介しています。一症例の転帰は、治療法の優劣を証明するものではありません。

編集:外傷外科医ベル / 公開・資料確認:2026年10月11日

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